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石楠花物語小学校時代
運動会
上諏訪駅
   前回の人々。

麻衣「ほいじゃあな、せんちゃん。今日はありがとう、楽しかった。」
千里「僕もだよ。クレープ…」

   照れて。

千里「ありがとう…ご馳走さま。」
麻衣「いえ、私こそ」

   微笑む

麻衣「金魚、ありがとう。大切に育てるな。」
千里「うんっ。」
麻衣「赤ちゃん生まれたら、見に来てね。」

   千里、ポッと紅くなる。

麻衣「せんちゃん?」
千里「う、うんっ。是非!!」
健司「ほいじゃあ、帰ろうぜ。」
麻衣、磨子「うんっ。」

   其々、別れる。

眞澄「さぁ、チーちゃん?」
千里「え?」
眞澄「さっき何であの子にはあんなににこにこしてたのよ。」
千里「何でって…」
眞澄「今度はしっかりと眞澄に付き合ってもらうんだから!!」
千里「えー、僕もう帰ってピアノ弾きたい…」

   眞澄、千里をきっと睨む。

千里「はい…」

   強引に眞澄に手を引かれている。

千里「ピアノ…ご飯…」

   後藤、小平、笑いながら面白そうについていく。


柳平家・和室
   三つ子の部屋になっている。麻衣、水槽に金魚を入れてうっとり。 

紡「ん、麻衣、又金魚眺めとるんか?」
麻衣「うん…ほいだってかわいくて飽きんだもん。」
糸織「ふんとぉーは、金魚じゃなくてあの男の子の事、見てるんじゃないの?」 

   麻衣、紅くなる。

紡「でも麻衣は、確か悟ちゃんのお嫁さんになるだらに?」

   麻衣、吹き出す。

紡「な、ほーだら?」
麻衣「悟ちゃんは…へー、」

   金魚を見つめながら

麻衣「中学二年生だら?小学校の私から見れば大人のお兄ちゃん…手の届かないところへ行っちゃった…。ほれに悟ちゃんは格好いいんだもの…きっともう可愛い彼女さんがいるんだわ。」
紡「へー、ってこんは?」

   にやにや

紡「千里くんの事を認めるっつーこんか?」
麻衣「だでどいでほーいう話になるんよ!!」
紡「ほいだって、ほーいうこんだらに!!」
麻衣「だーでーっ!!」


   だんだんと暗くなり、夜になっていく。


小口家・千里の部屋
   千里、うっとり。金魚を見つめながら。

千里(麻衣ちゃん…可愛いな…又遊びたいな…)

   そこへ珠子。

珠子「せんちゃん、」

   少し厳しき顔

珠子「宿題はしたの?」
千里「もうやりました。」
珠子「あら、」

   金魚を見て微笑む。

珠子「まぁ、可愛らしい金魚ね。これ、せんちゃんがとったの?」
千里「そうだよ。」
珠子「凄いわね、せんちゃん、金魚すくいはとても得意ね。」
千里「うん、まだまだ一杯とれたんだよ。でもそんなに水槽に入らないだろ、だから、」

   恥じらう。

千里「友達の…女の子にあげてきた。」
珠子「まぁ、女の子に?」

   にっこり。

珠子「同級生?眞澄ちゃん?とも、マコちゃんね?」
千里「違うよ。」

   うっとり

千里「麻衣ちゃんって女の子だよ。ほら、豊平小の…」
珠子「麻衣ちゃん?」

   少し考える 

珠子「あぁ、柳平さん家のご息女の!!ふふっ、せんちゃんも男の子なのね。」
千里「え?」
珠子「その子の事が好きなの?」

   千里、ポッと紅くなる。下を向く。

珠子「まぁいいわ、宿題は終わったんでしょ、ご飯よ。」
千里「はーいっ!!」

   珠子についてルンルンと部屋を出る。

同・台所
   珠子、小口、千里、頼子、洲子、夕子がご飯を食べている。珠子、クスクス。

珠子「って訳なの。せんちゃん可愛いわ。」
千里「んも、ママやめてよ!」
珠子「いいじゃないの!!ねぇ。」
小口「ほー、千里もついに初恋か…どんな子だ?可愛いか?」
千里「うんっ、麻衣ちゃんはとっても可愛いんだ。眼鏡をかけているんだけどね、それでもすごく美人なの。」
小口「そうかそうか、」

