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短編小説
第2ボタン(一刀×桃香)『真・恋姫†無双』



「頃合い、か」



「そんな……」




────この地に降り立ち、長い年月がたった



出会いは別れを生み、また別れは新たなる出会いを生む。



皮肉な言葉だ



別れも出会いも、いつやって来るのか分からないというのに……




「桃香、おまえはもう立派な君主だ。最後ぐらいは」



「やだ……」



「桃香……」



「いっちゃやだぁ……」





まるで子供のように駄々をこね、涙を流す桃香



何か声をかけてやりたいが、かける言葉が見つからない……





────桃香が涙する理由



それは俺との別れだった。



俺は天の御遣いとしての使命を果たした。



元々イレギュラーな存在であった手前



使命を果たし終えれば、どうなるかぐらい分かっていた。



しかし分かっていても別れというものはつらいことに変わりはない。









「私、ご主人様がいなくなったら……私、私……」



「俺だってつらいよ!!」



「!」









本心が出てしまった。


大声に体を震わせる桃香






「俺だって……俺だってみんなと別れたくなんかない! でも……もう、どうしようもないじゃないか……」



「………ごめんなさい」



「え?」



返ってきたのは意外な返答だった


もっと何か駄々をこねそう、そんな気さえしたのに、今では狐に包まれたかのような気がする。


それでもいつもは明るい桃香の表情は変わらなかった。



「私、本当に今までご主人様にベッタリで……仕事の時も、ご飯の時も、それから……それ、からっ……うぐっ……ヒクッ」



最後は涙で言葉にならない。


ポロポロと涙を涙を流し、俯く。



そんな桃香を







「え?」



「………」








俺は思い切り抱きしめる。


桃香の甘い香りが鼻奥を刺激し、ずっとこの温もりを感じていたい、そう思ってしまう。


桃香は何も言わず、俺の腰に手を回した。



長い沈黙が訪れる─────









────その沈黙を破ったのは桃香だった。






「私、忘れないから」



「ん?」



「ご主人様がどこに行っても、私絶対に忘れないから……」



「……ありがとう、桃香」







その言葉だけで十分だった



もう俺の心配はない。桃香には愛紗、鈴々、星だってついている。これからも十分にやっていけるはずだ。



俺は着ている制服の第2ボタンを外すとそれを桃香に手渡す。



ボタンを見てキョトンとしながらも、上目遣いで俺に尋ねてくる。






「これって……?」



「俺の世界では女性は好きな男性の制服の第2ボタンを欲しがるっていう風習があってさ……その風習じゃないけど、"北郷一刀"という人間がここにいて、桃香という人物を愛していたという証拠を残したくて……」



「ご主人様……」



「じゃあ……そろそろお別れかな」



「ご主人様!」







薄くなり始める俺の体



もう目の前もぼやけて、桃香の姿もイマイチ確認出来なくなってしまう。



それでも一言



一言だけ桃香に─────
























「北郷一刀は、世界の誰よりも桃香を愛しています……」























─────こうして





俺の長いようで短い異世界での体験は、幕をおろした

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あきゅろす。
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