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石楠花物語小学校時代
車山にヒュッテにて
   『石楠花物語小3時代』

ヒュッテ『キスゲ』・室内
   柳平麻衣、柳平桃代、柳平梅生、柳平櫻子。

麻衣「あーあ、せっかくの夏休みだだに、こんなことやるなんて…」
桃代「ごめんね、麻衣ちゃん。終わったらご褒美、ちゃんとあげるから…」
麻衣「ふんとぉーね、桃代お姉ちゃん…。」

   むくれる

麻衣「でもどいで私なんかを呼んだんですか?」
桃代「いつもは私の父さんと母さんがやるんだけどね、今年は二人ともワルシャワへ行ってしまったから…」
麻衣「ワルシャワへ?どいで?」
桃代「仕事の都合よ。父さんね、元々オペラ歌手だったんだ。で、やめてこのヒュッテをやっていたんだけど…何か又、ワルシャワからお呼びがかかったみたいで…行っちゃったわ。だから私がこのヒュッテを継ぐの。」
麻衣「へぇ…桃代お姉ちゃん偉いね。」

   笑う。

麻衣「私も頑張らなくっちゃ!!ねぇ、お姉ちゃんは大人になってもここを続けるだ?」
桃代「そうね…」
梅生「いいよ、」

   大雑把に箒を掃きながら

梅生「もし姉ちゃんが継がなくても僕がやるから。」
桃代「ありがとう、」
櫻子「そうよ、だから姉ちゃんはやりたいことやって。」

   桃代、照れて微笑む。時間を見る、9:0015分前。

桃代「さぁ、もうすぐ来るわね。」


バスの中
   京都の小学校の三年生。中に小口千里。清原元助、園原宗一郎、田夢美代が千里を慰めている。
千里の着ている黄色のパーカーはもはや涙でぐしょぐしょになって濡れている。

美代「千里ちゃん、もう泣かないでよ…大丈夫だから。」
園原「そうだよ、僕達がいるだろ?」
千里「だって、だって…」

    者繰り上げる

千里「こんな遠くに来て…ヒック、ヒック、…家族と離れてお泊まりするの…」
清原「バカだなぁ、慣れだよ慣れ。君、早速ホームシックか?大人になるためには必要なんだよ。」

   バス、車山ヒュッテの前で止まる。佐久間若惠先生、引率。

佐久間先生「さぁ、車山ヒュッテに付きました。まずは皆さん、今夜泊まるヒュッテに向かいます。では、和裏先生、」
和裏匠馬先生「ん、それではみんな続け。いくぞ。」

   生徒たち、バスから降りて続いて歩いていく。


ヒュッテ
   前景の人々が来る。

桃代「いらっしゃいませ、オーナーの柳平桃代と申します。ようこそいらっしゃいなして。」

   丁寧に挨拶。

梅生「副オーナーの梅生です、」
櫻子「仲居の櫻子です。」
麻衣「同じく仲居の麻衣と申します。」
四人「どうぞごゆっくり。」
三年生「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

   桃代、泣いている千里を見る

桃代「あらまぁ、坊やどうしたの?」

   和裏先生を見る。

桃代「先生、どうなさったのですか?」
和裏先生「あぁ…」
園原「千里君、ホームシックになっちゃったんだよ。」
清原「そうそう、京都駅からずっと泣いてる。」
美代「千里ちゃん…」
桃代「そう…」

   千里の体を持つ。  

桃代「千里君っていうのね。大丈夫よ、もう泣かないで…京都から遠いのによく来たね、まだ小さいもの、寂しいよね、お母さん恋しいよね。」
梅生「でも、大丈夫さ、すぐに楽しくなるよ、僕たちと一緒に短い間だけど、楽しくしようよ。」
櫻子「そうよ、会ったからにはもう仲良しだわ。」
桃代「これっ、櫻子!!」

