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彼女は明日のことを想像して楽しそうに目を細める。…この様子だと ツナ君のことを結構気に入ったのかもしれない。最初は面倒臭いだとか なんであんなダメダメを守らなきゃならないんだとか 相当文句言っていたから 私は少し嬉しくなって笑みをこぼした。
楽しい食事の時間が終わり 私が食器を片付けているとソファに寝転がっていた風羽が不意に声を上げる。
「そーだ…!9代目から贈り物があるんだった!すっかり忘れてた!」
彼女はバッと起き上がり私に近寄る。そうして懐をゴソゴソとまさぐると小さな小瓶を取り出した。中で炎(だと思うんだけど)がチラチラと揺らめいていて まるで生き物のようだ。
「私に贈り物…?9代目から…?」
「そう、これ。すっごく貴重なものだから大事にすると良いよ」
「貴重って…どんな風に?」
確かにちょっと変わってる。普通ずっとガラスの中に炎を詰めていると 内部温度がガラスの融点を上回って中側から溶けてくるはずだ(しかも白い炎って温度かなり高い)。なのに風羽が懐から取り出した小瓶は全然溶けていないし熱くもない。それどころか冷たく感じるくらいだ。
「んーこの小瓶、なんか特別みたい。しかも中に入ってる炎は死ぬ気の炎だし」
「え、死ぬ気の炎なの…!?」
「あ、『正確には死ぬ気の炎に酷似したもの』らしいけど」
誰の!?…じゃなくて。白い死ぬ気の炎ってあったっけ?なんて私は頭を捻り前世での漫画を思い出す。でもやっぱり白い炎なんて出てきた記憶はなくて…姉の言うことを疑う訳じゃないけど なんだか信じ難かった。
「…本当に?」
「あんた疑ってるわね」
「い、いや…そういうんじゃないんだけど……白い炎ってあったっけ?」
「んー…有ったような無かったような…。ま、どうでも良いんじゃない?貰っときなって」
風羽は至極適当に返事を返すと私の手のひらに小瓶を置いた。こうやって間近で見るととっても綺麗で 思わず目が惹きつけられてしまう。首に掛けてみると軽く小瓶が揺れて ゆらりと中で炎が転がった。
「すごく綺麗…」
「ふふ、よく似合ってるよ。9代目は『肌身離さず』って言ってたからそうやって首から下げときなさい」
「お礼、言わなきゃね。…そういえば風羽は何か頂いたの?」
「私?まぁ…一応…」
私が疑問を投げ掛ければ彼女は左手首を見せる。銀色の鎖が鈍く光っており シンプルだけど風羽によく似合っている。
「鎖…っていうかチェーン?」
「これも貴重らしいけど…どうせなら花凛みたいな綺麗なのが良かったわねー」
姉は少し不満そうに唇を突出した。確かに風羽ならこの小瓶も合っている。「じゃあ交換する?」なんて私が言い出すと彼女は軽く首を左右に振りこう言った。
「9代目がわざわざ私達にくださったんだから 文句は言えないわ。それに交換したら この鎖は花凛には似合わないわよ」
――全く彼女の言う通りだ。9代目は理由は言わなかったけれど 何か意図があってくださったに違いないのだから大切にしなければ。
私は優しく小瓶に触れ フッと微笑んでこう言った。
「うん…そうだね。私、大切にするよ」
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