silversoul*ls
03.機械的な笑みで
「―――・・・・幕府が、侍を見捨ててからだ」
フ、と名前は片方の口端を上げそう呟くと、そのうちの一人がその声に気がついたのか「あぁん?」と此方を見てくる。名前はその視線をニコリ、と機械的な笑みで受け止め、「ねえ」と男達に声を投げかけた。
「あぁん?何だよお前。俺達の邪魔しないでくれる?」
「邪魔?何の事だか判らないな。それよりあんた達の方が通行の邪魔なんだけど、気づいてない?
ってかぶっちゃけあんた達なんてどうでも良いんだけど、その娘離してあげなよ。帰りたいって言ってんじゃん。」
名前がそう笑顔のまま告げると、男達は逆上し大声を上げて名前の胸倉を掴みかかった。
「てめェ....俺達に楯突くとは良い度胸じゃ無ェか」「カッコつけてんじゃねーよお坊っちゃん!」等と小汚い言葉を投げつけて来たが名前は特に気にすることも無く、「五月蝿いなぁ」と髪を掻き上げている。
その仕草や言動で余計に男達の気に障ったのか、ガラリと「良いから来いっつってんだろ!」と先程の少女の腕を乱暴に掴み裏路地に引き込もうとした。その瞬間。
「本当に最近の若者は人の忠告聞かないんだね、」
瞬時に名前が動き、男の視界から名前が消えた。
「何、――――・・・・・・っっ!?」
消えた、とようやく男の脳が認識した瞬間、「遅い」という声と共に名前は手に持っていた買い物袋を思いっきり少女の腕を掴んでいる男の頭に叩き込んだ。物凄い音を立てて路地に倒れこんだ男の姿を見て、残りの男共が一気に色めきたつ。
「てめェ、よくもケンジを・・・・!!」
「・・・・っ!!」
突然の、しかも二人掛かりでの攻撃に、名前の身体は耐え切れず路地に尻餅をつく。右頬を殴られたせいで口の中が切れたのか、微量の血液が口の端から垂れて名前の浴衣を汚した。
ぐいっと手の甲で未だ流れ続ける血を拭い、口内に広がる鉄分独特の味に眉根を寄せる。
「いつつ・・・・ちょ、私着るもんこれっきゃ持ってないんだけど。どうしてくれんのあんたら」
あくまでもそう軽口を叩いてみせる名前に、「てめぇ、もっと痛い目に合わせて貰いたいようだな!」と再び激昂した男達が襲い掛かった。
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