   厳しく

桃代「仲よくお友達になるのはいいですが、お客さまだってことを忘れないように…。」
櫻子「はーい、」

   麻衣、千里を見つめ、千里も麻衣と目が合う。


ヒュッテ・スタッフルーム
  
麻衣「はぁ、ごしたい。早々団体客だもの。」
桃代「毎年夏場はこうよ。」
麻衣「へぇー、桃代お姉ちゃん…毎年大変ね…」
桃代「まぁね。いつもは両親を手伝うだけだからそれほど感じなかったけど、今年は仕切る側だから大変だわ。」
櫻子「そう言えばお姉ちゃん、もう一組お客さまがいらっしゃるとか…」
桃代「あぁ、えぇ。」
梅生「何時に来るの?」
桃代「その方は夜よ。学生さんお一人なの。」
麻衣「へぇー。今は学生さんが多いのね。」


同・客室
   千里、園原、清原、美代。千里、やっと泣き止み出す。

美代「千里ちゃん、大丈夫?」
千里「うん、美代ちゃんごめんね…恥ずかしいとこ見せちゃった。」
美代「ううん、いいの。泣いた千里ちゃんも美代、好きよ。」

   頭を撫でる。

美代「千里ちゃんが悲しかったら、いつでも美代が慰めてあげるね。」
千里「美代ちゃん…ありがとう。」
園原「あーっ!!千里君、女の子に慰められてる!!」 
清原「本当だ!!」
千里「えへっ。」

   四人、笑う。

清原「そう言えば、」

   キョロキョロ

清原「トイレ何処かな?」
美代「美代も行きたい!!」
園原「僕も…」

   千里を見る

園原「君は?」
千里「僕も!!」

   みんなでもじもじ。

千里「僕、さっきのサービスエリア過ぎたときからずっと行きたいの…」
美代「大丈夫?」
千里「うん…う、うん…」
園原「どっかにはあるよね、」
清原「このままじゃみんなもれちゃうよ。」
美代「とりあえず廊下に出て、さっきのお姉さんたちに聞いてみようよ。」

   四人、廊下を出る。


同・一階
   フロントに麻衣

美代「お姉さん、」
麻衣「はい、何ですか?」
千里「おしっこしたい!!」
美代「おトイレ何処ですか?」
麻衣「あ、トイレの場所。ごめんね。ちょっと待ってね…」

   スタッフルームへ入っていく。


同・トイレ
   数分後。

桃代「ここですよ、」
美代「ありがとう。」

   其々男女に別れている。美代は女子トイレに入っていく。園原、清原、千里、男子トイレに入ろうとするが二人、千里を女子トイレに押し込む。

千里「うわぁっ!!」
園原「君は女子トイレじゃない?」
清原「その方が君にお似合いだよ。」


同・女子トイレ
   個室は四つ。ちょうど美代が出てくる。  

美代「っ!!」

   千里、床に尻餅をついている。

美代「千里ちゃん?どうしたの?」

   キョロキョロ

美代「ここは女の子よ。男の子はお隣。」
千里「勝手に押し込まれて転んじゃったの…」

   美代、千里の手を引いて立たす。

美代「さぁ、おしっこもうした?」

   千里、首を降る。

美代「なら男子トイレに行って。」

   千里、泣き出しそう

千里「もうもれちゃうよぉ!!」
美代「千里ちゃんっ、」
千里「ダメダメダメ、えーんっ!!」

   泣き出す。

美代「しょうがない子ね、なら特別…女の子のトイレでおしっこしていいよ。」
千里「本当に?…ありがとう…」

   小さな子供用の男子便器もある。千里、急いでそこにいく。

美代「いやん、そこでするの?」

   顔を赤くして手で顔を覆う。

美代「千里ちゃんのエッチ!!」
千里「ごめん…だってもうもれちゃうんだもん…」

   トイレの内装は木造で山の風情溢れる。


同・トイレ
   四人、出る。千里、二人を睨み付ける。

千里「何て事してくれるんだよぉ?もれちゃうとこだったんだぞ!!」
美代「そうよ、酷いわ!!」
園原「ごめんごめん、だって君、女の子の様な可愛い顔してさ、小さいし…」
清原「ちょっと苛めたくなったんだよ。」
千里「だからって今しなくていいだろ?それとも何?」

