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石楠花物語小学校時代
学校の螺旋怪談
豊平小学校・校庭付近
   5年生全員。エプロンをつけてカレーを作っている。そこに健司と磨子。

健司「よ、」
磨子「麻衣ちゃん、」
麻衣「ん?」

   顔をあげる。

麻衣「磨子ちゃん!!健司!!どーゆー?」
紡「私が誘ったんよ。」
糸織「友達持ち込みOK見たいだもんでさ。」
麻衣「ふーん。なら?二人もやる?」
知晃「お、お友達?大歓迎だよ。みんなでやろ。」
タミ恵「ま、面白いんじゃない?」
恵美子「この女、相も変わらず素直じゃないの。」
田苗「今カレー作ってるんだ。二人も一緒に野菜切ろうよ。」
磨子、健司「イェッサァーッ!!」


   しばらくご、二人もエプロンをつけて加わっている。

   磨子、肉の油だけをとってそれを固めて小麦粉をつけている。

麻衣「磨子ちゃん、何やってるの?」
磨子「これ、健司のやつ。」

   人参をひとつ二つだけ二センチもの厚さに切る。

磨子「これも健司が食べるやつ。」

   麻衣、クスクスと笑いをこらえている。

健司「おいっ!!」

   千里は手馴れた手つきで料理をしている。

健司「ん?」

   千里を見る。

健司「お前自棄に上手いな。」
千里「そう?ありがとう。僕んち実は、一週間に一度は僕がご飯作ってるんだ。ママが今妊娠してるの。だから…」
健司「ほー…」
麻衣「いいな、せんちゃんの家ってもうすぐ赤ちゃん生まれるんだ。あんたお兄ちゃんになるんね。」
千里「うんっ。二人目のね。」
麻衣「え?」
千里「うん、まだ二歳だけど頼子って妹がもう一人いるんだ。」
麻衣「へぇーっ。」


   夕方になる。食事が始まり、麻衣、知晃、田苗、恵美子、タミ恵、千里、掛川と共に健司、磨子が食べている。

麻衣「…あ!!」

   巨大ニンジンを取り出す。

麻衣「これ…」

   磨子を見る。

磨子「あ、ごめん。麻衣ちゃんの所に行っちゃったんだ。」

   磨子、スプーンで脂の塊を掬い上げる

磨子「あ、」

   健司、腹を抱えてクスクス。

健司「ざまぁ見ろ!!」

   何気なくスプーンを口に運ぶ。口の中に入れてしかめっ面。

健司「おうぇっ、」

   へらをベーっと出す。舌の上に巨大ニンジン。

磨子「やーいやーい、引っ掛かった引っ掛かった!!大当りぃっ!!」
 
   ふざけて舞い踊る。健司、悔しがりながらカレーを掻き込む。


   食べ終わる。

麻衣「次は?いよいよ…」
知晃「肝試しね。」
健司「肝だめし?」
恵美子「うんっ。トラップは先生方…私達は一人ずつ学校の中を廻るのよ。」
磨子「へー、楽しそうじゃん。ねぇ健司。」
健司「あぁっ!!」
磨子「このばーかっ。強がっちゃって。」

   健司をこずく

磨子「低学年の頃怖くて怖くて、夜トイレいけなんでおしっこもらして泣いた子どこの誰でしたっけ?」

   健司、真っ赤になる。

健司「ば、バカ野郎っ!!低学年の頃と一緒にするなっ!!俺はへー5年生だぜ?」
磨子「さぁどーだか?本当に変わっていれば大したもんね。」
健司「な、何だとぉ?この野郎!!」
麻衣「まぁまぁ。」

   千里を見る。千里は震えて泣きそう。

麻衣「せんちゃん…あんたこそ…大丈夫?」
千里「大丈夫…じゃない…」

   者繰り上げる

千里「もうやだぁ、僕帰りいたぃ!!」
田苗「怖がりね、こんなのただの先生方の仕掛けよ。」
知晃「リアルな俳優さんがやってるリアルな廃病棟のお化け屋敷だったり?」
恵美子「実際に出るスポットとかだったら、流石に子供の私たちにはまだ刺激が強すぎるけどさ…」
磨子「わぁっってビックリするだけよ。」

   千里、驚いて泣き出す。

磨子「あーあ、泣いちゃった…」

   麻衣と磨子、千里を慰める。


   始まり、一人一人が学校を回る。


麻衣「あ、後は私たち三人だけか…」
磨子「んなら、私から…」

   先に入っていく。


   暫くして涼しい顔で帰ってくる。
 
麻衣「どーだった?」
磨子「んーんー、千里君、大丈夫大丈夫。みんな先生方だで優しいに。私が転んだら助け起こしてくれた。チャオチャーオっ!!って言えば返してくれるに。」
麻衣「だって。ほいじゃあ次は私が…」

