silversoul*ls
02.買い物の帰りに
名前が公園で寝泊りをするようになったのは此処3日前あたりからだ。
3日前の丁度今頃の時刻。名前は住み込みで働いているバイトの途中、養ってくれている店長に頼まれた買い物を終え、もう大分日の落ちかかっている道を店に向かって歩いていた。
今日の夕暮れは綺麗だな、などと考えながらも歩を進めていると、名前の耳に女性らしい高い声が届いた。
「っきゃ・・・・や、やめてください!」
見やればそこ女の子らしい色鮮やかな着物を纏った、中々に可愛らしい顔立ちの少女の姿。
そして少女の行方を遮る様に周りを取り囲む数人の若者が。
「いーじゃん、オネーサン一人なんでしょ?オレらとアソボーよ」
「ほ、本当に困ります!やめ、やめてくださ・・・!!」
手を突き出して拒絶する少女だが、男達はヘラヘラと笑って嫌がる少女の腕を強引に掴み、無理やりにどこかへ連れ去ろうとしている。
往来のど真ん中での光景に、無論彼らの周囲の人たちの目に留まらぬ訳は無い。だが、辺りの者は皆まるで何も起こっていないかの様に通り過ぎるか、迷惑そうに彼らと距離を置いて遠巻きに眺めているばかりで、彼女に手を貸そうとする人は誰も居ない。
――――まぁ、確かに面倒事に巻き込まれるのは御免だわな。
でも、仮にも男ならば――....否、心のある人間であれば、目の前で絡まれている女子が居れば手を貸すのが人情と云う物だろう。
(・・・ったく、いつから此の国はこんな腑抜けた奴らばかりになったんだ?)
そう内心で愚痴ったあと、名前は嗚呼....と自嘲する様な笑みを浮かべた。
「―――・・・・幕府が、侍を見捨ててからだ」
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