3 B 瞬間。 日番谷は猛ダッシュで駆け出した。 それを暫し唖然と見ていた吉良は、ハッと我に帰り、執務室の襖を勢いよく開けた。 「市丸隊長っ!!」 「何や、イヅル。そないに慌てて」 書類に目を向けたまま、市丸は答える。 「…日番谷隊長、泣かれてましたよ」 「…冬が?」 「会いに行かれたらどうです?」 市丸の手の動きが止まった。 が、それはほんの一瞬のことで、すぐに手の動きは再開された。 「…出来ひんねん、それは。」 「何故です?」 「僕な、自分で決めてん。この書類が全部終わってから、冬に会いに行こうって」 「そんな…」 「せやから、これ今日中に終わらすなァ」 吉良は何かを言いたそうにしていたが、市丸の要求を了承した。 市丸はものすごい速さで、ものすごい量の書類を全て片付けた。 吉良は深夜に終わればいいか、などと思っていた。 だが、空はまだ赤みがましたばかり。 「隊長……!」 吉良が市丸に話し掛けようとしたが、すでに執務室に市丸の姿はなかった。 前へ次へ |