   千里、麻衣の腕をつかんで強く首を振る。

麻衣「え?」
千里「最後僕一人?」
麻衣「ほーよ。大丈夫、私が行って先生たちに言ってくるわ。」
千里「何て?」
麻衣「最後があんただもんで、ただでさえ恐いで脅かさないであげてくれって。」
千里「麻衣ちゃん…」
麻衣「ほいじゃあ、行って参ります。」

   麻衣、入っていく。千里、とても不安げに麻衣を見つめる。


   軈て麻衣も涼やかな顔で帰ってくる。

麻衣「何の何の、大丈夫。河原先生を始め、先生方に言ってきたに。みんな笑ってOKしてくれた。」
千里「本当に?良かった…麻衣ちゃんありがとね。」

   表情が戻る。

千里「では僕、小口千里…行って参ります。」
   勇んで中に入っていく。

麻衣「河原先生は音楽室におるにぃっ!!」


同・校内
   千里、一人で歩いている。

千里「ても…やっぱり怖いよ…河原先生…ママぁ…」

   半泣き。

栗平先生「小口君、小口千里君、」
千里「ひぃっ。」
栗平先生「大丈夫、先生だよ。」

   千里に微笑む。

千里「栗平先生?」
栗平先生「先生方はみんないるから頑張れ。音楽室に行けば河原先生もいらっしゃるよ。」
千里「はい、」

   弱々しく微笑む。

千里「先生、ありがとう…」


   どんどん先に進んでいき、色々な先生と話をして励まされている。

千里(よーしっと、なんだか行けそうな気がするぞ…このまま頑張っちゃえっ!!)

   勇んで歩き進んでいく。

同・音楽室
   ピアノの音が聞こえる。千里、恐る恐る。

千里「か、河原先生っ?」

   突然、がーんっと鍵盤が押される

千里「ひぃっーーーっ!!!」

   懐中電灯を落とし、怖がって一目散に逃げようとする。

河原先生「小口君っ!!小口千里君っ!!」
千里「いゃーっ、イヤだぁ。もういやだぁーっ!!」

   転んでしまい、泣き崩れる千里を優しく抱き起こす。

河原先生「私ですよ、千里君、河原です。」
千里「河原先生?」

   者繰り上げながら顔を見上げて安心したように微笑む。

河原先生「大丈夫ですよ。事情は柳平さんから聞きました。あなたには特別なのよ、全くもう…」

   立たせる。

河原先生「ほら、もう後もう少しだから頑張りなさい。後は地下室だけですよ。」
千里「地下室…はいっ。」

   不安げに 

千里「僕が一番最後なんですよねぇ?僕一人でいくの?先生は一緒に来てくれないの?」
河原先生「いけません。あなた一人で頑張りなさい。ここまで怖がりな子は千里君、あなただけですよ。」

   優しく微笑む。

河原先生「さあっ、」
千里「はい。」

   歩いていく。

河原先生「先生は出口のゴールでみんなと一緒に待っていますからねぇ。」

   千里は少し安心したように胸を張ってルンルンと歩いていく。


同・地下室
   地下廊下。千里一人、歩いてくる。

千里(後ここだけなんだ…ここを乗りきれば…)

   唾を飲み込む。

千里(よしっと)

   力強く確かめるように頷くと先へと進み出す。


   しばらくご、目の前に出口の階段が見えてくる。

千里(あ、やったぁ…ついに出口だ…僕、頑張ったんだ!!)

   嬉しそうに微笑んで小走りになる。前方からは足音。

千里(ん?)

   立ち止まる。

千里(誰か来る…きっと僕を迎えに来てくれたのかな?)

