綱骸と思わせて綱獄[死話]
「綱吉くん」
「つなよし、くん」
「…沢田綱吉」
「まったく、何をしているんですか君は」
「一人で勝手に誰もかれも置いて行って」
「昔…少なくとも僕が知ってる頃の、からそうですね、自分がやらなきゃダメなんだと言わんばかりで」
「結局他人を巻き込むじゃないですか」
「…消えるのは勝手ですがね、それで哀しむのも泣くのも、君じゃないんです」
「だけど、君にしかできないんですよ、」
「あの子の涙を止めるのは」
棺の前に膝を抱えて座り込む彼の嵐を、いっそ靄に近いほどの濃霧が、庇護するように包んでいた。
[遺しもの、遺されもの]
(蒼い瞳に映るその姿は、大空に浮かぶようにも、深海に沈むようにも見えた)
080912
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