遠藤探偵事務所の事件譚
Day3-13
「うわ!また噛まれた!ここ蚊が多いですよぉ〜デング熱とか大丈夫かなぁ」
腕をポリポリと書きながら砂羽が付いてくる。
「そんなの呪文でなんとかしろ。虫刺され対策の呪文『ムヒ』とか覚えてねぇの?」
「そんなの聞いたことないですよっ」
フク太郎が時々振り替えりながら前を飛んでいる。
先ほどの山道とは違い、道も舗装されていない林の中。
草木をかき分けながらただフク太郎について行った。
「ねぇフクちゃん!何があるの?お宝でも見つけたの?」
砂羽の呼び掛けに一旦振り替えるがまた前に進んで飛んでいる。
「しかし寒ぃなここ。真冬じゃん。さっきまで暖かかったのに。なんか俄然、冒険活劇っぽくなってきたよなぁ」
遠藤は両腕を暖めるように擦った。
気温が異常に低い。
山の中だからだろうか。
「そうですね。急に冷え込んできましたよね。てか、敵とか出ちゃう感じですかね?」
「ま、出てきてもスライム辺りだろ?」
「ですよねぇ。私達まだlevel1ですし、さらに丸腰ですから強いの出てこられても困ります」
「でも武器も無しに夜の森歩くのって一番危険だよな。次の町で装備揃えようぜ」
「そうですね。私、踊り子の服欲しいで……す」
そう言うと砂羽は突然歩みを止めた。
「どうした?」
「いや……あれ見てください」
砂羽の指差す方向に首を振った。
暗くて見えづらいが10メートルほど先に何かが見える。
木々の隙間こら目を凝らすがよく見えない。
フク太郎はその周りを旋回していた。
「何あれ……」
月明かりでぼんやりと見える、少し首の長い生き物。
下半身はまだ見えないが、あの高さは恐らく飛んでいる。
「まさか……ケウタウロス?!」
砂羽は目を輝かせてとっさに駆け出す。
「ちょちょちょちょちょ!待てって!よく見ろ。あれ……飛んでね?」
2人はジッと目を凝らして謎の生き物を見た。
「ほんとだ……ケンタウロスって空飛びましたっけ?」
「いや。俺の記憶が間違いでなければ飛ばん。そして首もあんな長くない」
「じゃ……なんですかアレ」
そんなこと聞かれてもわからない。
ただ事では無い雰囲気だけはアホの遠藤にだってすぐにわかった。
「……お前、ここに居ろ」
謎の生き物に向かおうとした砂羽を遠藤は手で制し、その場にしゃがませた。
そして、ゆっくり音を立てないよう、一人先へ進んだ。
ザザザ……
歩を進める度に、枯れ葉を踏む音が大きく辺りに響く。
「やっぱ怖ぇぇぇぇ」
2.3歩進んだだけで遠藤はすぐに戻ってきた。
今や砂羽の背後で震えている。
「やっぱ一緒に見に行こう!ね!ね!お鍋も大人数でやった方が楽しいって言うじゃん?大人数で鍋なんかしたことないからわからんけど!友達居ないから!って、やかましわ!」
「へぇぇぇぇ……一瞬でも『お?』って思った私がバカでした」
砂羽はスッと立ち上がり真っ直ぐに歩いていく。
後ろから遠藤も付いてくる。
一歩 二歩 三歩……
「ボス。アレなんかおかしいですよ?」
「何がだよ」
一歩 二歩 三歩……
「だって……体が馬じゃないですもん。首もなんか長いし……」
「じゃぁケンタウルスじゃないだけじゃん。よかったじゃん怪物じゃなくて」
一歩 二歩 三歩……
「でも……ほら!やっぱり浮いてますよ!変ですって」
「あんな直立不動で浮けるやつそういないよ?たぶん舞空術だ。舞空術。悟空か?べジータか?」
一歩 二歩 三歩……
「ねぇボス。なんかやっぱり人間っぽくないですか?」
「んなわけない。ラスボスだラスボス!」
一歩
二歩
三歩……
「「え……」」
歩みを止めた目の前には
見たまま
人が浮いていた。
「「……Miraさん??」」
首から吊られた人物の周りをフク太郎が旋回している。
木の枝から伸びているロープ。
月明かりを浴びて見えたその人物は、口を大きく開け舌が飛び出し
重力に逆らわず
力なく項垂れていた。
「「う……うわぁぁぉぉぉぁぁぁ!!」」
転びそうになりながら全力疾走。
「「作者帰ってきたぁぁあ!」」
ただいま。
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