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[+10綱骸/鬼畜暴力]cage in The sky

「むくろ」

呼ばれたので振り返った。ら、鳩尾にピンポイントでスイッチ最強の右ストレートが決められた。
避けるどころか気付けもしない。抗争やトレーニングですら出さない本気をここで使うのが非常に彼らしい。

「あー良かったぁ、居なかったらどうしようかと思った」

普段のそれとなんら変わらない明るい声。
彼はその言葉の間隙にも手加減無しで僕の身体中に拳を打ち込んでいく。

声を出したらきっと腕を折られる。
先々月がそうだった。

「…どこにも行くわけないか。俺のとこにずっと居るよな、骸」

とうとう立っていられなくなり床にへたりこんだ僕に目線を合わせるように屈んだ彼が、頬にそっと触れてくる。
確かに温かいその手が、何より怖い。

「………なに怯えてんの?」

途端、すっと冷たくなった瞳に縛られる。
視線だけなのに幻覚かと紛うほどに寒い。

「そんなに俺が嫌?」
「っ、ちが」

研ぎ澄まされたナイフのような声に言葉に、必死に否定をかける。

「ちがいます、ちがうんです、綱吉くん」

ゆるゆると首を左右に振り、彼の手に縋りつく。
しかし彼は至極不機嫌そうに眉間に皺を寄せて立ち上がると、乱雑に僕の手を振り払う。

「どうだかな。お前だって嫌なんじゃないの?こうやって俺に付き合わされるの」
「ちが、違います…」

もう動けそうにない身体をどうにか起こし、座り込む形で彼を見上げる。

「無理すんなよ骸。俺は別にいつお前から離れたって良いんだから」

ふわりと柔らかい笑みを浮かべる彼に、全身の血の気が引く。
ああ、このひとは本気だ。

「や…、嫌です、」

見上げる視界いっぱいに、唯一の大空。

「お願い、します、お願いですから」

地面がなくても生きていけるけれど、この大空が無ければ世界はどこにもない。

「棄てないで、ください」

もう涙が落ちようが嗚咽が零れようが構わず必死で縋る。

すると、腹に本気で蹴りを入れられる。

「…ふーん、それ本音?」

壁に叩きつけられ、手を革靴でぎりぎりと思い切り踏み潰される。

「ほんとです、…綱吉くん、棄てないで、」

ください、と続けようとしたら、ふいに手から重みが引き、また彼の明るい声がきこえた。

「あっははは!骸はかわいいね」

そして酷い痣が幾重にも重なる僕の手が、彼の少し小さく白い手に引かれる。
そのまま立たされると、身体がふわりと彼の体温に包まれる。

「あ、」
「大丈夫、俺はここに居るから」

ぎゅっと抱きしめられると、傷跡や痣で隙間なく埋め尽くされた身体が痛む。
その痛みが嬉しくて仕方ない。

「…っ、綱吉くん、つなよしくん…」
「うん」
「ありがと…ありがとうございます」
「うん、いいから。 ……骸、ひとつだけ忘れんなよ」

彼の手が、やさしくやさしく僕の頭を撫ぜる。


「お前が望んだから、俺はこういうこと
してんだからな?」


彼の手に、自分の手をそっと重ねた。


「はい。…ありがとう、ございます…っ」


確かに温かいその手が、『離れてしまうことが、』何よりも怖かった。



 [cage in The sky]















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