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石楠花物語小学校時代
千里、臨海学習での大失敗

尖り石縄文公園・遺跡前
   麻衣が復元住居の前にいる。そこに涙をぬぐいながら千里。

麻衣「あ、せんちゃんだ!!おーいっ。」

   千里、慌てて平然を装う。

麻衣「せんちゃん?どーゆーだ?泣いとる…叱られたの?何を?」

   千里、大きく首を降る。

千里「怒られてないの…怒られてないのに…臨海学習のお話を色々してたら涙出てきちゃって…」
麻衣「臨海学習に行くのが嫌なの?」

   千里、又も大きく首を降り続けている。

麻衣「ほっかほっか、よしよしよし…」

   千里を抱き寄せて慰める。


   暫くして、

千里「ありがとう、ごめんね。もういいよ。」
麻衣「ほ?落ち着いて良かった…」

   千里の手をとる。

麻衣「ほいじゃあ私とちょっとお散歩するか?この公園の中を回ってからちょっと、三井の森の方へ行ってみまい。」
   
   二人、走っていく。


同・公園内
   二人、まるでデートのように散歩をしている。園内には掛川が一人でアイスを食べながらゲームをしている。

麻衣「あ、かけちゃんだ。ゲームしてるよ、こんなところで。」
千里「本当だ。」

   掛川、二人に気がつくと悪戯っぽく笑って去っていく。

千里「あーあ、逃げてっちゃった…」


三井の森
   散歩をする二人。楽しくお喋りをしている。


   暫くして、千里が立ち止まる。

麻衣「ん?千里君?」
千里「おしっこ…」
麻衣「えぇ?この辺にはないに…ちょっと待って、我慢出来る?」
千里「うん…」

   麻衣、トイレを探しながら歩いている。

麻衣「まだ大丈夫?もう少しでさっきの公園に戻ってくるに。ほーすれば考古館で…」
千里「ごめんっ、もうだめかも…ここでする。」

   ズボンを下ろす。

千里「麻衣ちゃん、こっち見ないでね…」

   麻衣、そっぽを向く。

千里「僕がお外でおしっこした事、誰にも言わないでね。」
麻衣「分かっとる、秘密。いわんに。」

   千里、用を足し終わる。

千里「もういいよ、はぁスッキリした。」
麻衣「んもぉ、さっき考古館でどいで済ませんのよ。」
千里「だってさっきはまだしたくなかったんだもん…急にしたくなったんだもん…」
麻衣「恥ずかしい子…でもあんた、子供で良かったわね、まだ。」
千里「うん、そうだね。」

   恥ずかしそうに頭をかく。

千里「でも、絶対に内緒だよ。僕がまだおねしょしてることも…」
麻衣「え?」

   千里、慌てて口を押さえる。麻衣、フフっと笑う。

麻衣「大丈夫よ、どちらも黙っとくわ。」
千里「ありがとう…」

   伸びをする。

千里「今日はひやひやしてたけど…河原先生に怒られなくって良かったよ…」

   二人、又楽しくお喋りをしながらキロを歩いていく。 


豊平小学校・教室
   六月の始め。

河原先生「さて、明日はいよいよ臨海学習です。これより、持ち物検査を…」

   持ち物検査をしている。河原先生、一人一人の席を回る。

河原先生「あら、麻衣ちゃん、これは何?」
麻衣「酔い止め薬です。私、乗り物酔いが酷いので…」
河原先生「そう、分かりました…で?」

   千里の机を見る。

河原先生「千里君、この袋に入ったものは一体なんです?」
千里「これはぁ…」
河原先生「先生に見せれないものなの?いいから、お出しなさいっ!!」

   千里、頑なに隠し持つ。顔は真っ赤。

河原先生「千里君っ!!その袋は先生が没収致しますっ!!こちらによこしなさいっ!!」
千里「駄目ですっ。これは僕が持っていかなければならない、どうしても必要なものなんです?」
河原先生「何?疚しくないものなら見せれるはずでしょ?」

   千里から無理矢理袋を取り上げる。

千里「あぁっ!!」

   河原先生、中を見て、千里を見て、交互に見る。

河原先生「千里君…これは?」


同・会議室
   河原先生と千里のみ。話をしている。河原先生、静かに千里にお説教。千里、しくしくと泣き出す。


小口家・玄関先
   珠子と河原先生。

河原先生「お母さん、本当に申し訳ございません…又も千里君を泣かせてしまいました。」
珠子「いえいえ、大丈夫です。この子は泣き虫だからすぐに泣いてしまって…もっと強い子になってもらいたいと私も思っています…。悪いことをしたりしたらどんどん叱ってやってください。ごたな息子ですが…これからどうぞ長い目で見てやってください。今日の事はこそこそとしてた息子が悪いのですから…」