   にこにこ

千里「待ってて、今行くよぉ。今そっち行くからさぁ!!」

   シーンとする。千里、喜びに小走り。

千里「誰?麻衣ちゃん?磨子ちゃん?田苗ちゃん?ちきちゃん?タミ恵さん?恵美ちゃん?それとも…ん、分かった、かけちゃんだろ?」

   シーンとする。

千里「返事くらいしてよぉ?それとも何?みんなも僕を怖がらそうとしてる気?」

   前方からはどんどんと人が近寄ってきて千里とすれ違う。すれ違い座間にすれ違った女子生徒が千里の方をチラッと無表情で見つめる。

千里「ん?」

   立ち止まって振り替える。

千里「今誰か通ったような…気のせい?風か…」
 
   女の子の顔が千里の前に現れてからその子が又後ろへ歩いていく。

千里「ん、君誰?なん組の子?」
女の子「…。」
千里「それとも誰かの友達かい?」

  
女の子、ゆっくりと首を振ってからフッと消えて行く。

千里「え…」

   身震い。目を前を見る。一人の女子生徒が首を吊って死んでいる。千里、固まって腰を抜かす。

千里「わ…わ…わ…」

   声を出したいけど出ずに震えている。

千里「ママ…河原先生っ…」

   一筋の涙がこぼれ落ちる

千里「助けて…もうやだぁ…嫌だよぉ…」

   座り込んだお尻の下も段々に濡れ出す。

千里「ママぁ…」


同・校庭
   生徒と先生、ざわついている。

麻衣「先生、せんちゃんは?」
河原先生「さぁ、私があの子に会ってから大分たい経つからい加減もう帰ってきてもいい様な気もするんだけどねぇ…大丈夫かしら?」
磨子「まさか、なにか彼に?」
河原先生「いえ、暗闇なのでそんな危ないものは置いてないし、最後の地下室にはお化け役の先生も何の仕掛けもないはずなんですけどね…」
栗平先生「いいですよ先生、私が千里君の様子を見て参ります。」
河原先生「そうですか?では、宜しくお願い致します…」
栗平先生「はいっ、河原先生。私にお任せくださいませ。」

   敬礼をして中へと走って入っていく。麻衣と磨子、キョロキョロ。

磨子「あれ、そう言えば健司もいないわね。」
麻衣「ふんとぉーだわ、何処いっちまったんだら?」
磨子「きっとトイレじゃない?」
麻衣「え、でもトイレは校舎の中だら?こんな肝だめし最中に真っ暗な中あの子一人で行けるだけやぁ?」
磨子「や、たぶん切羽詰まってたんじゃないの?あの子、もれそうになって必死なら何でもやる子だで。火事場のバカ力ってやつかな?うんうん、」

   一人で頷いて納得。

麻衣「いやいや、磨子ちゃん…ほれ、何か若干違うような気がするで。」
磨子「ん、ほ、」

   悪戯っぽく小粋にキョトンとする磨子を笑ってこずく麻衣。しかし二人とも心は何処と無く心配で不安そうにしている。落ち着きもない様子。

同・地下室
   栗平先生が懐中電灯を持ってやってくる。

栗平先生「おーい、千里君に健司くんーっ、いるかぁ?」

   歩きながらキョロキョロ

栗平先生「おーいっ、」
千里の声「先生?」
栗平先生「千里君か?」

   千里、床に崩れ去った状態で泣きながら栗平先生を見る。

栗平先生「どうした、大丈夫か?」

   千里を立たす。

栗平先生「おーおー、そうか…おもらししちゃったのか。」
千里「お化けが…女の子のお化けが…」

   者繰り上げる

千里「いたんです…ここに、女の子が…」
栗平先生「大丈夫だ、千里君大丈夫だから!!」

   千里をおぶる。

栗平先生「ところで君、健司くんという子を見ていないかい?」
千里「健司くん?」

   涙をぬぐう。

千里「いいえ、知りません。健司くんはずっと前に終わって、帰ってきたはずですが…」
栗平先生「おや?」

   首をかしげる。と、どんどんどんと音がする。

千里「あーーっんんっ。」

   顔を覆う。

栗平先生「大丈夫だ、千里君…誰だっ!?」

   ロッカーがばっと開いて口を縛られた健司が倒れるように出てくる。

千里「健司くんっ?」
栗平先生「君が健司くんか?」

   駆け寄る。

栗平先生「一体どうしたんだ?何があった?」
健司「先生…」

   栗平先生、手足を縛られたガムテープと口の布を外す。健司、ワッと栗平先生に泣きつく。

健司「先生、怖かったよぉっ!!」
栗平先生「君、いつからここに?」
健司「俺が肝だめしでここに来たときに誰かに縛られてほのまま今までずっと閉じ込められてたんだ…」
千里「でも君、一回帰ってきただろ?」
健司「帰ってなんか来れるか?俺ずっとここにいたんだ!!」
千里「でも…」

   震え上がる

千里「でも、」

   栗平先生の背中に顔を埋める。

栗平先生「さぁ、君ももう戻ろう。次は…あーあー、」

   健司、おもらしをしてしまう。

健司「先生ぇーっ、わぁーんっ!!!」
栗平先生「おもらししちゃったのか、怖かったねぇ。大丈夫だよ、」 

   更に泣き出す健司の手を引いて戻っていく。

栗平先生「さぁ、次はキャンプファイアだよ。大広間で着替えてから行くか?」

   電気をつけながら階段を上っていく。二人の後ろから、あの女の子が見つめている。


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