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遠藤探偵事務所の事件譚
Day3-9

ハクア連邦インタージ空港。

ニューロッカから飛行機で1時間。
島全体がリゾート地ハクア。
美しい海と美しい森そして野性動物と、自然溢れる素晴らしい町だ。

この土地には忘れてはならない歴史がある。

その昔ハクアでは核戦争が起こり土地と人は荒れ果てた。
自然は無くなり、水や食べ物も無く、心を無くしてしまった人々は争うことをやめなかった。

しかし諦めなかった人物が居た。
スポポビッチ・ケンシロウ二世。
右大臣バット、左大臣リンと共にこの地に命を甦らせたのだ。

水もなく食べ物もない。荒野となった地で、ある老人から受け継いだ一掴みの籾殻。
老人がやっとの思いで手に入れたこの籾殻を悪党の手から守ったのがケンシロウ二世だ。

老人は力尽きたが、ケンシロウ二世はその籾殻を、とても雑にばら蒔いたという。
老人が命をかけて守った籾殻だというのに、それはそれは雑に石の上に蒔いたという。

ケンシロウ二世は自由人だった。
「も・み・が・らヒャッハー!」と叫びながら籾殻を振り回し…蒔いた。

これが歴史的に有名な『ケンシロウ二世の乱』

だが、籾殻はとても強かった。
ここから生まれた作物は日々成長し、それを見た人々は心まで癒され改心していったそうだ。
ケンシロウ二世が雑にばら蒔いた籾殻。
結果的には今のような素晴らしい土地へと変化した。

今ではケンシロウ二世が雑に籾殻を撒く姿が石像となり、ハクアの象徴として祭られている。

そして石像の足元にはケンシロウ二世の乱心を必死に止めるバットとリン、そして何十人もの男達の石像が並べられていた。

初めはバットとリンだけだったそうだが少しずつ数も増えている。
劣化し壊れたら新しく作り、また古い石像が壊れて土へと還る。

輪廻転生。

この地を守ってきた人々。


これが後のEXILEである。





「ううぅぅぅ…ボス。もう私無理です。飛行機乗れません。帰りは舟使います」

到着ロビーのソファーにうなだれている砂羽。
初めての飛行機が相当怖かったようだ。

到着したのは午後10時半を回っていた。

「アホか。ここは飛行機でしか来れないっつっただろ?しかしすごい人だな…」

インタージ空港にはこんな時間にも関わらず沢山の人がいる。
噂ではスポポビッチ・ケンシロウ二世が残した財宝が出ると、世界中からトレジャーハンター達が集まってくるらしい。

今までに見つかっているのは、白のもらえる箱・黒のもらえる箱・緑のもらえる箱の3種類。
中身は開けて見ないとわからないそうだが、かなりの数が見つかっている。

壁には財宝の買い取り価格が書かれたチラシがそこらじゅうに貼られていた。

「ジュリアスシリーズ(アーマー・ランス・マント)高価買い取りします?…なんじゃこりゃ?」

砂羽はチラシを見ながら呟いた。

「なんかココってお宝が出るみたいだよ?」

「マジですか?!早速探しにいきましょうよボス!」

「あほか!先にMiraさん探しだ!まぁ…宝は…その〜…あの〜…後だ!後で!」

俄然ヤル気出できたぁぁ!と砂羽は背後に炎を纏っている。
遠藤とて興味が無い訳ではない。
だが今はとりあえず民宿ほぐわ〜つに向かわなくてはならない。

「えっと…この空港からだとタクシーで15分くらいの所だな」

スマホで民宿の場所を確認した遠藤は、いくぞ!と砂羽に声を掛けた。

「おっしゃぁ!待ってろ財宝!」

ヤル気マンマンの砂羽を連れてタクシー乗り場へ向かい飛び乗った。










『おっちゃんが若かった頃はなぁ、まだここも地元の人間しか宝の存在は知らんかってな。そりゃもう探し放題だったんだよぉ?』

「マジですか?!いいなぁ…私もお宝欲しいなぁ」

タクシーの運転手と砂羽は財宝の話題で盛り上がっていた。

空港を出発し、車は大通りから反れ舗装もされていない山道を走っている。
車1台走るのがやっとの細い道。
見渡せば周りは真っ暗な森。
でこぼこの道で車もかなり揺れる。

