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[遙か1/悲恋]詩→イノあか←天

「……ねえ、天真先輩」
「あー?なんだよ」
「今、イノリくんにそっくりな人見かけたよ」

その名前に驚いて、自分よりずっと背の低い後輩と目を合わせた。

「まさか。どれだよ」
「あーもう顔見えないかな、ほらあの…」

ついと指さされた先には、確かに赤い髪があった。

「ショートの女の子の隣か?」
「うん」
「髪型全然違うじゃねーか、あいつもっとちんちくりんだったぜ」
「でも顔がすごく似てたの。イノリくんがもう少し大きくなったら、あんな風になると思うな」

後輩はぼんやりと虚ろな瞳でそう語り、そら似の他人の後ろ姿を見送りながらどこか遠いところを見ていた。

「…なんてね!あーあ、あかねちゃん元気かなぁ」

振り向くと、今度は無理をした明るい笑顔。そして出された名前に、自分自身の心も相当ぐらついた。

「あいつならどこ行ったってやっていけんだろ、…あいつらなら」
「…うん、そうだね、そうだよね」

あちらとこちらでいつも自分達の傍に居た、…もういない、二人の顔を思い出した。

「……なぁ、詩紋」
「なに?」
「なんつーか、その…」

小さな背中をばんっと叩くと、細い身体がふらっとよろめいた。

「俺も失恋したしさ、な」

ははっと力無く笑うと、つられるように、詩紋も泣きそうな顔で笑っていた。


 [どうかあなたが幸せでありますように]



――――――

あかねがイノリとくっついて京に残った。天真はあかねが好きだった、詩紋はイノリが好きだった。詩紋が見かけた人は花梨とイサト(現代END)。


090315













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