   恨めしそうに

千里「君達、僕がおもらししちゃうの見たいわけ?」
園原「そんな、まさか!」
清原「そんなことないさ!!」

   美代、顔を赤くして微笑む。

同・スタッフルーム

麻衣「あ、桃代お姉ちゃん、お帰り。どう?あの子達大丈夫だった?」
桃代「うん、なんとか間に合ったみたい。」
麻衣「良かった、あ!」

   腕時計を見る。

麻衣「なら桃代お姉ちゃん、ぼちぼちお風呂を炊かんと?」
櫻子「あ、忘れてた!!それは私の仕事だ!!」

   急いでお風呂場に向かう。

尾上京平の声「今晩は、ごめん下さい。」
麻衣「あ、誰か来た。」
梅生「きっとお客さまだよ。お姉ちゃん。」
桃代「あ、はーいっ!!」

   スタッフルームを出る。


同・ロビー
   泉野馨子と尾上京平がトランクを下げてやって来る。

尾上「夜分遅くなってしまい、申し訳ございません…予約をしている尾上です。」
桃代「あぁ、尾上様ですね。お待ちしておりました。」

   受付をしている。

桃代「そちらの方は?」
尾上「あぁ、私の連れです。近々契りを交わそうと思っておりまして。」
桃代「まぁ!!それはそれは、おめでとうございます!!」


同・客室
   和裏先生が入ってくる。

和裏先生「男子諸君!!お風呂の準備が出来たと連絡が入った。入るように。」
全員「はーいっ!!」 

   和裏先生が出ていくと、みんな大はしゃぎで準備をしだす。


同・温泉
   芋洗いのように三年生男子、お風呂に入っている。

千里「はぁ、気持ちいい…広いなぁ…」
清原「あぁ、僕もまさかこんなに広いお風呂があるだなんて思いもしなかったよ。」
園原「本当、本当!!それにしても君、」
千里「ん?」
園原「ガリガリなんだね。体…」
清原「骨盤とか、見えてて女の子みたい。」
千里「だって、仕方ないじゃん。まだ子供なんだもん。」

   そこへ尾上京平

尾上「お、修学旅行生かい?偉い小さいねぇ?」
園原「うん、だってまだ僕たち三年生だもん。」
清原「社会見学だよ。京都から来たんだ。」
尾上「ほぉ、京都から?遠いとこから来たんだね。」
千里「お兄さんは?」
尾上「僕は、…と言いながら、僕も大阪から来たんだ。お医者さん、研修旅行さ。」
千里「へぇー、」
尾上「それにしても君…いくら子供とはいえ、学習旅行だろ?ちょっとまずくないか?」
千里「へ?何がです?」
尾上「女の子のお風呂は隣だよ。同級生の男の子と一緒に入ってもいいの?」
千里「お、お、お、お…女の子のって…僕は、僕は…男ですっ!!」

   恥じらいながら湯船から立ち上がる。

千里「見なっ!!」
園原、清原「おぉっ!!」
   
   又真っ赤になって浸かる。

尾上「そうかそうか、これは悪い悪い、悪かったな坊や。」

   爽やかに笑う。

尾上「でも君、体までもが女の子みたいなんだな。」
千里「お、お、お、お…」

   いい加減不貞腐れて言葉をのみ、つんっとそっぽを向く。

尾上「ごめんごめん、冗談だよ、冗談なんだってば。機嫌直せよ。、な、な、ね。」

   笑いながら千里を宥め、ご機嫌をとる。園原、清原も笑いながら宥める。

同・フロント
   麻衣、梅生、桃代、櫻子

麻衣「あの子達は?私達と同じくらいね?」
桃代「そ、全く麻衣ちゃんと同い年。京都から社会見学でここへ来たんだって。」
麻衣「へぇー。京都の子はこんな遠くまでこんな小さいうちから来るんね。立派。」
櫻子「だからさっきの子、泣いちゃってたんだね…寂しくて。」
梅生「そりゃお母さん恋しいよ…不安だよ。ねぇ、麻衣ちゃん。」
麻衣「えぇ、ほーね。」


同・尾上の客室
   尾上、馨子がお茶を飲んでいる。

尾上「馨子、遠い旅ご苦労。お疲れだろ。」
馨子「えぇ、私は大丈夫、京平さんこそ…」
尾上「私は平気さ。入浴をして来たら一気に安らいだ。馨子、お前も早く入っておいで。」
馨子「えぇ、では…」

