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取り返しのつかない事になる前に(戻れないから過去というのだ)

高校の時、スゲー好きなヤツがいた。
今でも、夢に出てくるほど。
夢の中ではオレもアイツも笑ってて、二人ともお互いが愛しいって顔をしていた。
好きだって言ったら、自分もそうだと返してくれて。
だけど、それは所詮、夢。



『阿部く、ぁべく、起きてっ…』



『ね、阿部く…』



『寝てます、かー?』



『……っ、阿部く、』



『阿部君、好き、です…』



いつもそこで目が覚める。
アイツが出てくる夢のラストは毎回必ずオレがうたた寝してしまって、その傍でアイツが『好き』と囁くのだ。



もうオレには傍にいる資格も権利もないくせに。




「阿部君、オレ、彼女できたんだ!」



あれは先日あった成人式での飲み会の場だった。
そこで言われた一言。
オレは、ああ、そうなの。と陳腐な言葉を返しただけだった。



「阿部君は、付き合ってるヒト、いないの?」



「いない。
それより就職のことだけど―――」



そう言って、オレは話を無理やり変えた。



「オレ、三星の会社、つぐんだ。
彼女も、大手の社長レイジョーで、婚約同然、だ。」



「ふぅん。」



ノロケだと思った。
自分は会社の社長になって、金持ちの嫁をもらって幸せになるっていう、自慢。




そんな事考えるくらい、好きだった。
三橋が誰かのモノになるなんて、許せなかった。
両想いになれなくても好きなヤツが幸せならそれでいい?
そんなの、いいわけねぇだろうが。




今にして思えば、三橋のこの発言はオレに向けてのメッセージだったのかもしれない。






ピリリリ、ピリリリ




ケータイの電話音が響く。
着実は“三橋廉”



「はい。」



『あ、阿部、く?
良かった、出てくれて。』



「どーした。
珍しいじゃん、三橋から電話くれんなんて。」



『ん、あのね、阿部君に、話して、おきたいコト、あって。』



「なに?」



『好き、だ。』



「は?」



『今言ったこと、忘れて。
それか、忘れなくても、いいカラ、思い出さないで。』



「ちょ、三橋、」



『ばいばいっ』



ブッ



電話は切れた。
何だったんだ。
オレを、―――好き?
まさか。
電話をかけ直しても、繋がらない。
家電にかけると、三橋の母親がでた。





『もしもし、阿部君?』



「はい、あのっ、み、…廉さんはどこにいますか?」



『あぁ、あの子今度ニューヨークで挙式するでしょ?
だからもう今日から向こう行ってるのよ。』



ニューヨーク…?
そんなこと、一言も聞いてない。



「あぁ、そうなんですか。
スミマセン、あの、招待状無くしちゃって。
いつ、どこででしたっけ?」







三橋、オレはお前を追いかけるぜ。
お前がイヤだって言っても。
そんな事考えるくらい、好きだった。
三橋が誰かのモノになるなんて、許せなかった。
両想いになれなくても好きなヤツが幸せならそれでいい?
そんなの、いいわけねぇだろうが。



あの夢だと思ってたことも、本当だったのかもしれない。
いきなり彼女できたと言われた時に、余計な事を考えずに三橋に告白してれば良かったのかもしれない。



三橋からの最後のメッセージ





攫いに行こう、どこへでも。
(未来はどうなるか予測不能)

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