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Gintama
会いたい(連作・万事屋+桂)
会いたい(万事屋+桂)

史実の人たちとは宗教感覚が異なっています。
銀魂の創作と思ってお楽しみ下さい。


お盆になると新八は姉と一緒に墓参りにでかける。
この年も例に洩れず、2人は墓前で手を合わせた。

「新ちゃん、お家に茄子と胡瓜があるから銀さんのところに持っていって。」

妙が帰り道でにっこり笑っていった。

「あ、馬と牛をつくるんですか。」
「そう、銀さんきっとそんなことしないでしょ?」
「ははっ、たしかに・・・」
「でもね、きっと銀さんや神楽ちゃんにも帰ってきて欲しい人がいるとおもうの。
天国にいる人はお盆にしか帰ってきてくれないんだから。」

姉の言葉を聞いて、新八はそうですね。と頷いた。


****


新八が万事屋につくと、桂が当たり前のように、銀時と神楽に茶を入れていた。

「桂さん、いらしてたんですか。」
「うむ、近くに用があったものでな。団子を買ってきた。
新八君も食べるといい。」
「すみません、お客さんにお茶まで入れさせて・・・」

新八が恐縮して桂から急須を受け取る。
すると神楽が目ざとく新八の持っていたビニール袋を見つけた。

「新八ィ、それ何アルカ?」
「これ?茄子と胡瓜だよ。」

なんだ、お菓子かと思って損したネ。といってふてくされた神楽に、桂が微笑む。

「リーダー、これはきっと食べるために持ってきたのではないとおもうぞ。
なあ、新八君?」
「あっはい。馬と牛を作ろうと思って・・・」
「もうお盆だからな。どれどれ、久々に作ってみるか。・・・銀時、割り箸はあるか?」
「あー台所の引き出しに入ってる。」

やがて桂が割り箸を取ってくると、銀時も今まで読んでいたジャンプを置き、
ソファに移動してきた。

「懐かしいなオイ。もう何年もやってねーぞ。」
「クリスマスやばれんたいんとかいう行事だけではなく、
古式行事もリーダーに体験させてやると良い。」

桂は割り箸を手際よく胡瓜にさしていく。

「盆とは祖先の霊を苦しみの世界から救済する為の仏事だ。
仏の弟子目連が飢餓地獄に落ちた母の苦しみを除こうとした説話が由来なんだそうだ。」
「キガジゴク?」
「食べるものがない世界だ。たとえ目の前にどんなご馳走があっても
食べる前に全て炎に変わってしまう。」

恐ろしい世界アル。と神楽が言うと、他の3人は吹き出してしまった。
神楽ちゃんが言うと、現実味があるよ。と新八が心の中で思う。

桂がぽんと完成した馬を机に置いた。

「ほらリーダー、完成したぞ。馬だ。」
「ちっとも見えないアル。」
「亡くなったものの魂をこの世に運んでくれるのだ。こちらに来るときは
なるべく早く帰ってきてくれと馬を。盆が過ぎ、魂があの世に帰るときは
ゆっくり帰るようにと牛をつくるのだ。」
「ふうん、じゃあ、”おぼん”になったら死んじゃった人が帰ってくるアルか?」
「その通りだ。リーダーも会いたい人はいるか?」
「マミー・・・マミーに会いたいネ!帰ってきてくれたらきっとパピーも
喜ぶヨ!」
「そうだな。」

神楽の隣では銀時が黙々と作業をしている。
珍しい事もあるもんだと新八は感心する。

「茄子かせ、ヅラ。」
「ヅラじゃない桂だ。銀時、どういう風の吹きまわしだ?」

くつくつと桂が笑うと銀時は少し照れくさそうに頭をかいた。

「先生が昔こんなことしてたなって・・・さ。」
「そうだったのか。俺はお盆の頃塾に行く事はなかったから・・・」
「毎年、迎え火と送り火焚いてたんだよ。別に会いたい奴はいなかったけど。」
「せっかくだから迎え火も焚くと良い。今日はちょうど13日だ。」

たわいも無い会話をしながらいくらか作り終えたところで
うーんと銀時が背伸びをする。

「腹減ったな。」
「もうお昼ですね。桂さんも食べていかれます?」
「ありがとう新八君、しかしこれから用事があってな。今日はこれで失礼するとしよう。」
 
桂は脇においていた刀を手にとって立ち上がった。
玄関口で銀時が作った馬と牛を桂に差し出した。

「持ってけよ。ウチにはこんなにたくさんいらねーから。」
「ああ、有難う。」

桂は万事屋の玄関を閉めると、夏の空気を思いっきり吸い込んだ。


2部へ続く。

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あきゅろす。
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