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痛い、


 穏やかなまどろみの中、花凛は目に 刺すような痛みを覚える。気怠そうにゆるゆると目を開くとチュンチュンと雀が楽しげにさえずり、カーテンが大きく開かれた窓からは朝日が差し込んでいた。

 どうやら先程感じた痛みは、差し込む日の光が強すぎた為に"眩い"を"痛い"と認識してしまったらしい。


「(全く…人間の感覚って当てにならないなぁ…)」


 軽く溜め息を吐き上半身を起こすと、部屋の扉が全開になっているのが視界に入った。コテっと首を傾げる。


――相方が一度起こしに来たのかな。


 きっちりと窓の端で纏められたカーテンを見つつ 寝てる間に起こった出来事を寝起きの頭で考える。正確な時間は分からないが 大分長い間そうしていたように思える。


「花凛ー!まだ寝てんのー?あんた初日から遅刻するよー?」


 すると 突如階段下から聞こえてきた元気な相方の声で現実に引き戻されてしまった。「……時間?」と、慌てて枕元の目覚時計を探せば、時計の針はもう少しで7時50分を指そうとしてる。彼女の予定していた起床時間よりは裕に30分は過ぎており サアアと血の気が引いた。


「うわ…やっばぁー!!遅刻するぅぅぅ!」


 電光石火の如く支度を整えバタバタと駆け足で台所へ向かう。肉が焼けたこうばしい香りが鼻腔をくすぐり、鼻をくんくん言わせながら席に着いた。相方はと言うと既に食卓に座っており、花凛が台所に入ってきたのを見て楽しげに笑っている。


「お、間に合ったねー。ほら早く食べなさい」


 花凛より一足早く朝食にパクついている、少し偉そうな口調の女の子――もとい花凛の相方の名は 玉城風羽。ボンゴレファミリー9代目の側近であり、孤児院時代から花凛が姉と慕っているその人である。


 ここで一つ補足があるが、姉と言っても花凛と風羽は血は繋がっていない。だから生物学上は他人、いわば義姉妹だ。だが花凛は 血など繋がっていなくてももっと強い絆で繋がっていると思っているので そんなことは別段気にしていなかった。

 黒髪の少女が慌てて席に付き、頂きます!と元気に食べ始める。


「はぁ…何度も起こしたのに…あんた、もしや昔も学校遅刻ギリギリに行ってたんじゃない?」

「え…?いや、そんなことは……多分、無い…」


 優しく目を細める姉の問いに、妹はモゴモゴと自信なさそうに否定の言葉を口にする。恐らく彼女達の間にある事情を知らない人間がこの光景を見れば、小学校の頃や幼い頃を懐かしそうに話している様に見えるであろう。


 しかし風羽の言う『昔』――それは単に小さい頃を指してるのでは無い。風羽の『昔』とは自分達が生まれる以前、つまり前世のことを言っていた。

 そう、花凛が姉と血よりも強い絆があると思う理由はここにある。それは風羽と花凛の二人ともが前世の記憶を持っている、と言うこと。更に付け加えて言えば、この世界は彼女達が(前世で)元いた世界では無い。異世界とでも呼ぼうか。何故なら、この世界は漫画の世界――彼女らが大好きだった「家庭教師ヒットマンREBORN!」の世界そのものだったからだ。



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