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石楠花物語小学校時代
マラソン大会での大ピンチ

柳平家・麻衣の部屋
   千里と麻衣がトランプをしている。
 
麻衣「はい、上がった!!」
千里「あー、又僕が負けちゃったな…」

   トランプをしまう。

麻衣「あ、ほーいやせんちゃん、」
千里「何?」
麻衣「もうすぐ音楽会と学芸会があるわね。」
千里「本当だ!」
麻衣「音楽会の希望楽器、もう決めてある?」
千里「僕は勿論ピアノに手をあげたいな…君は?」
麻衣「んー、私は、オルガンかアコーディオン。」
千里「アコーディオンかぁ、それも格好いいな…で、学芸会は?何をやるの?」
麻衣「さぁ?まだ決まっていないけど…明日辺り決めるんじゃない?」


豊平小学校・教室
   河原先生が黒板を書いている。

河原先生「では、これから学芸会の演目の役決めをしたいと思います。演目は…これ、」

   書いている。

河原先生「各グループの描いてくれた物語の中から投票で選ばれた一班の書いた“スイートジャック物語”をやりたいと思います。では、」

   次々と役が決まっていく。

河原先生「まだ手をあげていない人もかなりいるわね。ではまず最後を行きましょう。桃太郎を希望する方…」

   千里含め、多くの人が手をあげる。

河原先生「では、じゃんけんね。次、鶴美姫…」


   役決めが終わる。

河原先生「では、続いては音楽会の…」


同・玄関
   放課後

麻衣「でも凄いに、せんちゃんが勝っちゃった!二つとも主役を勝ち取っちゃうだなんて。」
千里「いやぁ、てへへ…君こそ…」

   赤くなって麻衣を見る。 

千里「良かったね、オルガンやるんだね。」
麻衣「あんっ!!」
千里「それとぉ…鶴美姫…」
麻衣「えぇ。せんちゃん、主役同士一緒に頑張ろうな。宜しくなして。」
千里「こちらこそ…」

   震え上がる。

麻衣「どうした?大丈夫?」
千里「いや、ただ何か想像しただけで主役なんてドキドキしてきちゃって…へへっ、」

   笑う。

千里「どうしよう、麻衣ちゃん…」
麻衣「リラックス、リラックスだに、せんちゃん。」

   学校を出て歩いていく。

麻衣「せんちゃん…大丈夫?」
千里「大丈夫、大丈夫…」

   掌に何かを書いている。

麻衣「バカね、まだ学芸会は先じゃないの?何緊張しとるんよ。」
千里「だってぇ…」

   もじもじ

千里「麻衣ちゃん、おしっこ!!」
麻衣「えぇっ!?」
千里「緊張してたら急にしたくなっちゃったよ!!」
麻衣「お家まで我慢できる?」
千里「もうもれちゃう…ごめんっ!!」

   二人の歩いている畑道。千里、その場でお尻を出す。麻衣、きゃっと赤くなって手で顔を覆う。

麻衣「んもぉっ、ズボン下ろさないでよ、千里くんのエッチっ!!」

   千里も真っ赤な顔をしてばつが悪そう。


   二人でそのあと、空き地で練習をしている。


空き地
   読みあわせをする麻衣と千里。そこへ掛川、知晃、恵美子、田苗。

麻衣「あ!」
掛川、知晃、恵美子、田苗「おーいっ!!」
千里「あ!おーいっ!!みんなも一緒にやろうよぉ!!僕ら今、演劇の練習をしているんだよぉっ!!」

   全員もかけてくる。

豊平小学校・体育館
   午前中、音楽会が行われている。はじめは合唱。その後は合奏。千里はピアノ、麻衣はオルガンをやっている。親御さんたちはみんな、我が子にカメラやビデオを向けて興奮している。


   麻衣たちのクラスの演劇発表が始まる。

アナウンス「続いては、4年2組による演劇“スイートジャック物語”です。それでは宜しくお願い致します、どうぞ。」 

   桃太郎役の千里、鶴美姫役の麻衣も堂々と演じている。千里は緊張しつつも立派に演じきる。


   終わる。カーテンコールで大拍手。千里、歓喜余って泣き出す。麻衣、微笑みながら千里を慰める。


空き地
   放課後。ランドセルを背負ったままで土管に座る麻衣と千里。

麻衣「良かったに、せんちゃん。」
千里「ありがとう…良かった、トイレ心配してたけど行きたくならなかった。」
麻衣「大丈夫よ、あんたは本番に強いの。だでさ、これからも色々…自信持ってな。」
千里「うんっ、ありがとう…」
麻衣「あんたったら、カーテンコールで泣いちゃって…。桃太郎さんは泣かないんよ。ふんとぉーに、泣き虫桃太郎さんね。」
千里「だってぇ…そんなに言うなよ…」

   二人、笑いながら立ち上がる。

千里「でもな…あーあ…休み明けはテストとマラソンか…憂鬱だな…。」
麻衣「大丈夫、自信持ってな。今日の事を忘れなければ大丈夫よ、あんたは本番に強い。マラソンの練習だってあれだけずっとやって来たじゃないの!!だで、な。あんたなら出来るに。無理せずに頑張ってな。」
千里「あんっ!!」
麻衣「ほれなら、走ってお家まで帰りましょうか?」
千里「よーしっ、僕負けないぞぉっ!!」
麻衣「位置について…」
千里「よーいっ、」
二人「ばんっ!!」

