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石楠花物語小学校時代
登場!鬼の叔母さん夕子
  しばらくご。

千里「はぁ、食べた食べた…少し食べ過ぎちゃったかな…?」

   ごろんと横になるが府と起き上がる。

千里「っと、こんなことしている場合じゃないや!!始めなくっちゃ!!」

   ピアノにスタンバイしてバイエル一番から弾き始める。


   二時間後、まだバイエルを余裕そうに弾く。

千里(懐かしいなぁ…この辺は簡単だぁ。)

   5時間後、ツェルニー30番をやっている。 

千里(ふーん、6年分って続けてやると結構早く終わるんだな…)


   演奏はどんどんと進む。

千里(よしっ、練習曲はもうすぐ終わるな…) 


   7時。

珠子の声「せんちゃん?パパ帰ってきたからご飯にするわよぉ。」
千里「うん、でも先食べてて!!後少しで終るんだ。」


同・台所
   頼子、小口が食卓につく。珠子は忠子にお乳を飲ませている。

小口「千里は?まだピアノを弾いているのかい?」
珠子「えぇ、何か学校のわがまま研究っていう宿題なんですって。」

   話している。

珠子「それでせんちゃんはピアノ何曲弾けるかな?ってやつをやるっていって。」
小口「ほー。でも、千里がこれだけ学校の宿題に精を出してやるなんてとてもいいことじゃないか。珠子、ご飯を後で千里の部屋へ持っていってあげなさい。」
珠子「えぇ。」

   千里、微笑んでルンルンとピアノを弾いている。


   それから更に3時間後の22時。千里、練習曲の最後の曲を終わらす。

千里「はぁーっ、やっと終わったぁ!!そう言えばママ、さっきご飯持ってきてくれたよな。」

   お腹がなる

千里「はぁーっ、もう僕お腹すいたや。手を洗ってきてたーべよっと。」

   ピアノの椅子から立ち上がるが、がくりと床へ崩れ去る。

千里「ふっ…」

   手をしっかりと下腹へ押さえ込む。

千里(どうしよう…演奏に夢中になってトイレに行きたいの…わ、す、れ、て、た…)

   冷や汗をかいて大声

千里「ママぁ!!ママぁ!!」

   シーンとしている。

千里「ママぁ!!僕の部屋へ来てよ、ママったらぁっ!!」

   泣き声。

千里(もうこんな時間だもんな…寝ちゃったのかなぁ…)

   よろよろと立ち上がってゆっくり歩いて部屋を出ていく。


同・トイレ
   洋便器の前。立ったままおもらしをしてしまっている。  

   廊下に珠子
 
珠子「せんちゃん?何?呼んだ?今折角頼ちゃんと忠ちゃん眠ったんだから少し静かにしてよ。あら、せんちゃん?」

   千里の部屋にはいる。

珠子「せんちゃん?」

   千里、トイレから弱々しく泣き声をあげる

千里「ママぁ…」
珠子「せんちゃん?」
千里「ママぁ…」
珠子「何処?」
千里「ここ…トイレ…」

   そこへ小口も起きてくる。

小口「何事だ?どうしたんだ珠子、」
珠子「何か、せんちゃんの声は聞こえるんだけど…」
小口「トイレじゃないか?」

   トイレのドアを開ける。

小口「千里、どうした?…千里っ?」
千里「パパ…」

   泣き出す。

千里「おしっこもれちゃった…」
小口「おやおや、どうして行きたくなったときにトイレ行かなかったんだい?」

   泣く千里を抱き上げる。

小口「よしよし、大丈夫だから。もう泣くな。いつも言ってるだろ?今度からはおしっこしたくなったら我慢できなくなる前にトイレへ行くんだよ。」
珠子「おもらししちゃったの?」
小口「あぁ珠子…ちょっとお風呂場に行ってくる。千里、行こう。」

   抱き上げたままお風呂場に連れていく。


同・浴室
   ズボンとパンツを脱がされた千里、まだ者繰り上げている。小口、千里の下半身をシャワーとボディーソープで洗っている。

小口「どうせ千里のことだ、ピアノに夢中になっておしっこしたいの忘れてたか?」
千里「うん…」
小口「そうか…ご飯は?ちゃんと食べたか?」
千里「うん…これから食べる」

