[携帯モード] [URL送信]

遠藤探偵事務所の事件譚
Day2-4

ピンポロリ〜ン

ピンポロリ〜ン


遼の部屋の前。
先程からインターフォンを鳴らし続けている。

「居ないんじゃねぇの?」

「くそっ…アイツ高飛びしやがったかっっ」

「どこの昭和のデカだよ」

砂羽は意地になってインターフォンを鳴らしていたが反応は無い。
チッと舌打ちしたかと思うと今度は力一杯ドアを叩く。


ドンドンドンドン!

「居るのはわかってんだぞっ!観念して出てこぉい!お前は完全に包囲されている!田舎のお袋さんが泣いてるぞぉ!」

「おいおい…フルコースだな…」

遠藤はドアを叩く砂羽の横で座り込み呆れている。

「ボス!こうなったら強行突破です!」

手で拳銃の形を作りながらドアノブに手を掛ける。

「2時間ドラマじゃないんだから、そんな簡単に鍵掛かってませんでしたぁ〜なんてことあるわけ…」

ガチャリ…

「「開いたぁぁぁ!」」


扉はアッサリと開いた。

「ボ…ボス…どうしましょう?」

恐る恐る中を覗く。

「こ…こんにちわぁぁ…クロネコ佐川のヤマト急便でぇぇす…どなたか居ますかぁぁ??」

遠藤の声に反応は無く、部屋の中は静まり返っている。

「これ…部屋の中捜索するチャンスなんじゃないですかボス?」

「アホか!!不法侵入だぞ?!俺まだシャバでやり残したこと一杯あんだよね。すき焼き作って出所を待っててくれる岩下志摩も居ないんだよね!」

砂羽はニヤリと笑い遠藤の背中をドンと押した。
素早く自分も部屋に入りガチャりと鍵を掛ける。

「はいこれでもう逃げられません〜先に入ったのボスですからねぇ〜」

「お前が押したんだろぉがっ!」

まぁまぁと言いながら砂羽は部屋を物色し始める。

入った部屋は蒼の部屋とはシンメトリーになっており、部屋数も同じようだ。
男の部屋にしては小綺麗に掃除されているあたり、女が居るのは間違いない。



「…やっぱり。これ見てくださいボス」

砂羽の開いた靴箱には女性物の靴が並んでいた。

「蒼さんのって決まったわけじゃないだろ?」

「だって名前書いてますもん…ほら」

並んでいる靴全てに【蒼】と名前が書いてあった。

「バカなのあの子…」

「ちょっとお茶目なだけですよきっと」

そう言いながら砂羽はズンズン部屋の中へ入って行く。
きっちりと手袋をつけ部屋中を調べていく。

「なんかマニアックな部屋ですね…」

リビングのガラスケースにはアニメのフィギアらしき物とゲートボール大会のトロフィーが雑に並べてある。
大きなTVにオーディオセット、寝室には社長さながらの豪華な机にパソコンが3台も並んでいた。