   荷物を持って部屋を出ていく。


同・フロント

麻衣「ほいじゃあ、お言葉い甘えさせていただき、私もとりあえずお風呂に入って来ます。」
桃代「どうぞ。夜はここ、私一人で大丈夫だから。梅生、櫻子、あんたたちも行ってきな。」
梅生「やったぁ!!」
馨子「なら…麻衣ちゃん、」
麻衣「はいっ!!」

   三人、フロントを出ていく。


   梅生、貸しきりのお湯に悠々と浸かっている。


同・女子風呂
   麻衣、櫻子、馨子、美代

麻衣「あ、あなた。」

   微笑む。

麻衣「さっきの社会見学で来た子ね?」
美代「えぇ。お姉さんは?」

   少し考えて笑う。

美代「あ、分かった!!フロントのお姉さんだ!!」
麻衣「正解、柳平麻衣…小学校三年生。あなたは?」
美代「え、私たちと同じなの?」

   目を丸くする。

美代「美代、もっとお姉さんかと思った!!私は美代。田夢美代、さっきは千里ちゃんをありがとう。」
麻衣「いえいえ。あれからどう?あの子、泣き止んだ?」
美代「はい、お陰様で。今はもう元気になって部屋で遊んでいます。」
麻衣「ほー、良かった。」
馨子「娘さんはフロントの?まだ小学校三年生って…えらいわね、しっかりしてるわね。」
麻衣「いえ、私はただ親戚のお手伝いに来ているだけですよ。」

   微笑む。

麻衣「お姉さんもさっきのお客さまですね、」
馨子「えぇ。」
櫻子「尾上様とは恋仲なのですよね、」

   ニヤリ

櫻子「もう馴れ初めの契りは交わしましたか?」
馨子「こらっ、」

   赤くなって櫻子をこずく。

馨子「子供が大人にそんなことを聞くものではありません。」
櫻子「子供って…私はお客さまとそんなに年齢変わらないと思いますよ、今年で19ですもの。」
馨子「あら、これは失礼…私と一つしか変わらないわ。」

   四人、其々に打ち解けあってベチャクチャ。


同・客室
   時間が経って消灯になる。千里、仰向けで眠りながら目を見開いている。

千里(パパ…ぁ、ママぁ…早く帰りたいよぉ…寂しいよぉ…)

   目に涙が溢れてきて再び者繰り上げる。布団に顔を埋めて静かになく。


車山高原
   翌朝

和裏先生「さて、今日は登山をします。あの車山高原の頂上まで上ろうと思う。それでは、佐久間先生のお話のあと、先生たちのあとに続いて登りましょう。」
全員「はいっ。」

   佐久間先生の話を聞いている。

佐久間先生「と言うわけですので、みなさん気を付けて登りましょう。特に、」

   千里を見る。

佐久間先生「小口千里君っ!!君は普段から危なくて心配のある子なので、十分に気を付けて、余所見をしたり、調子に乗らないこと、いいですね?」

   笑いが起きる。

佐久間先生「他人事ではありませんよ、みなさんもです。」
全員「はいっ。」
佐久間先生「では、参りましょう。」

   三年生、二人の先生に続いて登山を始める。

清原「おぉっ、かなり寒いな。」
園原「8月だって思って侮ってたよ。」
千里「僕も…あ!!」

   立ち止まる。

清原「ん、どーした千里?」
千里「明日は僕の誕生日だ!!」
清原「何だ、そんなことか。」
千里「何だとは何だよぉ!!」
園原「そうかぁ、明日お前の誕生日だったな、」

   清原を見る。

園原「おい、君のその態度は確かに少し冷たいぞ。」
清原「そうか?」

   千里、目を伏せてむくれる。 

清原「や、ごめん千里君…そういつもりじゃあ…」
千里「ふーんだっ。どーせ僕の誕生日なんてどーでもいい事ですよぉーだっ!!」

   すっかり拗ねてしまう千里を必死で説得して宥める二人。


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