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Gintama
ときどきの幸運(万事屋+桂+高杉)
ときどきの幸運



「あっ」
と、ついさきほど桂が手土産に持ってきたおやつを
ほおばっていた神楽が小さく声を上げた。

「どうした、リーダー?」
「このコアラ、眉毛があるヨ!」
「ん?」

桂が神楽の持っていた、コアラの絵柄を焼いたお菓子を取り上げ
しげしげと眺めた。なるほど、ふつうのコアラには眉毛がないのに、
このコアラには眉毛がある。

「おお!たしかにあるぞリーダー!」
「眉毛コアラアル!これラッキーアイアイね!」
「ラッキーアイテムね、神楽ちゃん。」

新八が入れたてのお茶を、桂にどうぞと差し出す。
神楽は嬉しそうに銀時のところに、そのおかしを持っていった。

「銀ちゃん!見てヨ!眉毛コアラ!」
「おーよかったな。」

当の銀時は、テンションをまったく上げずに、しかも
ジャンプから目を上げずに言ったのだが、浮かれてる神楽には関係ないようだ。

「わー眉毛コアラかあ・・・懐かしいな。ぼくもよく探してたよ。」
「新八も眉毛コアラ見つけたアルか?」
「ううん。ぼくは四葉の包み紙とか。」
「包み紙?」
「うん。ふだん飴を包んでる包み紙の柄は三つ葉なんだけど、
ときどき四葉のクローバーになってるんだ。」
「へえ〜」

ともかく、得した気分アル!と神楽は眉毛コアラを大事そうにティッシュに包んだ。

「とって置かなくてもいいじゃねーか。」
「あとでみんなに自慢するアル!」
「そういう銀時もほら・・・あのチョコレートを見つけたときは」

桂がクスリと笑っていった。

「チョコ?・・・・ああ、あぽろのことか。」
「え?あぽろチョコも何かあるんですか?」
「上のイチゴチョコとしたの通常チョコが逆になっているものがあってな。
塾の皆でよく探したのだが、銀時が始めに見つけて浮かれておったことがあったな。」
「昔の事だろ?ほとんど忘れてたわ。」
「お前があまりに自慢するものだから、高杉の奴が、城下町中のあぽろを買い占めて
・・・・・」
「あーそうだったそうだった。あのしてやった顔忘れねえよ。」
「しかし、ひとつも見つからなかったときの奴の落ち込みようは・・・流石の俺でも
可哀想だと思ったぞ。」
「嘘ッ!一つも?!」

銀時は叫ぶと、思いっきり仰け反った。
神楽、新八までもが哀れみの表情を作った。

「それは知らなかったな・・・うん。」
「可哀想アル。私が眉毛のコアラあげるから元気出してよ晋ちゃん!」
「余計なお世話だ。」
「そーだそーだ。ウチには凶悪テロリストにくれてやるお菓子なんか・・・・って
オイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!なんでテメーが普通の顔して座ってんだ!!!
なんかもっと悪役っぽい登場の仕方しろよ!!!!普通に会話しちまったじゃねーか!!!」
「む、晋助。来ておったのか。」

いつのまにか万事屋のリビングには高杉が当たり前の顔をして座っていた。
それもちゃっかりソファに腰掛けている。

「高杉さんならさっきからいらしてましたよ。」
「人の家に入る時はこんにちはぐらい言えヨ!」

新八がこれまた当たり前のように高杉に茶を出している。
神楽も着物のそでを引っ張っては遊んでいた。

「え・・・・・?なんでお前らそんな普通なの?なんでおれだけパニック起こしてんの?
そんなキャラだったっけ。高杉君。なんか、次会ったらぶった切る的なさ、え?」
「銀時、騒がしいぞ。あっ新八君すまないが、晋助の茶に氷を入れてもらえないか。
こやつは猫舌でな。あまりに熱いと舌が、」
「すみません。いま持ってきますね。」

一瞬、ゲシュタルト崩壊に襲われた銀時だったが気を取り直して口を開く。

「どうなってるわけ?」
「そういう方向で行くって決まったネ。いままでの因縁はなかった方向で。」
「どんな方向?!つーかいつ決まったの!?」
「まあまあ、銀さん。高杉さんの持ってきてくれたお菓子でも食べて落ち着いて下さい。」
「え?・・・・あ、ハイ。」

