B 突然かけられた声にどきりと心臓が跳ねた。 半ば条件反射のように声へ振り返る。 そこには、一人の女子生徒がいた。 毛先が黒く、根本へ行く程色素が薄くなっている不思議な色の長い髪。 それを風に遊ばせて、その女子生徒は感情に乏しい目をこちらへ向けていた。 ――知ってる。 彼女の名前は、羽岡朔。 確か2年生だったはずだ。 そして、常に無口・無表情なことから、よくイジメの標的にされていると噂に聞いた。 ――自分と、同じ、 そんな人物が何故目の前にいるのかは分からない。 それに、今はそんなことどうでもいい。 今はただ、自殺を止められたということだけが、俺の思考を支配していた。 「……死ぬの?」 「!!」 愕然として動かない俺に、再度羽岡は問うた。 声音は、あくまでも静かだ。 それが逆に落ち着かない。 何か話さなければ、とは思うのだが、困惑と狼狽で喉がカラカラで、上手く言葉がつむげない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |