silversoul*ls
01.始まりは午前零時3分前に、
00.始 ま り は 午 前 零 時 3 分 前 に 、
ギシリ、と痛んだ木の軋む音が暗闇に響き渡る。
「いって・・・・」
そう静かに誰にもなく呟き、名前は重たい頭を持ち上げた。
悲鳴を上げる身体の節々に渇を入れながらもよっと、と声を上げて寝台から降りる。
寝台・・・・と云うには余りにもかけ離れていて硬い感触だった其れに眉根を軽く寄せるが、直ぐに「まあ仕方ないか」と気を取り直し、男物の浴衣を手際よく直すと其れに腰掛けた。
今何時だ・・・・、と名前はポツリと呟き辺りを見渡した。時計なんて持っていないから詳しい時刻は判らないが、辺りの暗さから言ってもう大分遅い時間ではあるだろう。
夜空を仰いだ。目の前に広がるのは何処までも広がる満天の星空で。
手を伸ばせば届きそうな位、とはよく言うが、何故だか名前はその星空を己とはとても遠い存在のように感じた。
だって星空はキラキラと眩しい位の輝かしさを放っていて。でも自分は既に汚れてしまっていて。黒に、紅に。
(・・・・・・やめよう)
これ以上暗い方に考えを持って行ってはいけない。名前は頭をブンブンと振って雑念を振り払った。
そうだ、今己が考えるべき事ではない。今自分が一番考えなきゃいけない事は何だ。
名前はそう自問し、ふ・・・と形の良い唇の口端をあげた。
考えなきゃいけないこと?――――そんなのは既に判りきっている。
「・・・・・・これからどうやって生きていくか、だな」
名前は遠い目でそう呟くと、はぁ・・・と陰鬱な溜息を空気に逃した。
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