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遠藤探偵事務所の事件譚
Day2-10

宴の名残を全て片付け終わったのが午前2時。

遠藤は欠伸をしながらタバコを吸っていた。

「じゃボス。私はそろそろ帰りますね」

砂羽は額に【愛】と大きな装飾が付いたヘルメットを被った。

「お前は直江兼続かいっっ!てか飲酒運転だろどう考えても」

「大丈夫ですよ大丈夫。愛があれば…大丈夫なんです…」

意味がわからんと背を向ける。

「あ、そうだボス。明日少し出勤遅れますんで」

「なんで?」

「みーきゃんさんと朝6時に待ち合わせしてるんです。今日は張り込みらしくて終わるのがそれぐらいだって。Miraさんと目しぱさんの情報増えてないか確認してきます。それと今日のクラブ怒無での事情説明と。……そのあと、遼さんの出頭に付き添おうと思います」

「そうか。じゃ昼までには来いよ」

「わかりました。てかもうこんな時間…昨日もほとんど寝て無いんですよねぇ。じゃお疲れ様でした!」

2時に帰って5時起きよ!
と、セーラームーンの決め台詞っぽく砂羽は帰って行った。





なんだかなぁ。

スッキリしない。

眠れそうにない遠藤は事件をまとめはじめた。


太虎が殺されたのは17日午後9時頃。

屋敷の執事ストが出掛けた夕方頃から帰る午後10時過ぎまでは屋敷には鍵が掛かっていなかった。

翌朝、死体を発見したのは屋敷のメイド るり、そしてスト。
書斎の内側には鍵が刺してあり、外側から開けるのは不可能だった。
窓には全て鉄の格子があり、そこからの出入りは不可能。

つまり密室。

死体はナイフで頸動脈をかなり深く切られての出欠多量死。
迷いなく切られている所を見ると、恐らく怨恨?
取られているものも無いようだし。

アリバイがあるのは
屋敷のメイド るり
屋敷の執事 スト
そして遼。

アリバイが無いのは、蒼。

未確認がMiraと目しぱ。

最近、屋敷内から夜中に悲鳴らしき声が聞こえるとストが言っていた。
これも気になる。


明日屋敷に行ってみるか。



ゴミ置き場で惨殺死体が見つかったリナ助さん。

死亡推定時刻が19日の午前2時頃。
体が5ヵ所バラバラに切断されていて、左手だけが見つからない。

握っていた指輪が蒼の物だとすると、関連性から考えて恐らく太虎殺しの犯人と同一人物だろう。

何か見たのか。

そして犯人は指輪を敢えて残したのか?
指輪の持ち主に罪を被せる為に?

それより犯人には指輪以上に不都合な物があった。
それが左手と一緒に消えた?

なんにせよ複数犯なのか単独犯なのか、男なのか女なのかも検討がつかない。



「う〜ん……」

紙に今までのまとめを書きながら今からするべきことを考えていた。
左手に持ったタバコの灰がポトリと落ちる。
うわぁとタバコに目をやるとフィルター近くまで燃え尽きていた。

「まだ1口しか吸ってないのにぃ…もったいねぇ」

イラつきながら灰皿にタバコを押し付け、2本目を口にくわえる。

「ライターライター…」

机の上の紙やらなんやらを退けながら探すが無い。




「あった…」

遠藤は視線の先にライターを見つけた。
先ほど宴会をしていたソファーの上だ。
もちろん手を伸ばした所で届くはずがない。

「もう立つのもめんどくせぇ!……ライターよ!飛んでこーい!飛んでこーい!」

両手をかざして念じる。
飛んでくる訳がない。

「ですよねー」

諦めて両手をダランと下ろす。

カサッ

「??」

パーカーのポケットに手を入れるとニンマリと笑った。

「マッチ持ってたなそういえば♪」

鼻唄混じりでマッチ箱をスライドさせた。

「……あれ?」

マッチ箱を開けると中身いっぱいにマッチが入っていた。

おかしい。
このマッチは確か何本も使っていて残り数本だったはず……

「何これ。ポケット叩くと増えるっていうビスケット的なマッチなのこれ」

いやいやそんな訳ない。
時代はまだそこまで追い付いていないはずだ。
こんなこと出来るとしたらアラレちゃんを作った則巻博士かカプセルコーポレーションくらいだ。


両手でポケットというポケットを探る。
すると右側の尻ポケットに何か入っていた。

「…おんなじマッチ」

右手と左手をデスクに乗せる。
手の中には同じ形で同じ黒色のマッチ箱が両手に1つづつ。

後から出てきたマッチ箱を片手で器用にスライドさせる。

(残り少ないな)

箱を閉じ、同時にマッチを裏返す。


【未亡人スナック-Haru-】


「あ……」

2つのマッチ箱には同じ名前が書かれていた。


そうだ。
アザイアで遼のマンションまで案内してくれたあの縫いぐるみ抱いた美女だ。

確か『お店に来てねっ』て言いながらマッチを渡された。
遠藤は浮かれてクルクル回っていたのでそのまま見ずにポケットに入れたようだ。


ひとつは太虎の書斎にあったマッチだ。

てことは

二人は顔見知りなのか?

少し考えた遠藤はマッチ箱を机に置きシャーペンを握りしめ書き始める。


【今日やること】

@砂羽からの報告を仕方なく聞く
A蒼さんの聴取
Bストさんにマッチの件と叫び声の件を聞く(遼の報告もついでに)
Cハルさんのお店へ行く!(ハート)


「よし!」


ハルの部分にはご丁寧に赤ペンで【重要!!】と書き大きく丸をした。

「そうと決まれば綺麗な体にしとかなくちゃ〜♪」


ランランルー♪と歌いながら風呂場へと向かった。




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あきゅろす。
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