本当にこんな所に民宿なんてあるのだろうか。


『おねぇちゃん達も宝探しかい?』

「そうです」

「おいっ!」

砂羽は完全に目的を見失っていた。

『あれ?違うのかい?こんなとこ向かう奴は最近じゃ見ないからてっきり宝探しかと思ったよ』

「…といいますと?」

『今向かってるロクブテって所は白檀籠手ってのが取れるんだ。それはなかなか見つからないんだけど高価でな、まぁ一か八かの大勝負する奴が行くとこだ』

へぇ、と良いながら砂羽はメモを取る。
仕事以上に熱心だ。

『箱の狙いやすい地域でコツコツと刺刀とか第六狙ったほうが儲かるけど、あそこはPKエリアっつって怪我させようが殺されようがなんでもアリなとこだ。女の子にはお薦めできないね。最近じゃぁ値崩れも酷いしなぁ…おっちゃんが若い頃は第六なんて億の値段がついてたもんだ。いまや吐いて捨てるほど出回ってるから二束三文さね』

いい加減話が長くて飽きてきた。
砂羽はそうでもなさそうだが。


「あの…おっちゃん。さっきこの辺はあまり人が来ないって言ってたけどなんで?やっぱ宝出ないから?」

遠藤は運転席の横から顔を出し聞いてみた。

『まぁそれもあるけど、森がねぇ…』

「森?」

『あそこは【禁じられた森】って言われてて、体だけが馬のアレ…ケンタウロスが出るって噂なんだよ』

「マジですか!ボス!捕まえましょうケンタウロス!」

「いらねぇよ!第一どこで世話すんだよ。餌は何やるんだよ。色々とわかんねーわ!」

『はははは!お兄ちゃん達おもしろいねぇ。…あ、左に見える小道がその禁じられた森の入り口だよ』

タクシーは少しスピードを落とす。
鬱蒼としげる木々の間にボロボロの立看板があった。


『こんなとこ入る奴は度胸あると思うよ。こないだ一人ここに入ってったの見たけど、あの人大丈夫なのか心配だよ』

一人?

「運転手さん。その人ってどんな人だったか覚えてる?」

Miraだろうか。

『いやぁ、後ろ姿だったしなぁ…ただ荷物が無かった。普通宝探しならそれなりの物持ってるんだけど、その人はほとんど手ぶらって感じだったな』

「この人じゃないですか?」

運転手にMiraの写真を見せた。

『いやぁ〜わからないなぁ。その人、帽子被ってたし後ろ姿じゃぁねぇ…』

「そうですか…」

『すまんね。…さぁ着いたぞ』

目の前にはボロボロの民宿が建っていた。
手作りのボロボロの看板には【民宿ほぐわ〜つ】と書かれている。
その隣のボロボロの鳥小屋にはボロボロのフクロウがゴロゴロと居た。

「ボス。思ってたのとなんか違う…」

「俺は想像通りだけどな。…おっちゃん!ありがと!」

お金を払いタクシーを降りた。

『兄ちゃん達気を付けてな!ココ……出るぜ?』

じゃあなぁとタクシー走り去った。

出る??


「「何がぁぁぁ?!」」

二人は呆然と暗闇に立っていた。







『何をしてらっしゃるのですか……』

「「ぶわぁぁぉぉぉぁぁぁ!!」」

背後から突然声が聞こえ遠藤と砂羽は飛び上がった。

『ご予約の遠藤様でしょうか?』

そこには少年が立っていた。
真っ黒のマントに真ん丸眼鏡。
肩には小さなフクロウを乗せている。

「あ…はい。遠藤です」

『驚かせてしまいましたようで…わたくし、このホテルの客室係をしております大天使ラファエルの使い、名を朔夜と申します』


なんかよくわからないが

すごいのが出た。





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