何に丸め込まれたのか。どうしてこうなったのか。
全てが謎のままだったが、銀時はおとなしくレジ袋いっぱいのお菓子に手を伸ばした。
と、同時に手を止める。

「・・・・・・なんであぽろばっかり?」
「べつになんだっていいだろーが。」

高杉はふぅっと煙を吐き出した。

「晋助、貴様はまたそればかり買って・・・・バランスよくカー●とかポテトチッ●スとか買って来いといつも言ってるだろう!」
「桂さん、それ揚げ菓子ばっかりです。」
「おいっ俺は糖分は好きだが、こんなに大量のあぽろどうしろってんだ!!!」

見ればいくつもの袋からあぽろチョコが覗いている。

「ククッいい様だな銀時ィ。」
「なにっ!?」
「お前はあぽろの逆チョコレートを見つけるまで永遠にこの世界から抜け出せねえ。」
「?!」

気が付けば銀時はあぽろチョコに埋もれていた。

「なっなにしやがる!」
「ククッ・・・小さい頃俺を散々からかった罰だぜェ。」

手足をバタバタさせても、あぽろチョコが押し寄せてきて、身動きが取れない。
次第に呼吸まで苦しくなってきた。

「やめろおおおおおおおお!!!!!」


・・・・・・・



「銀時!銀時!」
「銀ちゃん!しっかするアル!」
「起きてください、銀さん!」

自分を呼ぶ声で銀時は薄目を開けた。
そこには桂と神楽と新八の3人が、自分を心配そうにこちらを眺めていた。
ゆっくりと体を起こしてあたりを見渡すと、そこにはあぽろチョコも
高杉の姿もなかった。

「夢・・・・かよ。」

はあ、と深いため息をついた。

「銀ちゃん、苦しそうだったアル。ヅラが心配してたネ。」
「うむ。なにやら苦しそうに言っておったからな・・・・」
「あーごめん。なんでもないんだわ。ちょっと変な夢みただけだから。」
「ならいいのだが。」

神楽は銀時が大丈夫だった事が分かると、またお菓子にかじり付いた。

「あっ」
「どうした?リーダー?」

またも神楽の食べる手が止まった。
桂が神楽の手元を覗き込んだ。


「このチョコ・・・・逆アル!」

そういって高く上げた手にはしっかりと、逆あぽろが握られてた。

次の瞬間、バターンッと大きな音がして、銀時が倒れた。

「銀時ィイイイイイ!!!!」
「銀ちゃん?!」
「銀さん?!」

3人は慌てて、魂の抜けたように顔面が蒼白になっている銀時に駆け寄った。



****

神楽は日傘をくるくると回しながら、先日みつけた逆あぽろと眉毛コアラを
みんなに見せる為に、公園に向かっていた。

すると、いそいでいた為か、前方からきた人にぶつかって
その人が持っていたレジ袋が落ちてしまった。

「あっごめんなさいアル!」

神楽はあわてて袋を拾おうとして、立ち止まった。
その袋にはあぽろチョコがいっぱいに詰め込まれていたからだった。

「あぽろチョコ、好きアルか?」
「・・・別に。」
「じゃあ、逆あぽろ探してるアルな!」
「・・・・・」
「私、昨日見つけたネ!いいでしょ。ちなみに眉毛コアラも見つけたアル!」
「・・・・ほう。」

神楽が差し出したティッシュのなかのものを見ると、男は自分が
持っていた袋をズイ、と神楽に差し出した。

「?」
「その逆あぽろ、俺にくれたら、このチョコレート全部やるぜェ。」
「ホントアルか!?」
「ああ。」


うーん、と神楽は腕組みをして考えたが、やがて

「いいアル!交換に応じてやるネ!」

と逆あぽろを差し出した。
男はそれを自分が持っていた紙に包むと、大事そうに持ち帰った。
神楽は両手いっぱいのあぽろを抱えて上機嫌で公園に向かった。
が、途中で思い出したかのように振り向くと、大声で叫んだ。

「しんちゃーん!次逆あぽろ見つけたらまたあげるアル!」

ひらり、と男が手を振ったような気がした。




実は眉毛コアラの眉毛は、かおに寄せたしわだとか。
お粗末様でした。

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