   笑って千里の頭を撫でる。

小口「じゃあ、今度パパもその子に会ってみたいな。将来の小口家のお嫁さんかな?」

   千里、更に紅くなる。

夕子「兄さんや、そりゃいくらなんでも気が早すぎだろうさ。千里が嫁なんて10年以上先なんだよ。第一この千里が嫁をもらえるかも分からないし…」
千里「叔母さんっ!!ちょっとそれって何か酷くないか?」
洲子「そうよ夕子姉さん、いくら身内とはいえ、ちょっとお言葉に刺がありすぎるわよ。」


同・千里の部屋

千里「で、」

   ピアノを弾いている。

千里【めでたくも今年も、僕が多数決で音楽会のピアノソロに選ばれまして?しかもしかも…】

   うっとり

千里【今年は僕、合唱のピアノ伴奏者にも適任されちゃったんだ!!小学校の生徒としては初めて…うっきゃぁーっ!!!】

   にこにこと夢中になって弾いている。


上川城南小学校・校庭

千里【でも…その前に…】

   大運動会が行われている。

千里【僕が一番嫌いなこの行事…】

アナウンス「続きまして…6年生…小学校最後の運動会…短距離走です…。」

後藤「千里、まず一番手はお前だぞ、」

   千里、びくりとして我に返る

千里「えぇ?」
小平「俺達がはじめなんだよ、」
千里「あ、そうか…」

アナウンス「位置について…よーい…」

   一斉に走り出す。大きな歓声が飛ぶ。

珠子「せんちゃんーっ、頑張って!」
小口「千里、頑張れ、」

   千里、走っているが途中で転ぶ

千里「うわぁっ!!」
小口「千里っ!!」

   千里、少しずつ立とうとするが泣きそうになっている。周りから千里に向けて大きな歓声。

小口「千里っ、たちあがってはしれ!泣いちゃダメだ、男だろう!!」
千里(パパ…) 
珠子「せんちゃんっ、負けるな!!」
千里(ママ…)  

   応援するクラスメート、下級生を見る。

千里(みんな…)

   涙を飲む。

千里(よしっ、)

   走り出す。

小口「偉いぞ千里、頑張れ、」
珠子「あともう少しよ、」 
 
   千里、ビリでゴールするが先生がテープを持ってくれていて、テープを切る。

   ゴールをすると大拍手。千里、ワッと泣き出す。後藤、小平、丸山修が千里を抱き止める。 

後藤「大丈夫だったか千里?」
小平「凄いよお前、偉かったな、よく頑張ったな。」
千里「みんな…」
丸山「見直したよ…」
千里「君は…」
丸山「格好良かったよ。」

   手を差し出す。
 
千里「丸山君…」

   涙笑い。

千里「ありがと…」


   全員が終わると、みんな誇らしげに退場行進。大きな拍手に校庭は包まれる。


   やがて最後、組体操。

珠子「見て、見てせんちゃんはどこかしら?」
小口「なんの技でもあの子は小さくて軽いからみんな一番上だよ。」
珠子「まぁ、いたわ、いたわ!!せんちゃん、頑張ってね!!」

   順調に演技は進んでいく。


   最後、大ピラミッド。千里、一番上に上る。大拍手。

   しゃがもうとするとき、千里、転落。

珠子「せんちゃんっ…」

   立ち上がって駆け寄ろうとするが小口が止める。
 
珠子「でも…あなた…」
小口「やめなさい、千里は大丈夫だよ…。見ててごらん、」

   千里、しばらく動けずにいる。金子先生が駆けつけるが、千里、ゆっくりと立ち上がる。

小口「ほらね、」
珠子「せんちゃん…」

   金子先生にそっと寄り添って泣く。

金子先生「小口くん、大丈夫ですか?」
千里「えぇ、先生…僕は大丈夫…」

   擦りむけた膝を見る

千里「血…」

   真っ青になって貧血を起こして倒れる。

金子先生「千里君っ?ちょっと千里君?」

   抱き抱えて医務部に連れていく。


同・医務部
   千里、設立されたベッドに横たわっている。

医務医「大丈夫よ、ただちょっと血を見たショックで貧血を起こしちゃったのね…」

   千里がゆっくりと目覚める。

医務医「目が覚めた?大丈夫?」
千里「先生…僕は…」
医務医「良かったわ、大事なくて…。痛いところは?他にはない?」
千里「脚が…」
医務医「脚、痛いわね…こんなに酷く擦りむいちゃってる。もう大丈夫よ、手当てして、血も止まりましたからね。」
千里「良かった…」
医務医「もぉ、血を見て気持ちが悪くなっちゃったんでしょ?」
千里「はい…」

