愛と想い出と

今年もあと20分で終わる。

今年は本当に色々あった。

連続殺人事件の調査で稲羽市にやってきて、そこでペルソナやシャドウという存在と出会い、

己と向き合うことができ、

そして、大切な仲間と、大切な人と出逢えた。


やっと、「僕」から「私」になることが出来て、先輩と一緒にクリスマスイブを過ごすことが出来た。

正直、女子の制服を着るには抵抗があったけど、それでも、先輩が「私」が良い、と言ってくれて。

だから頑張って着た。


笑われるかと思ったけど、「可愛いよ」って言ってもらえて、本当に、本当に嬉しくて泣きそうだった。

あぁ私は本当に、先輩のことが好きで、先輩も私のことを好きでいてくれるんだ、って思った。

今までのクリスマスイブの中で、最高のひと時だった。


そして、クリスマス当日は、先輩の家でパーティーをした。

里中先輩、天城先輩、久慈川さんと4人でケーキを作ったわけだけど、

…3回失敗して、4回目のケーキでようやっと完成。

これならちゃんと食べれるだろう、と皆と食べたのだが、

先輩が驚きつつも、「美味しい」と言ってくれた事が嬉しくて、

その反面、もっと料理の勉強をしようと心に誓った。

今度は一人で作って、そして先輩に美味しいって言わせてみせる!

なんて見栄張って本人には言えなかったけど…。


「本当に、今年は色々なことがあったな」

思い出に浸っていたらあと今年も残すところ数分。

テレビはつけているが、面白い番組はやっていない。

正月は実家に帰らなければならなかったので、先輩と一緒に年を越せないことが凄く残念だった。


「…先輩と一緒にいられる時間も短いのに…」


体育座りをし、頭を膝にうめた時、

突然、携帯の着信音が鳴った。


このメロディはあの人だけ。

あの人だけ、特別な音にしてあるから誰がかけてきたかすぐに分かる。


急いで携帯を開いて、通話ボタンを乱暴に押す。

と同時にリモコンでつけていたテレビを消す。

電話越しに聞こえてきた、2,3日振りのあの人の声。


「やぁ、こんばんは」

「こ、こんばんは、先輩」

「今、時間大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です」

「そう、良かった」


あぁ先輩の声だ。

ずっと聴きたかった先輩の声。

高すぎず、低すぎない、心地よいあの人の声。

私の大好きな声。


「あの、どうしたんですか?こんな時間に」

「いや、うん、…直斗の声が聴きたくなっちゃってさ」

「えっ…」

「あ、迷惑だった?」

「いえ!そんなことないです!ぼく…私も先輩と話したかった、から」


夢みたい。

先輩も私の声が聴きたかったって。

すごく嬉しい。


「あと数分で今年も終りだな」

「そうですね」

「今年は、長いようで、あっという間に時が過ぎた感じだよ」

「色々ありましたからね…」

「お互い、お疲れ様」

「はい…お疲れ様です」


あの事件がなければ出逢うことはなかった。

先輩があの町に転校していなければ出逢うことはなかった。

色々な偶然が重なって、私達は出逢えた。

これは凄い、奇跡だと思う。

偶然と奇跡が重なって、私達は出逢えたんだ。


「直斗」

「は、はい」

「今年はお世話になりました」

「え、いえ、こちらこそ大変お世話になりました!」

「直斗と出逢えて、本当に良かった」

「私も、です」

「直斗…愛してるよ」


先輩が「愛してる」と言った瞬間、どこか遠くで除夜の鐘の音が鳴った。


「あ、もう年越ししちゃったな」

「…そ、そうですね!」

「直斗、顔、今赤いでしょ?」

「えっ!み、見えてないのになんでそんなこと言えるんですか!?」

「直斗のことなら何でも分かる」


まぁ確かに先輩の言った通り、顔は多分赤い。

むしろ真っ赤だと思う。

だって、不意打ちだ、あんな、あ、「愛してる」だなんてあんなタイミングで言うから!!


「直斗、いつこっちに帰って来れそう?」

「えーっと、3日には帰れると思います」

「そう…帰ってきたら一緒に初詣に行かない?」

「い、行きたいですっ!!」

「じゃあ一緒に行こう。二人っきりで」

「は、はい…」


わざわざ二人っきりって強調しなくてもいいのに…。

なんだかすごく恥ずかしい、けどやっぱ嬉しい。


「あ、言い忘れてた。あけましておめでとうございます。今年もよろしくね、直斗」

「あけましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします、先輩」


新年が始まった。

今年で先輩は稲羽市から去ってしまう。

それでも永遠の別れじゃない。

会おうと思えばいつでも会える。

会いにだって行ける。


残り3ヶ月、先輩と沢山の思い出が出来れば良いな、心からそう思った。

先輩もそう思ってくれてたら、いいな。


END

リクエストいただきました、主直で12月以降のイベントでの小説、でした。
…元旦は実家に帰ると言っていたので、こういう風にしてみたのですが…。
は、果たしてご期待に沿えたでしょうか?
折角リクエストして下さったのにこんなんですみません…。
リクエストありがとうございました!



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