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海が見える(立→綱/暗くない)
【FFI期間、ライオコットで練習中】





「立向居?お前帰んねーの?」
「あ……俺もうちょっとだけ残ります」
「まぁーだやんのか?もーすぐ晩飯だぜ?無理しすぎんのもよくねーぞ」
「いえ!すぐ、もうほんとすぐ行きますから、綱海さん先に戻っててください!」
「ん、だったらよし!じゃ俺行ってるからなー」

 いつも通りの屈託のない笑みを浮かべる姿が、夕陽を背負って一瞬影になった。
 そう思った瞬間、立向居はほとんど無意識に、たったいま見送ったはずのその腕を掴んでいた。

「……?どした?」
「えっ、あ……」

 きょとんとした顔を向けられ、立向居は慌ててその手を離して後ずさった。
 言われるまで腕をとってしまったことに気付いていなかったかのようだった。

「ん?やっぱ俺も付き合うか?練習」
「あ、いいいや!違うんです、ごっごめんなさい!」
「そっか?ならいいけどよ」

 一度開いた距離がまた縮まる。綱海にわしゃわしゃとかき回すように頭を撫でられ、立向居は思わず目を瞑った。大雑把で乱雑な手つきなのに、大らかさや包容力や優しさ、人柄がそのまま伝わってくるような撫で方だった。

「つ、綱海さんっ」
「お前割と一人で悩んじまうとこあるからなー。悩む前にっつか、あー、なんかこれムリ!って思ったら、誰でもいいから言えよ?俺でよけりゃ聞くし!」

 海みたいな人だ、としみじみ立向居は嘆息した。まさかその本人が理由で悩んでいるなどと、正直に言えるはずもなかった。
 うっすらと目を開けると、影を作っていたはずの夕陽は、遠くに海が見える風景と目の前の海に溶けて見えた。














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