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遠藤探偵事務所の事件譚
Day1-3

「ボスうまく潜り込めましたね。いやしかし広っっ」


玄関ホールのソファーに座り、遠藤と砂羽は大口を開けて周りを見渡す。

大理石でできたフロアに真っ赤な絨毯。
天井にはスワロフスキーのシャンデリア。

今座っているソファーも立ち上がれなくなりそうなほど柔らかい。
まるでおっぱ…ごほん。


とにかく火サスなら第一殺人現場にもってこいな感じの邸内だ。 

メイドだというるりは荷物を置きに行くと従業員室へ行ってしまった。




「なんか落ちつかねぇな」

「そうですね。事務所とのギャップがありすぎて、ちびりそうです…」


遠藤はタバコをふかし、砂羽はいたたまれないのかソファーの角を指で摘んでグリグリしている。


「ねぇボス。るりさんの相談ってなんでしょうか?」

「そんなこと知るかよ…この屋敷で何があったかさえわかんないんだよ?」

「そうですよねぇ…しかしるりさん遅いですね。私ちょっと様子見てきます」


砂羽はギャロップで立ち去った。



出されたコーヒーカップに口をつけ少し冷めたコーヒーを飲む。

(って、コレほうじ茶じゃねか!)

非常に紛らわしい。
砂糖やミルクを入れなくて本当によかったと思う。



『あららっらあっららっらら!そこに居るのは、立ってるだけで猥褻物陳列罪の遠藤さんじゃありませんか』

「男なら立ってりゃ普通そう言われんだろ」

『!!そ…そうゆう意味じゃありません!あなたの存在がです存在!』


背後で仁王立ちしているのは、警視庁捜査一課みーきゃん警部。

彼女は捜査一課で仕事をしているが、先日国家一種試験を受け一発パス。
いわゆるエリートキャリア組だ。

とある事件をきっかけに顔見知りになり、今では天敵。
予感はしていたけどやっぱりここにも居た。


『また事件の匂いを嗅ぎ付けてのこのこやって来たのかしら?』

スラっと伸びる長い足を組みながら向かいのソファーに座る。


「てことはなんかあったってことだよな?」


うぐ…と顔を顰めたみーきゃんは腕を組み直した。


『てゆうか何で一般人のあなたが此処にいるの?どうやって入ったわけ?』

「ここのメイドのるりさんから依頼を請けたんだよ」

『何の依頼?』

「守秘義務」

『どうせ嘘なんでしょ?』

「守秘義務」

『腹立つ〜』


みーきゃんは両手で頭をかきむしる。


『ま、いいわ。今回はちょっと厄介な事件なの。手伝わせてあげてもいいわよ?』


どうして上から目線なんだ。
何故かこいつは俺にだけ手厳しい。

たまに砂羽と3人で飲みに行ったりもするが、素直なところを見たことが無い。




「あああ!みーきゃんさん」

るりをつれて砂羽が戻ってきた。


『砂羽ちゃぁぁぁぁん!』

砂羽に飛びついた。
みーきゃんは砂羽が大好きだ。

いつも胸に抱きしめてほっぺたをプニプに触っている。
どうやらみーきゃんお気に入りのキャラクター「ラリックマ」とやらに砂羽が似ているらしい。

なので砂羽には甘い。


「ちょ…やめてくらふぁいよ」

ほっぺの手を払いのけようと必死だ。
砂羽は過剰なコミニケーションが苦手なようで、温泉で起きた事件の時も一緒に風呂に入ろうとせがむみーきゃんと北海道でカーチェイスを繰り広げた。

気づいた時には事務所前まで戻っていたらしく、哀れ俺は置き去りをくらった。


『砂羽ちゃん仕事なんだって?事件のことで聞きたいことがあったら何でもいってね☆じゃ私仕事に戻るから!…遠藤!砂羽ちゃんの邪魔したり、その辺の物ベタベタさわんじゃねーぞ?!』


(へいへい)


振り向きざまのきめポーズで言い放ったみーきゃんは屋敷を出て行った。


『賑やかな刑事さんですね』

困り顔でるりは言う。


「なんか邪魔がはいっちゃたね…じゃ依頼内容聞こうか。」


『ここじゃなんなので場所を変えてもよろしいですか?事情は後ほどお話します』







立ち上がった遠藤は砂羽と並び、るりの後ろを付いてゆく。

立派な階段の上には値段さえわからない意味不明な絵画が何点も飾られていた。

2階の廊下は思いのほかシンプルで、気心をおけない友人や知人しか入れないスペースといったところか。
部屋数もあまり無く、ただひたすら真っ直ぐな廊下に同じ形の扉が等間隔で並んでいた。


(これだけ似た扉だと迷子になっちゃうなぁ…)


廊下を無言で歩き、程なくしてひとつの扉の前で足を止めた。



『どうぞお入りください』


るりが一番奥にある扉を開いて言った。


入った部屋は書斎だった。
とても立派な広い書斎。

接待用と思われる応接セットと、遠藤事務所の2倍ほどあろうかとゆうデスク。

本棚には沢山の書物がきっちり並べられていた。

社長の部屋としては王道な造りだ。






ただひとつ違ったことは



粘土細工の様に血の気を失った

朱に染まる男性が倒れていることだった。




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あきゅろす。
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