A FOOLISH LIE 1
阿部君と、えっちした。
ううん、違う。
阿部君に、強姦された。
どこで間違っちゃったんだろう?
昨日は、久しぶりの西浦野球部飲み会だった。
オレもほろ酔い気味だったけど、阿部君は立てないくらいグデングデンに酔ってて、仕方なくオレのマンションに泊めた。
『阿部く、とりあえず、横になってて。
オレ、シャワー浴びてくる、カラ。』
『ん…』
ぐいって引っ張られて、あっという間にベッドに押し倒された。
それからは、されるがままだった。
オレだって男だし、高校・大学では投手やって筋力もついた。
だけどそれ以上に阿部君の力は強くて、日常生活でオレを冗談でポコリと叩いたりするけど、それは本当に手加減してるんだって、わかった。
『阿部く、やめ…っ!!』
『……』
阿部君は終始無言だった。
お酒で酔った虚ろな瞳で、オレを見ていた。
何度も何度も、犯された。
何度も何度も、中に出された。
そして、阿部君は沈み込むように眠りについた。
部屋に、阿部君の寝息が響く。
『…っ、ふぇ…ぇ…』
痛む腰と震える足を引きずりながら、風呂に駆け込む。
わかってる、阿部君はこんなことするはずない。
酔ってるから、だ。
オレを誰かと勘違いしたり―――ただの性欲処理として抱いたんだ。
だから、阿部君のせいじゃない。
降り注ぐシャワーの中で、ひとり声を押し殺して泣いた。
悲しかった。
苦しかった。
だけどそれは全部お酒のせい、だ。
そうしないと心が壊れてしまいそうだった。
―――阿部君が、好きだから。
「…おはよ、ワリ、
何でオレ三橋ン家泊まったんだっけ?」
「もー、忘れちゃった、の?
昨日の飲み会で、阿部君、酔っぱらって、帰れないほどだったカラ、だよ!」
「あー…そうだっけ。」
グシャグシャになったシーツも替えた。
阿部君に服も着せた。
腫れた目も冷やした。
痛む腰も笑って隠した。
全て、何も無かったかのように。
逃げたかもしれない。
けど、それでも良かった。
[*返球][送球#]
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