A FOOLISH LIE 6
オレはその足で、彼女のマンションに向かった。
柳沢はいきなり来たオレに驚いたけど、喜んで部屋に招き入れようとした。
「ここでいい。柳沢、話がある。」
靴も脱ごうとしないで玄関で立ち尽くすオレを、柳沢は不安そうに見つめた。
柳沢は心なしか震えている。
何を話しに来たのか、わかったのだろう。
「別れてくれ。」
「――…、どうして?」
「好きな人がいるんだ。」
言葉は少なめにしたほうがいい。
頭の中で、予想される質問と適切な回答を考える。
これからも会社で一緒に仕事する仲間なんだ。
滞りなくするために。
「もしかして、この間来た時に気になってた部屋の女の人?
あの人なら無理よ、彼氏がいるもの。」
「、」
柳沢は茶化すようにそう言った。
大人なんだな、と思う。
柳沢も会社で気まずくならないようにしてるんだ。
「あの人の彼氏、阿部なんて目じゃ無いくらい、黒髪のつり目でカーッコイイんだから!」
「…え?
茶髪じゃなくて…?」
「そうよ。
こないだあの部屋に入って行った男の人は、親戚とか聞いてるわよ?」
(…!どういうことだよ。)
「ま、今度付き合うことになったら幸せにしてあげなさいよ。」
「…ああ…」
頭が追いつかないまま、早々に送り返された。
三橋に彼女はいなかった。
女の方が二股をかけているのかと思ったけど、そんな女を三橋は選ばないだろう。
もう一度、三橋のところへ行って問い詰めたかったけど、オレももう疲れていた。
[*返球][送球#]
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