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小説
恋人なんて呼べない
「リカ!ごめん、待った?」

「ううん、あたしも今来たとこ。」

よくある恋人同士のセリフのようだけど。


タカヒロはいつだって優しい。



「今日、新しくできたレストランを予約しておいたよ。リカの好きなイタリアンだ。」

ね?優しいでしょ?


「喜ぶと思ってさ。最近、かまってやれなかったし。」


そう言いながら、あたしの髪を軽くかきあげ耳に何かにつけてくれた。



「...なに?」

「新作のイヤリングだよ。俺がデザインしたやつ。」


手鏡をとりだして見てみると、いくつものダイヤでできた派手なモチーフのイヤリングだった。


「似合うよ。」


少し大袈裟なんだけど。

あたしより目立つじゃない。


「ありがとう。大切にするわ。」


あたしは単調に言い放った。


彼はその言葉だけを確認すると、いつもの車にあたしを乗せた。




あたしってタカヒロの飾りなのかしら。

思わずため息をついたけど、どうやら気づいてないようだ。

隣で運転する彼の視界にあたしなんかいないみたい。


仕方ないか、忙しくて疲れてるんだから。








自慢の彼氏よ。
誰にも渡したくない。



その想いが通じたかのように、彼が口を開いた。


「リカ、明日は?朝、早いの?」


珍しく声が緊張している。


「普通よ。久しぶりに朝まで一緒にいれるのね。うれしいわ。」


タカヒロが言いたいことなんてすぐわかる。


彼は黙ったまま運転を続けた。


あたしは窓から綺麗な夜空をずっとみてた。





着いたお店は想像以上に高級だったけど、

おいしかったし、その日の夜は彼と過ごした。







それなのに。


あたしの唇がアイツの名前を呼んだ気がして、彼に触れることはなかった。




あの夜、あたしはダークカラーの瞳に吸い込まれて、

金縛りに遭ったみたいに身動きがとれなかった。



「アキ」



あたしがそう呼ぶと、

アイツは、壊れそうな眼差しで、ひとつ、ひとつ、丁寧に涙を落としていた。




...どうして涙を流したの?


どうして、、、





聞きたいことが、たくさんある。







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あきゅろす。
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