J 「…いいわ。あんた、誰かがいると奏汰に手が出せないんでしょう?やっぱり周りの目は気になるのね。 だったら、私がずっと奏汰の側にいる。せっかく面白くなってきたんだもの、あんたなんかに奏汰は渡さない」 タンカを切った羽岡の瞳には強い意志が宿っていた。 岩崎はしばらく黙って羽岡を見つめていたが、やがてにやりと口端を上げた。 「面白いじゃねえか。だったら、これから一ヶ月。一ヶ月間、一度も欠かさずに休み時間一条に会いに来たら、一条に手ぇ出すのやめてやるよ」 「受けて立とうじゃない」 「そんな……」 あの日、そんなやりとりがかわされていたなんて知らなかった。 何かが変だとは思った。でも羽岡は、そんな賭けのことなんておくびにも出さなかったじゃないか。 岩崎の手が俺の髪を掴む。地肌が引き攣れて痛い。 「残念だったな。あと3日だったのに」 風邪だろうと何だろうと、賭けは賭けだからな、と言って岩崎は再び暴行を開始した。 俺は今更知らされた真実と現実がぐちゃぐちゃになって、何も考えられなかった。 第四話 完 [*前へ] [戻る] |