[黒ハル→綱/微グロ]save the Boss
「うぐああぁあぁ!!」
造形もさることながら、その声まで醜い、地に伏した名も知らぬ男にナイフを突き下ろす。
ああ、いい感触。
「…がッ……何故……」
男が必死に音にしようとする言葉は、私の予想を裏切って、耳に馴染んだ日本語だった。
向こうさんも必死なんですね、
わざわざ絶対数の少ない日本人の殺し屋を雇うなんて。
「…デっ……データでは……お前は一般人の……は、ずっ!!?」
「うるさいですねぇ」
男の腹に突き刺さるナイフの柄を踏み付け、ぐりぐりと食い込ませる。
「その汚いボイスを聞かせないで下さい。乙女の耳が腐っちゃいます」
締めにガツッと柄を蹴飛ばすと、男はびくんと大きく痙攣した。
「…ボンゴレの情報網とその操作力を舐めないでくださいね。近所の女子中学生だって、制服に武器を忍ばせたボディガードかもしれないんですから」
本当の非常時にしか動かないけれどね。
そう、例えばこんな風に、敵対勢力が彼を狙って来た時とか。
ボンゴレ及び同盟のファミリー以外からの事前情報のない"来客"なら、お寝みさせて差し上げる。
それが指令であって任務。
つまるところ私の使命は、
脚本に組み込まれていない、舞台に上がらせる必要すらない観客から、
彼を守ること。
「……アロー?三浦です。
"お客様"がお寝みになられたので、床へご案内差し上げて下さい。
…ええ、そうです。はい、了解しました。……お互いにね。それじゃ、グッナイ」
普段持ち歩いているそれとは別の真っ黒な携帯電話を、学生鞄の奥にしまいこむ。
この残骸はもう幾分も待たずに、有能な処理班が綺麗さっぱり片付けてくれることだろう。
さ、私の仕事はここまで。
「…ツナさんに会いたいなぁー…」
醜いものをさんざ見た後なのだ。
あの可愛らしい顔や高めの声、全てを包む優しさに癒されたい。
彼を思い浮かべようとすると、最初に出てくるのは綺麗な笑顔。
今となっては真っ白という訳ではないだろうけど、それでもやはり綺麗な笑顔。
私にとって、憧れる人。
私にとって、何より好きな人。
私にとって、護るべきボス。
「…大丈夫ですよ、ツナさん。
あなたを狙うこんなゴミ屑、ちゃーんと、ハルがデリートしてあげますからね」
save the Boss,
私の名なんてそれで結構。
(傍においてください、大丈夫ただの仕込み武器ですから)
――――――
一度書きたかったスレハル。リボーン以外は誰もハルの正体を知らない。
このハルはボンゴレの人だけど生まれも育ちも日本。
イタリア語は微妙。英語はペラペラ。
表題の元ネタは、FF9の敵側女将軍ベアトリクスの武器:セイブザクイーン。
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