   シャワーを止める。

小口「そうか…はい、綺麗になった。ご飯しっかり食べたらパジャマになって早く寝なさい。」

   タオルで拭いている。

小口「全く、お前ももう11歳なんだから、家にいればいつでもトイレ行かれるんだから。もうおもらしは勘弁してくれよ。お前だってその度に嫌だろ、気持ち悪いだろ。」

   まだ泣く千里を部屋へ手を引いて連れていく。


豊平小学校・教室
   一ヶ月後。発表が行われている。

麻衣「まとめ…私が一ヶ月間、ワガノアメソッドに添ってバレエを踊ってみて…」

   説明をしている。

   拍手

河原先生「はいっ。麻衣ちゃん、ありがとうございました。次、千里君。小口千里君お願いします。」
千里「は、はいっ…」

   緊張して堅く黒板前に出てくる。
 
千里「僕は、僕は、ピアノ何曲弾けるかなという研究をしてみました。これは、僕がピアノを習い初めてから今までの曲を一日に何曲引けるか、又今日までにピアノ曲が全部で何曲、ノンミスで弾けるかを僕の根気、意欲、集中力、そして学習、練習能力を調べてみました。」

   発表を続ける。
 
千里「まとめ…僕ははじめの日、あまりにも意気込んで、ピアノを弾くのに夢中になり、トイレに行きたいのを忘れて弾いてしまい、結局、トイレの前でもらしてしまい、トイレまで間に合わなかったことがあります。」

   照れて恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら話している。クラスからは笑いが起きる。

   終わると拍手。

河原先生「千里君、ありがとう。でも、トイレはもらしちゃう前に、行きたくなったら行きなさいね。」

   クラスからは又、笑いが起きる。千里、真っ赤になって下を向きながら席に戻る。

   麻衣、微笑みながら千里に手を叩く。千里、更に真っ赤になる。


同・トイレ
   放課後。千里、ズボンを上げながら男子トイレから出てくる。女子トイレからは麻衣。

麻衣「あ、せんちゃん」
千里「麻衣ちゃん、」

   二人、並んで帰る。

麻衣「今日は午後練ないで、一緒に帰ろ。」
千里「うんっ!!」
麻衣「でもみんな、研究途中に色々なハプニングがあったんね。」
千里「え…」
麻衣「せんちゃんは、おしっこおもらししちゃったのね…」
千里「…うんっ…」
麻衣「私だって、ずっとバレエシューズ履いてたせいで今足がとっても痛いし、レオタードでやったもんでこの晩秋に冷えちゃってトイレ近くなっちゃうし、調子に乗って変な体勢したせいで、床擦れ。」
千里「と、床擦れ?」
麻衣「ほ、床擦れ…痛くて痛くて…」

   お尻を擦る。

麻衣「次はいよいよ音楽会と学芸会よね。やっと私達の得意分野だ!!頑張るにっ!!」
千里「うん!僕、遠足が無くなって本当に良かったよ。」
麻衣「ほーね。結局雨が続いて天気不安定だったもんで延期が中止になったのよね。」

   校門を出て帰っていく。

麻衣「せんちゃん、この後遊ばない?」
千里「うんっ!!」


小口家・居間

千里「ただいまぁ!!」

   千里、玄関を上がる。玄関には豹柄の細くて高いハイヒールと白のスニーカー。

千里(ん、誰かお客さんが来ているのかなぁ?)

   鞄を部屋に放り投げて居間へと走っていく。

千里「ママぁ?僕お腹すいたよぉ。おやつ何ぃ?」


   居間には、源夕子、源洲子、珠子がいる。千里、固まる。

千里「お、お、お…叔母さんっ…」
夕子「おや千里、帰ったのかい?久しぶりだね。」
千里「どう…して?」
珠子「あら、せんちゃん。」

   にっこり

珠子「来年は、ママが諏訪へ戻ったらねぇ?暫く夕子叔母さんと洲子叔母さんが一年間一緒に住むことになったのよ。賑やかになっていいわね。」
洲子「千里ちゃんね、」

   微笑む。

洲子「大きくなったわねぇ。叔母さんの事覚えてる?」
千里「はい、ご無沙汰しております。千里です。」

   丁寧にペコリと頭を下げる。

千里「洲子叔母さんと夕子…叔母さんでしょ?」
夕子「千里、どうして私の事だけちょっと嫌そうに言うんだい?」
千里「そんなことないよ!!嫌そうになんて言ってないよ!!あ、ママ…」

   珠子を廊下に連れ出して

千里「叔母さんたちに、何か僕の変なこと話してないだろうねぇ?」
珠子「変なこと?えぇ、安心して、何も話してないわよ。」

   千里、胸を撫で下ろす。

珠子「ただちょっとせんちゃんに関して心配なことを色々と相談してただけよ。ほら、夕子叔母さんは塾の先生で、洲子叔母さんは看護婦さんでしょう?」

   千里、青くなる。

千里「ま…まさか…」
珠子「せんちゃんのおねしょが中々止まらないことと…最近はしてないみたいだけど…。おもらしばかり家でしちゃうことと、勉強をちっともやらなくて点数が上がらないことをよ。」
千里「んがぁーっ…!!!」

