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[帝→(←)正→(←)臨→静/黒]愛憎クロスロード 2-1


From 折原臨也
Sub Re:
本文 暇。





 タイトルくらいつけ直せよ。
 舌打ちして、正臣は携帯を乱暴に閉じた。
 帰り道、いつも別れる交差点。振り返れば、まだ帝人と杏里の後ろ姿が見える。
 あの日常にも数時間お別れだ。
 明日になれば元通り。夜だけだ、朝になる前には終わるんだ、あの陰惨な時間は。

 自分にそう暗示をかけて、正臣は駅に向かって歩き出した。

 山手線四駅分の片道切符か。やっすい愛。
 さ、地獄まであと十五分。




「十七時三十四分。この前より二分遅い」
「…ああそうすか、それはどうもすみません。ご存じないかもしれませんが日本国の自動車道路には信号機と横断歩道なるシステムがあるんで」
「あれ?なんか不機嫌だね。俺に逢えたのに嬉しくないの?」
 そんなことありえないよね、とでも言いたいのか。いや、声にしてないだけで言ってるのか。
 苦々しげに唇を噛みながらも、正臣は臨也の言葉を否定することができなかった。
「ほら、嬉しいでしょ?呼び出されて幸せなんでしょ?」
 言葉で正臣を突き刺しながら、臨也は椅子に腰掛けたまま立ち上がろうともしない。

「だって君は俺が大好きなんだから」
 パソコンに向かったままそう言い放つ臨也に、怒りより先に哀しみが湧いてくる自分に気付き、愕然とした。

 結局何も言い返せないまま、正臣は黙って椅子の脇に膝をついた。

「あ、今言おうと思ったんだよ、気が利くね。やっぱり君は賢いよ、使い捨てにするの勿体ないくらい」
「……何がですか」
「わかってくるくせに、わざわざ俺の口から聞きたいの?」
 臨也は嘲笑して、膝立ちのまま俯く正臣の方に椅子を向き直した。

「もうシズちゃん以外ベッドには連れてかないって決めたし、俺ここ動きたくないから、このままご奉仕して」
「…あんたが座ったままだと、俺の身体がキツいんすけど」
「うん知ってる。あ、忘れるとこだった。寝室のサイドボードからローション持ってきてよ」

 どこまでイカれてるんだよ、この野郎。…ああだけど、他人のこと言えないな。

 屈辱以上に、これからされることへの期待の方が大きいとか、俺もいっぺん死んだ方がいい。


 手のひらに爪が食い込んで赤く滲むほど拳を握り締めると、正臣は臨也の命令通りにするため立ち上がった。



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