   空き地から思いっきり走り出す。


柳平家・麻衣の部屋
   麻衣、必死こいて勉強をしている。そこへ紅葉。

紅葉「はいっ、麻衣さん頑張っているわね。おやつ食べながらやりなさい。あんまり紺詰めすぎないようにね。」
麻衣「ありがとう…」

   紅葉、微笑んで退室。


小口家・千里の部屋
   千里と小口。千里、小口にしごかれて叱られながら泣きべそをかいて勉強をしている。

小口「だから何度言えば分かるんだっ!!そこはそうじゃないって何度も言ってるだろう!!」
千里「ごめんなさい…ごめんなさい…だって、分からないものは分からないんだよぉパパぁ!!」
小口「お前が嫌々やっていて聞く気がないから分からないんだろう!!」

   そこへ珠子

珠子「ちょっと、あまりせんちゃんに厳しくしないでね。それと、そんなに大声を出したら、折角寝かし付けたのに、又忠ちゃんと頼ちゃんが起きちゃうでしょ、気を付けてね。」
小口「悪い珠子、ついつい私も感情的になってしまう癖がどうもあるようだ。」

   千里、机に突っ伏せてしくしくと泣き出す。

小口「千里ごめんな、パパついつい又興奮して感情的になってしまったね。」

   体を擦る。

小口「ほら、ママが美味しいおやつを持ってきてくれたよ。一休みしよう。な。」
千里「だって…だって、僕、僕…」

   わっと泣き出す。

千里「バカだから分からないんだもーんっ!!」
珠子「せんちゃん、泣かないの。ほら、もう泣いちゃダメ。ね。せんちゃん、焼きいも好きでしょ?ほら、焼きいも食べて元気になってね。」
千里「んん…」

   涙を脱ぐって焼きいもを鵬張る。

千里「美味しい…」

   弱々しく微笑む。

千里「パパ、ごめんなさい。又食べたあとも教えてくれる?」
小口「あぁ…パパこそごめんな。」 

   千里の頭を撫でる。

小口「今度はゆっくりやっていこうな。パパもう怒鳴らないから、安心してな。」
千里「うんっ…僕、今度のテストこそいい点とれるように頑張るよ。」
珠子「今年のテストもあと二回ですものね…。せめて五十点はとって貰いたいものだわ。」
千里「はいっ。」

   三人、お茶をしながら笑ってお話をしている。


小口「それでは千里、ボチボチ始めるか?」
千里「うんっ、その前に…」

   小口、察する。

小口「勿論いいよ、早く行ってきなさい。勉強中でも遠慮しないでトイレいっていいんだからね。」
千里「うんっ、ありがとう…パパ。」

   慌てて部屋を出ていく。珠子と小口、顔を見合わせてくくっとわらう。


豊平小学校・校庭
   全校生徒が集まっている。全員、体操着。

麻衣「あ、せんちゃんおはよう。」
千里「麻衣ちゃんおはよう、」
麻衣「まず最初はマラソンね。頑張ろうな。」
千里「うん…寒いね…」

   震える。

千里「僕足遅いんだ…どうせビリだ。」
麻衣「ほんなよいいんよ、私だってマラソンは苦手。いいに、あとから二人でゆっくり走ろう。」
千里「うんっ!!ありがとう、麻衣ちゃん。」

アナウンス「それではこれより、大マラソン大会を始めたいと思います。位置について、よーいっ…」

   ばんっ!!
   全員が一斉に走り出す。早い人はとても早い。

   麻衣と千里、並んでローペースで走っている。高学年は往復二キロ。

千里「?」

   走りながら首をかしげて顔をしかめる。

千里(何か…こんなときに…どうしよう…)

   麻衣はにこにこと壮快に走っている。

麻衣「寒いけどせんちゃん、走ってればだんだんに暖かくなるな。朝の空気は気持ちい。」
千里「うん、そう…だねっ…」

   不安そう

千里(大丈夫だよね、学校まで我慢できるよね。)


   折り返し地点。

千里(ふうっ、)

   立ち止まる。

麻衣「ん、どうした?せんちゃん、」
千里「いや、何でもない…ただ何か、トイレ行きたいなぁなんて…」
麻衣「大丈夫?あともうすぐ学校だに?我慢できる?」
千里「うんっ…大丈夫、大丈夫…」
麻衣「急いでっ、はしろ。」
千里「うん…」

   二人、二度走り出すが所々で止まる。

麻衣「せんちゃん、あともうちょっと…もうちょっとだで頑張ってな。」

   そこへ河原先生、栗平先生も走ってくる。

河原先生「君たちまだいたの?もうみんなはゴールしてるわよ。」

   千里、相変わらず。

河原先生「ん、千里くん、どうかしたの?」
麻衣「彼、トイレ行きたいんだって…」
河原先生「大丈夫?ゴールまで我慢できる?」
千里「はい…はいっ、大丈夫です…」

   よたよたと走っているが、下腹を押さえ込んで止まってしまう。

栗平先生「どうした?大丈夫か?もう出ちゃうか?」
千里「先生、もうもれちゃうよぉ…」

   千里以外の三人、驚いてキョロキョロ

河原先生「では千里くん、あそこを入っていくと一、二年生のトイレがすぐにあるから、もう外履きのまま入っちゃっていいからそこをお使いなさい。」
千里「はいっ、ありがとうございます。」
河原先生「そこまでは我慢しなさいね。」

   千里、冷や汗をかいて泣きそう。
 
河原先生「トイレ出たら教室に来なさい。遅刻は今日は許します。」
千里「はいっ、」


   校舎につくと千里、急いで言われた入り口を入っていく。


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