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 その後、羽岡は直ぐさま病院に運ばれた。
 医師によると風邪が悪化したとのことで、命に別状はないそうだ。……理由を説明したら俺がこっ酷く怒られたが。勿論自殺云々の話は伏せてある。

「君、この子とは昔からの知り合い?」

 突如聞かれた。

「いえ、最近知り合ったばかりですけど…」

 俺が言うと、医師は「そうか」と言ったきり黙ってしまった。しばらく何か考え込んでいるような風だったが、結局「それならいいんだ」とか何とか言って行ってしまった。
 何だったのだろう。あの、羽岡に向けられた痛ましい目は――。


「う………」

 小さな唸り声で俺は我に帰った。見れば、羽岡が眉根を寄せ苦しげに呻いている。大分しんどそうだ。

 汗でも拭いてやろうとベッド脇の洗面器からタオルを摘み水気を絞る。
 顔の汗を慎重に拭ってやると、タオルの冷たさが気持ち良いのか羽岡はふっと表情を和らげた。対称的に、タオルはどんどん温くなっていく。
 その早さが、羽岡の熱の高さを物語っていた。



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