[携帯モード] [URL送信]
好きだなんて言えない



オレの知っている阿部君はいつも理性的だった。
オレの腕を捕らえて、押し倒して、ましてやこんな切羽詰まったような目で、オレを見ない。
うん。
だから、“この状況”はオカシイんだ。



「あべ、くん、どいて?」



「……」



問いかけたけど、覆い被さっている阿部君は何も答えない。
どうしよう、押しのけた方がいいのかな。
そんなことを思っていると、阿部君の手がオレの頬に触れてきた。
温かくて、キモチイイ。
ふにゃりと笑うと、ゆっくりと阿部君の顔が近づいてきて、それで――…



唇が、ふれあった。



ドンッ



「な、ん…?」



「…ゴメン。」



そう謝って、俯く阿部君にオレは混乱した。
謝るくらいならしなきゃいい。
なんで、コンナコトしたのかわからない。
だって、だって。



「オレ達、別れたんだ、よね?」



「ああ。」



「そんで、阿部君は、篠岡さんと、付き合ってるん、だよね?」



「…ああ。」



それは、突きつけられたら現実だった。








好きだなんて言えない











別れたのはつい最近。
オレが、阿部君に振られた。
“ゴメン”って、言われて、その顔があまりにも辛そうだったから頷くことしか出来なかった。
その翌日、篠岡さんと付き合い始めたらしいと誰かから聞いた。
帰り道に篠岡さんと阿部君が一緒に帰るのも見たし、陰に隠れてキスしているのも見た。
そこで、オレとはかなりプラトニックな関係だったなと思った。
せいぜい手を繋ぐくらいで、キスなんて一回もしなかった。
そう思うと吹っ切れた。
阿部君と篠岡さんが仲良くしてるのを見ると、ちょっと苦しかったし、阿部君と二人きりになると息苦しくなったりしたけど、だんだんと気持ちを捨てられるようになってきた。



なのに。





「うわ…っ!?」



ドサリ



また阿部君は覆い被さってきて、今度はガッチリと頭上に腕をまとめあげてオレを見つめた。
こんなちゃんと顔を合わせたのはいつだろう。
本当は、わかってる。
学校というのは、すぐに噂が広がるところだ。
男二人で付き合ってるなんて知られたら…そんなリスクを背負わせるわけにはいかない、お互いに。



「篠岡さんと、付き合ってるん、だよね?」



「…ああ。」



また同じ問答。
ならこれならどうだろう?



「篠岡さんが、好き、なんだ、ろ?」



「…、」



そこは即答しなきゃいけないんだよって言ったら、泣きそうな顔された。

[*返球][送球#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!