◇
10*4
「あれ、陛下たちじゃんけんしてない?」
「え、なんで?」
「分かんないけど…掛け声が聞こえた気がして…」
「気のせいじゃない?」
カチャカチャと食器を洗いながら話すお二人
これだけの人数で食べるとやはり食器も多いわけで
「名前ちゃん、どうかした?」
「え…」
不意に話かけられ、動かしていた手が止まる
「なんか、さっきから元気ないけど…」
「そんなことないですよ…っ!」
私は笑ってみせるが、KAORIさんとYUUKIさんは二人で目を合わせ、首を傾げている
「あ!!やっぱり今朝のこと??もっと、怒ろうか?」
「ち、違うんです!!もうそのことは…」
そのことは、もういいんだけど
私が言い渋っていると、はっきりしなさいとKAORIさんに肩を叩かれた
「…いや、これが終わると、もう皆さんに会えないのかなー、と…」
そう、私は考えていた
この皿洗いが終わり、皆が解散してしまえば、私は普通のサンホラファンに戻って、皆さんとこうして会うことはなくなってしまうかもしれない
運がよければ、次のライブでメイクとしてまた呼んでもらえるかもしれないけど、それはずっと先の話
この数日間、皆と過ごした時間が楽しかっただけに、少し寂しくなってきてしまったのだ
そんな私を見て、二人は盛大に笑い始めた
「わ、笑わないでください!!」
なぜか恥ずかしくなり、顔が赤くなるのが自分でも分かる
「や、ごめんごめん…名前ちゃんそんなこと考えてたんだ」
「可愛いーなぁ」
「からかわないでください…!!」
YUUKIさんは水で濡れた手を拭き、私の頭に手を置いた
「名前ちゃん忘れてない?」
「え?」
「メイク、教えてくれるって約束したよね?」
「あ…」
そうだ、そんな話もあったっけ…
「だーかーら、そんなこと考えなくても、また遊ぼうよ」
「私も、ね!!」
横からKAORIも私の頭に手を伸ばす
二人分の手は少し重く、洗い物の後で少し冷たかったけど、凄く温かかった
「そうと決まれば!!アドレス教えてよ!!」
「はい!!」
「あと、敬語もさん付けも禁止だからね」
「う…」
YUUKIさんに言われ、一気に喋らなくなった私を、また二人は笑った
これからも、ずっと?
(ちょっ…私の携帯!!)
(いや、これは、その…)
((じまさんっ!?))
(…すいません)
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!