   愕然として頭を抱え、とぼとぼとして部屋へと入っていく。

夕子の声「千里っ、これっ!!今母さんから聞いたよっ!!あんたって子は全く…遊びに行く前にきちんと宿題をおやりっ!!もうすぐテストだって言うじゃないか!!サボっちゃいけないよ。私のいる限りはビシバシ厳しくなってお前をしごいて鍛え直すからねぇっ!!覚悟をおしっ!!」
千里「はいぃっ…」

   頭を抱える。

千里(はぁぁっ…来年か…。)

   ため息。

千里「洲子叔母さんはいつもとっても優しくてお小遣いくれるから大好きなんだけどな…夕子叔母さんまで一緒だなんて…夕子叔母さんは、僕がまだ幼稚園の頃からうるさくて厳しくて恐いんだよなぁ…嫌だなぁ…」
夕子の声「千里っ!!これっ!!今なんか言ったかい?」

   千里、びくり

千里「いぇぇっ、別に何もいっていませんっ!!」

   そっと部屋に逃げ帰り、部屋のカーテンを開けてバルコニーに出る。家は三階にある。

千里(よしっと…一か八かだ…ここから逃げ出してやれっ!!)

   非常バックの中からロープを取り出して、格子と腰にくくりつける。

千里(いこうっ…)

   格子を出て、ロープに捕まる。

夕子の声「これっ!!千里っ!!今何しようとしてる?逃げようとしたって無駄だよつ!!」
千里「うわぁっ!!」

   ロープから思わず手を離してしまい、庭の植え込み花壇の中にすっぽりと埋まってしまう。花壇では管理人が水やりをしていて、千里は泥々のグショグショになって目を回してそのまま倒れ込んでいる。

同・奥間
   千里がしょぼんとして座らされている。珠子、夕子、洲子がいる。

夕子「千里っ!!」

   腰に手を当てる。

夕子「全くお前って言うこは!!私が来て早々ごたやらかしてっ!!どうしようもない子だねぇ、何であんな三階の窓から逃げようとした?えぇっ、言ってみな!!」 
千里「それはぁ…」

   口ごもってもじもじ。体はまだ泥々。

千里「そのぉ…」
洲子「姉さん、千里ちゃんが少しかわいそうじゃないか。子供なんだから遊びたいのは当然だよ、多目に見て…」
夕子「クニは黙ってなっ!!全く…姉さんといい、クニと言い千里を甘やかせ過ぎなんだよ!!」
珠子「だってせんちゃんは私の可愛い…」
夕子「だからこそ厳しくするべきなんだ。私にとっても千里は可愛い甥なんだ。まだ私ゃ結婚もしてなけりゃ子供もいないからね、千里は息子のように可愛いんだよ。でもねぇ、だからこそ、私はこの子にちゃんとした立派な男らしい男になってほしい…それで厳しくてしてるんだよ。」
千里「叔母さん…」

   夕子、千里をキッと睨む。

夕子「分かったかい、千里?」
千里「はい…ごめんなさい…」
夕子「なら千里、どうして逃げようとしたか言ってみな。」
千里「はい…」
   
しょぼんとしてしたをむいたまま

千里「時間で、麻衣ちゃんと遊ぶ約束していました…だから…」
夕子「麻衣ちゃん?」

   キョトン

夕子「誰だそりゃ?」
珠子「せんちゃんのクラスメートよ。同時期に転校してきて仲良くなったの。ね、せんちゃん。」
千里「うん…」
夕子「だったら先に宿題やっえからおいきよ。」
千里「後でやるつもりだったんだ!!無理だよぉ、だって今日なんて全教科山ほどあるんだよ?とてもじゃないけど終わりっこないよ!!」
洲子「姉さん、」

   千里を慰めるように肩を擦る。

洲子「一日くらいいいじゃないの、ね、千里ちゃんは嘘つくような子じゃないし真面目な子ですもの、後でちゃんとやるのよね?」
千里「うんっ、帰ったら夕食前にきちんとやるよ…」
洲子「ほら、」

   夕子、鼻をならす。

夕子「仕方ないねぇ…しょうがない今回だけは見逃してやる。ただし今回だけだよ。」

   千里を見る。

夕子「ほれっ、遊びにいくんだろ?早くお行き。門限は五時だからね。一分でも遅れたら閉め出すからね。覚悟をおしっ!!」
千里「分かった、必ず戻るよ。叔母さんありがとね。」

   急いで出ていく。

千里「いってきまぁーすっ!!」


夕子「やれやれ、あんたらの甘やかしぶりにはいつもお手上げだよ…でも、もうすこし確りして送れ。甘やかしてばかりじゃあの子のためにもならないんだよ。」
珠子「分かったわ。でもせんちゃんは繊細で凄く傷付きやすい子なの。夕子も気を付けてね。」


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