「この人…株までやってんの?!」

砂羽はパソコンを立ち上げ調べ始めたた。
人の秘密はパソコンにあり。中身さえ見ればその人のだいたいの素性がわかる。

「……あれ?これオンラインゲーム??」

調べているうちに、頻繁にログインしているらしいゲームを見付けた。
デスクトップにショートカットがある時点で毎日やっていることは明らかだ。

「やっぱりパスワードがいるかぁ…」

パスワードがなければログインは出来ない。

「ねぇボス!ちょっと気になるゲーム見付けたんですけどぉぉ!」

リビングを捜索中の遠藤を呼ぶ。
だが返事は無い。ただの屍のようだ。
仕方なくリビングへ向かった。

「ボス。なんか気になるゲー…って何を号泣してんですか?!」


大きなTVを見ながら遠藤が号泣していた。

「砂羽これ見たことある?めっちゃ感動するよこれぇぇ…主人公ダメすぎて泣けてくるよぉぉなんか親近感沸くわぁぁ」

どうやら勝手にDVDを見ているようだ。

【ハローワーク〜僕とオカンと時々2ch】

ダメ男がオカンとなんやかんやあって、結局なんやかんやでダメ男だったという話。
結構人気のあった映画だ。

「ボスも似たようなもんですから早く泣き止んでください。それよりボス。気になるゲームをパソコンで見付けたんですが」

「なに?エロゲ?」

「いいから来てください!」

いつものごとく襟を掴み引きずって連れて行く。

「わかったって!見るよ見る見る!」

砂羽はゲームのログイン画面を開いた。

「ネバーワールド??」

「はい。これオンラインゲームなんですけど最近良い噂を聞かないんですよね。ネットゲームって足が付きにくいから、裏の取り引きの連絡によく使われてるらしいですよ」

「裏の取り引きって?ニンニク卵黄とか青汁とか?」

「そんなんTVでしょっちゅうやってるでしょうが!!表沙汰に出来ない物ですよ!白いアレとか…」

「白い…アレ?…///」

「///←これやめてもらえますか?なんか嫌です。白いアレとか海賊版DVDとかですよ」

「海賊版?…確かにここじゃ大量生産できそうだもんな」

回りを見渡すとプリンターが3台もならんでいた。
近くの段ボールを開けると空のCDケースが大量に入っていた。

「ラーニングスピードだ」

「ボスこれって今流行りの聞くだけでスワヒリ語がマスター出来るってやつですよね?」

プロゴルファーの石川遼がCMをしているヒヤリングCDだ。
巷では品切れ状態が続いている。

「これいいよねぇ〜俺も持ってるけどすごいよね。聞いてると5分で眠れるもん」

「いや…使い方間違ってる気がしますけど…遼さんは売人なんですかね?だとしたらこのネバーワールドがますます気になります。きっとこれで連絡取ってるはずですよ」

「でもパスワードわかんなきゃ入れないじゃん。しかも俺達が調べてることと関係ないし…」

「そんなこと調べてみないとわかんないでしょ?!パスワードどこかにメモしてたりしませんかね?」

机を探したがそれらしきものは無い。
パソコンも調べてみたが履歴なども全て消しているらしく何も出てこない。
かなり用心深いようだ。

「やっぱり諦めるしかないかなぁ…」

「止めとけ止めとけ。部屋物色するだけでも犯罪だよ?これ以上罪重ねるのやめよぉよ」

遠藤は腕組みをし、ウンウンと頷きながら言った。

「ねぇ、ボスなら忘れそうなパスワードってどっかにメモしたりしないんですか?」

「俺?俺ならパソコンから手の届く範囲で、まさかそんな所にっっ!!って場所に書くな。落ち葉を隠すなら森にって言うだろ?例えばさぁ、このプリンターの蓋を開けた所とかさ♪」

遠藤はプリンターの上部に手をかけ開けた。
そこには蓋の内側一面に大きな文字が書かれている。

【*】

「「ん?」」

隣のプリンターも開ける。

【1】

「「んん??」」

最後の1台も開けて見る。

【5】

「「んんんんんん?!」」

横一列に並んで【*15】という文字が並んだ。


………


「シャープ15??」

「何の数字でしょうかねぇ…こめいちご??米フィフティ??」

「俺、福島出身だけどそんなハイカラな米の銘柄聞いたことねぇよ?」

「私の故郷広島でもこんなナウイ米の銘柄聞いたことないですねぇ…」


二人の脳裏にはもうこれしか浮かばなかった。

パスワード……??

顔を見合わせる。

「いやいやいやいや!それは無いわぁ〜。裏の取り引きだよ?こんな分かりやすく書いてるはず無いって!一応やってみる?まぁ無理だろうけどぉ!」

砂羽はパソコンに手をかけて入力する。

「ですよね〜♪パスワードってもっとこう複雑で長いですよねボス!恋人の誕生日とか愛犬の名前とか……」


ピロリン♪


「「入れたぁぁぁ!!」」


ネバーワールドというオンラインゲーム。
遼の秘密はこの中にあるような気がする。

そんな砂羽の直感は見事に当たることとなる。





【Back】【Next】
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!