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[遙か3/病話]弁→九→知

 縁側に座り込み、真っ白い庭を眺める君。

「…九郎」

 ともすれば、生気のないその後ろ姿がそのまま降る雪に溶けてしまうのではないかと思い、努めて優しく声を掛ける。

 けれど、君はまるで人形のように凍り付いたまま、何の反応すら見せない。
 身体も、瞳も、心さえも。

「九郎、冷えますから…」

「なあ、弁慶」

 僕が伸ばした手が触れる前に、九郎は魂の抜けたような声を出した。

「あの海は、一体どれだけ冷たかったのだろうな」

 風向きが変わり、九郎にぱさぱさと雪が降りかかった。
 その瞳は、空も僕も何一つ、現世のものを映してはいない。

「……っ、九郎…」

 僕には何よりも、今抱き締めている、すっかり痩せこけたこの身体の方が冷たく思えた。


「今日は、雪が綺麗だな」

「そうですね…」

「なあ、弁慶」

「…なんでしょう?」


「こんな日に死ぬのも、悪くないと思わないか」


 ようやく笑った君の顔は、雪化粧か死化粧か、あまりに白くて泣きたくなった。


――――――


高館にて。



あの海=壇ノ浦
現世〜=故人の知盛しか映っていない
「こんな日に死ぬのも、」=知盛が壇ノ浦で死ぬ時の台詞と同じような台詞

090706













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あきゅろす。
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