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こっちがどんなに与えても、なかったことにする思考回路を持ってるみたいだな?(SPシルゴ/暴力)
【※一方的な暴力/シルバー最低】






「オマエ、世界で自分が一番可哀想だと思ってんだろ」
 たった今、ソファに突き飛ばして殴った相手の口から出る言葉だとは思えなかった。ゴールドは、切れた唇から垂れた血を手の甲で拭って、オレの両肩を強く掴んだ。
「そういう考え、捨てろっつったよなぁ? いい加減にしろよ、視野狭いにも程があるんスけどね」
「……うるさい、何がわかる」
「わかるわけねーだろーがよ、お前言わねーんだもん。わかってほしいなら口で言えっつの、はっきりよぉ。なんのために共通言語喋ってんだよ……おい、オレの目見ろよ」
 頬を挟んで正面に向けられて、見たくもない金の瞳とかち合った。苛立ってまた殴った。吹っ飛んで床に落ちてもまた起き上がってこようとするのは見えているから、手を思い切り踏みにじった。居間は土足だ。
「いっ……、っ! あ、ぎぁっ!!」
 胃の辺りに体重をかけた。吐かないだろう、一昨日から食べさせていないから。
「ゴールド、楽しいか? そうやってオレを貶めて、お前は楽しいのか?」
「づっ、う、あ、ちが……バカ、被害妄想も……、大概に、ごほっ!」
 渾身の力を込めて蹴り飛ばした身体は、フローリングを少し滑って壁にぶつかった。腹をおさえて動く気配がない。
「……なぜ、抵抗しない? お前は女じゃない、本気で抵抗すれば逃げられるだろう? なぜそうしない? どうしてここに留まるのに、オレに説教じみたことばかり言うんだ」
 荒い呼吸だけが聞こえる。てっきり奴のものかと思っていたが、息が上がっているのはオレの方だった。
 ゴールドはぎこちない動きで身体を起こすと、壁に縋るようにふらふらと立ち上がった。
「は……っ、よく言うぜ、どーせ逃げようとすりゃぶん殴って縛りつけでもするくせによ。お前、何もかもに甘えてんだよ、気付けよ」
 何日か前に痛めた片脚を引きずりながら近付くと、ゴールドはところどころ皮が剥けて赤くなった手でオレを抱きしめた。
「そのくせ、こっちがどんなに与えても、なかったことにする思考回路を持ってるみたいだな?」
 すぐ目の前に、腫れてまともに開かない瞼が、ぱっくり割れて塞がりかけている額が、まだ血が乾いていない唇の端が見えた。
「オレはお前から何か与えられた覚えはない」
「あーはいはい、そうかよ、わかんねーんだもんな。オレはお前からさんざん与えられてるけどな、ケガとか痛みとかよ。たまには輸血でもしてほしいっつの、あ、血液型合わねーか?」
 自分でも、マトモでないことをしている自覚はある。
 どうしてこいつがこの状況下で、普段通りにペラペラと喋れるのか、その方がわからなかった。
「なあシルバー、忘れんなよ、オレはお前を拒絶しねーから。……だからお前も、早いとこ気付いてくれよ」
 ぼそりと付け足された、できればオレが死ぬ前に、という文言が気に食わなくて、抱きしめる腕を引き剥がしてまた殴った。




120305
 













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