   立ち上がる

千里「でももう大丈夫です、ありがとうございました!!」
医務医「歩ける?」
千里「はい、大丈夫です…」

   席へと戻っていく。

千里「先生たち、ありがとうございました。お世話かけました。」

   少々足を引き釣りぎみ。


   校歌ダンスと閉会式がある。

   やがて大運動会も式も終わって解散になったり、千里は小口におぶられて帰っていく。

小口家・千里の部屋
   ベッドに横たわっている千里。

珠子「驚いたわ、せんちゃん大丈夫?」
千里「うん…ごめんよ、カッコ悪いとこ見せちゃったね…」

   痛そうに顔をしかめる。

千里「でももう、大丈夫だよ…」
小口「無理するんじゃない、まだ痛いんだろ、千里…」
千里「…ママ…」
珠子「なぁに、千里…」

   千里、顔を真っ赤にして

千里「あのさ、あのね…ママ…」

   呼び鈴。

千里「?」
珠子「あ、誰か来たわ。せんちゃん、ちょっと待っててね…」

   出ていく。

珠子「パパでよかったらパパに聞いてもらいなさい。」
小口「千里、どうした?話してみなさい。」
千里「あのね…パパ…あのさぁ…」

   耳打ち

小口「なんだ、そんなことなら早く言ってくれればいいじゃないか。」

   背を出す。千里、おぶさろうとする。

珠子の声「はいぃ、あらまぁ後藤君に小平君、いらっしゃい。」

   千里、ギクリとして肩から手を離し、再び横になる。

小口「千里、大丈夫なのか?」
千里「うん…後でいい…」

   そこへ珠子

珠子「せんちゃん、後藤君と小平君が来てくれたわよ。」
千里「本当に?入って…」

   まもなく。後藤、小平、そして丸山が入ってくる。

千里「みんな…」
後藤「千里、心配したぜ。大丈夫か?」
千里「うん、ありがとう…僕は大丈夫だよ…」
小平「何が大丈夫だ…お前、すげぇ痛そうな顔してんじゃん。」
千里「本当は…凄く痛い…」

   痛みに涙をこらえる。

小平「骨折か?」

   千里、首を降る。

千里「いや、ただ擦りむいただけさ…でも、ちょっと深いからズキズキするだけ…」

   丸山を見る

千里「君は…丸山君、君も来てくれたんだね。ありがとう。」
丸山「僕も心配したよ…君、ピラミッドの頂上から転落して」
千里「ごめんよ、みんなに心配かけたね。」
丸山「これ、」

   包みを渡す。

丸山「僕ら三人からのお見舞い。早く元気になれよ。」

   微笑む。

丸山「トマトのクッキーなんだけど…食べれるか?」
千里「トマトの?」

   満面の笑み

千里「僕、クッキーもトマトも大好き!!ありがとう。早速食べていい?」
後藤「もちの、」
小平「ろんだ。」

   千里、ルンルンとあけだす。

千里「うわぁ、美味しそう、頂きまぁーす!!」

   小口、微笑んで退室。そこへ珠子。

珠子「はぁーい、みんなお茶よ。どーぞ。」
丸山、小平、後藤「あ、叔母さんありがとうございます!!」

   四人、わいわいとお茶をしだす。

後藤「千里、お前、足擦りむいてるだけで他はどこも悪くないんだろ?」
千里「うん、勿論だよ。」
小平「そりゃ良かった。…でも、今日の短距離走のお前は格好良かったぞ。あれは、一位よりも格好いいや。」
後藤「あぁ…弱虫のお前が転んでも泣かずに最後まで又走り出す…偉かったよ。」
丸山「あぁ。千里君、君ももっと自信持ちなよ。」

   千里、赤くなって照れながら笑う。 


   時間がたつ。千里、ベッドに座って起きながらみんなと話をしているが、顔をしかめて体を動かす。

後藤「ん、どーした千里?何か変か?」
小平「具合悪い?まさか、気持ち悪い、吐いちゃいそうか?」

   千里、首を横に降る。

丸山「大丈夫?」
千里「トイレ…」

   もじもじ

千里「実は…運動会中ずっと我慢してたの…」
後藤「マジか?」

   目を見開く。

後藤「バカだなお前、じゃあひょっとして…」
千里「学校では一度もしてない…」

   泣きそう

千里「もうもれちゃうよぉ!!」

   三人、驚いてキョロキョロ

小平「トイレまで一人で歩けるか?」
千里「うん…」

   三人、其々に千里を支えてベッドから立たす。


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