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 翌日風羽は生徒会の仕事が溜まりに溜まっているとかで朝一に登校していった。私は、といえば彼女より少し遅れて家を後にする。もちろん、シャツ下には不思議な小瓶。小瓶と肌が触れている箇所がほんのり温かい気がするけど 多分私の錯覚かな。

 昨日、私は雲雀さんに"お持ち帰り"で帰宅許可を貰った。が、イタリア帰りの風羽と積もりに積もったお互いの話をしていたら時間が無くなってしまい 結局私の仕事は終わらずじまいだった。だから早めに学校へ行き仕事をサッサと終えてしまおうと企んでいる訳で。

 ほぼ駆け足のような速度で学校へ向かっていると 3つの分かれ道が合流している道路で 前方から見知った人が手を振っているのに気がついた。山本君だ。


「おはよ、秋桜!早いのな」

「おはよう!山本君こそ早いね。朝練?」

「あぁ、一日の始まりは野球からってな!」


 彼らしい発言に思わず笑みがこぼれてしまう。「らしいね、」と返せば「だろ!」なんて返ってきて お互いに笑い合った。


「学校一緒に行こーぜ!」


 私は彼の合図で一緒に歩き出した。…なんだかこの1ヶ月で随分と仲良くなった気がする。でもよくよく考えてみればそれは当たり前のことで。なんたって 雲雀さんに捕まった日にご馳走して貰ってからと言うものの時間の合う日はほぼ必ず竹寿司でご馳走になっていたんだから。

 けれど如何せんお寿司は高い。だから私は気が引けて遠慮していたんだけど、それに気付いた山本君に「じゃあ秋桜は代わりに宿題手伝ってくれよ!」と言われ 結局今まで山本君のご好意に甘えていた。



 彼と話していると時間が過ぎるのはあっという間で 気が付けば既に校門。山本君は玄関ではなくグラウンドへ向かう。そこで彼と一旦分かれ 私は一人玄関に向かった。

 朝早いから余り人気はないけれど それでも幾らかは人がいて 今日は口々に何かを囁き合っている。彼らとすれ違う度に「沢田、笹川、告白」の3つの単語が耳に入ってくる――そう、昨日のツナ君の噂だった。教室の近くには例の持田先輩がいて 何やら大袈裟に噂を吹聴している。噂の発信源は彼のようだ。(最低!)


「…そしたらよ、あいつ真っ裸で『笹川京子!俺と付き合ってください!』なんて言ってよ!バーカ!てめぇなんざ京子が付き合うかってんだよ!」


 彼のギャハハと汚い笑い声に私は無意識に眉をしかめた。朝早く来ているクラスメートも彼の話に大笑いし 皆してツナ君を馬鹿にする。


 私はその空気がなんだか嫌になり踵を返す。そして普段なら絶対に自分から訪れようとはしない 魔の応接室へと足を向けた。







(負けるなツナ君!)
第1章16番show secret-2了.
17番に続く。



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