I 「アイツ等のこと、見返してやりたくない?」 「!!」 どくん、と心臓が跳ねた。 見返せる?アイツ等を?屋上から飛び降りるより的確に? 「本当に……?」 震える声音で尋ねると、羽岡は無言で笑みを深めた。 ――見返して、やりたい。 どくどくと心臓が早鐘を打っている。 恐怖心なんてどこかへ吹き飛んだ。 熱に浮かされたような奇妙な間隔が、全身を支配していく。 「…返事はどう?一条奏汰クン」 羽岡が再度、問いかけた。 答えは、決まっている。 体が熱い。意識ははっきりとしているのに、どこかぼやけている。 この熱さに身を任せて、唇に、音をのせ。 「よろしく…お願い、します……」 俺の返事を聞くと羽岡は、満足そうに破顔した―― ―――この時から、俺一条奏汰と羽岡の、奇妙な同盟活動が始まったのだった。 第一話 完 [*前へ] [戻る] |