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silversoul*ls
04.片手の荷物
あくまでも余裕そうな名前の態度が男達の癪に障ったらしい。
その後暫くその路地には激昂した男達による、見境無く名前を殴る、蹴る・・・・の暴行を振るう音が絶えなかったという。まあ名前もタダでやられるのは性分ではないし、尚且つ其れなりの武芸の腕は持っているので、其れに見合うだけの制裁を加えてやったが。



――――そして今に至る、と言う訳だ。


結果から言うと、傍観していた人たちも余りの騒ぎに驚き警察に通報し、男共は連行され彼らに襲われそうになっていた少女も無事保護された様で。自分は痛みを感じないわけではないが、別段此の程度の怪我など慣れてはいるし、自分が殴られたのも無駄ではなかったという事だ。まあ全部噂で聞いた話なのだけれど。



(―――それにしても、)


自分から首を突っ込んでしまったとはいえついていなかった。
殴られたのは自分が油断していたからで、その点に関しては何も思わない。
ただ、幾ら少女を助けるためだからといっても名目上は暴力事件と呼ばれる物を、店で使われる筈だった物で...それも勤務時間内に男達を沈めたのがいけなかったらしく。
あの後近づいてきたパトカーの音に、面倒な事になるのを恐れ、痛む身体を抑えつつも帰宅したが、


「名前ちゃん、話は聞いたよ。幾ら人助けのためとは言え・・・・ごめんね。」


そう辛そうに謝り、「はい、これ・・・・」といって今月分の給料袋と名前の荷物を差し出された。


(・・・・ばれたか)


大方警察からのお達しでも来たんだろう、と他人事の様にぼんやりと考えた。
追い出されるのも仕方が無い。普通だったらよくも店の評判を、と一発殴られても反論は出来ない。
此処は血の繋がっていない自分の様な者にもとても優しく、居心地が良かったけれど。
名前ちゃんは気も利くしよく働いてくれたから、僕も出来ることならこのまま一緒にやっていきたかったんだけど、と哀しげな表情の店長――...今までこんな自分を養ってくれていた人、のそんな表情を見て名前は静かに頷き、給料袋と荷物を受け取った。荷物は余り持たない方だったから片手でも十分に事足りる。



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あきゅろす。
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