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やがて来る変えられない結末(SPシル→ゴー←クリ/死亡if)
【ニアホモ/パラレルワールド利用】





「お前らと出会えて、ホント、楽しかったぜ」
 ああ、だめだ。
「ゴールド、待って、行かないで!」
「じゃあな!」
「ゴールド!! 行かないで、行っちゃだめ!!」
「……クリス、もうダメだ。あいつは引き返さない、そういう奴だ」
「……ゴールド……」
 二本の羽を握りしめて、オレたちはまた、何度目かわからない絶望に包まれていた。


「シルバー、もう、“飛び”ましょう? ……だって、もう」
「……ここでオレたちがこの空間の外に出ないままだと“三人が生きて帰らなかった場合”というパラレルワールドを、無駄に増やすことになる。“飛ぶ”のは、もう少し後だ」
「そう……そうね、ごめんなさい……」
 オレとクリスは、必ず姉さんたちのところへ帰らなければならない。それが何度となく繰り返したことであっても、その度に、やがて来る変えられない結末をなぞっているだけでも。
「一体どこから変えればいいの? わたしたち三人が出会ったところまで“飛んで”も、これじゃ……」
「……ここに来られただけまだマシだ。オレが一人で“飛んで”いたときは、それより前の段階で何回死なれたかわからない」
 特に、スズのとう、いかりのみずうみ。目と鼻の先で何度も何度も、ゴールドは死んでいった。危うくオレまで一瞬の差で命を落とすところでなんとか“戻った”こともあった。
「次、どうしよう?」
「一度、オレたち三人が出会った少し後の時点まで“飛んで”、お前を置いていく。オレはそこからもう一度、ゴールドと出会ったところまで“飛ぶ”」
「……わかったわ。じゃあ、またあそこで。気をつけてね」
「ああ」


 ここから出ると、オレはトキワジムのリーダーに連行される。姉さんたちと完全に別れて、道中、力ずくで振りほどいて逃げる。加減ができずに向こうを軽く負傷させたことも何度かあったが、多少のことに構ってはいられない。
 クリスにすべて打ち明けた以後は、あらかじめこの時空の狭間で相談して決めておいた場所に向かって落ち合う。そして、二人で“時空を飛ぶ”。
 あいつを、ゴールドを、助けるために。


「大丈夫よ、絶対……ゴールドが生きて帰れる未来だって、あるはずよね……」


 何度も何度も繰り返していることだ。細心の注意を払ってはいても、あいつへの接し方、話し方、初回とまったく同じだとは言い切れない。それでも、そうしなければならない。
 未来を知っていても、知らないつもりで行動しなければならない。別の場所で大切な誰かが傷ついていることがわかっていても、初回の行動に準じなければならない。
 “すべてが終わった時点でゴールドの命を助ける”こと。オレが変えていいのは、その一点だけ。元々そういう約束だ。


「……作るんだ、オレたちで、その結末を」


 ずっと誰にも見せずにいた七つ目のボールを確認する。“ときわたり”が、微笑むようにこちらを見ていた。
 クリスは強い瞳で頷いて、光の渦へ飛び込んでいった。羽を握った手が途切れないように、すぐにオレも続く。


 視界が白く染まったその瞬間に、何度となく見送ったつい先ほどの心からの笑顔が、混戦で攻撃を受けて出血が止まらなくなった時のごまかすような笑顔が、いかりのみずうみで俺を庇って串刺しになったときの悟った笑顔が、スズのとうでアサギのジムリーダーを俺に託して事切れる寸前の笑顔が、リングマの山で崖の下から子供に見せた苦しそうな笑顔が、
 最初に出会ったときの腹の立つ顔が、ひどく鮮明にフラッシュバックした。




120307




(オレは、わたしは、お前が、あなたが、死んで終わった“時空”なんか)




 













あきゅろす。
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