   話をしている。千里、壁の影に隠れて二人のやり取りを見つめている。

 
同・千里の部屋
   その夜。ベッドの中の千里。

千里(あーあ…明日がいよいよ臨海学習か…嫌だな…) 

   電気を消す。

千里「お休み…」

   陽が昇り出す

豊平小学校・校門前
   5年生全員と其々の担任や引率の先生が集まっている。

河原先生「それでは、全員揃いましたか?」
麻衣「先生、小口千里君がまだ来ていません。」
河原先生「えぇっ?」


小口家・千里の部屋
   珠子、小口がいる。千里、ベッドの中

珠子「せんちゃん、せんちゃん、起きなさい!もう時間よ、せんちゃん?」
千里「んー…」

   泣き出す。

千里「んー…」
小口「千里、今日は臨海学習なんだぞ?遅れるぞ、早くっ!!」

   千里、泣いて布団にしがみついている。小口、珠子、顔を見合わせる。

   しばらくしてベルがなる。

珠子「あ?はーいっ!!」 

   ドアを開ける

珠子「まぁっ!!」


   しばらくご、河原先生も千里の部屋へと来る。

河原先生「千里君?千里君、小口千里君!!」

   珠子、小口に布団を剥がされるがしがみついている。

小口「おいこれっ、河原先生迎えに来てくれたぞ。」
珠子「行かないの?具合悪い?」
河原先生「小口千里君?大丈夫ですか?調子悪いの?」

  千里、泣いたまま

河原先生「分かりました…」

   しばらくして

河原先生「このままですと、時間もありませんので私はもう行きます。」

   千里に

河原先生「千里君、では臨海学習には行かないのね?」
千里「…。」

   黙っているが、急にむくりと起き出す。

千里「先生っ…」

   急いで着替え出す。

千里「僕っ、行きます。」
珠子「せんちゃん、」
小口「千里っ!!」

   河原先生、笑う。

河原先生「全く。早くなさい。」
千里「はいっ、その代わり先生…おむつの事、許してね。」
河原先生「昨日はごめんなさいね、千里君。分かったわ、心配しなくても大丈夫よ。夜、先生がおトイレ起こしてあげるから…その事が心配なのでしょ?」

   千里、恥ずかしそうにしたを向く。

河原先生「さぁ、準備できましたね、それでは、先生の車で…」
千里「ちょっと待ってっ!!」

   駈け足

千里「先生、おしっこしてっていい?」
河原先生「どうぞ、早くね。」
千里「はいっ、」

   トイレに駆け込む。


バスの中
   走り出している。麻衣と千里、最前列で隣同士。

麻衣「せんちゃん、ギリギリ…良かった。あんた、このまま来てくれないのかと思った。」
千里「ごめんね、迷惑かけて。」
麻衣「いえいえ、何かあったら遠慮なく言ってな。力になるに。」
千里「ありがとう…」
河原先生「それでは皆さん、歌を歌いますか?」
全員「イェッサァーッ!!セルリーッ!」

   河原先生、音源をかけると、みんなで歌い出す。



愛知県
   潮干狩り、車会社見学など、臨海学習の見学が過ぎていく。


ホテル・男子大広間
   全員の中で千里も寝ている。そこへ栗平捷先生。

栗平先生「小口千里君、」
千里「栗平先生、」
栗平先生「明日はいよいよ干物体験だね。」
千里「はい…」
栗平先生「大丈夫?夜眠れそう?」
千里「あの…河原先生は…」
栗平先生「あぁ、河原先生は女性の先生だから女子大広間にいるよ、呼ぶか?」
千里「いえ…でも、」
栗平先生「心配するな、話は河原先生から聞いている。先生がちゃんとトイレに起こしてやるから。」
千里「…。」
栗平先生「じゃあな、寝ろよ。寝る前に飲むな、そして寝る前には必ずトイレは済ませろ。」
千里「はい、」

   栗平先生、去っていく。そこへ掛川

掛川「なんだ君、」

   ニヤリ

掛川「ひょっとしておねしょの心配してるの?」
千里「…」

   恥ずかしそうにうなずく。

千里「でも頼む、秘密にしてくれよ。」
掛川「分かってるよ」

   小指を差し出す。

掛川「男同士の約束だ。指切り元万。」

   笑う。

掛川「な、」
千里「うんっ、ありがとう。」
掛川「なら僕も、一回、栗平先生が君を起こす前に12時くらいに君の事起こすね。」
千里「うん、」
掛川「先生は?何時に来るって?」
千里「2時だって。」
掛川「ふーん、とにかく寝よう。な。」
千里「うんっ…」

   枕元にはペットボトルの紅茶。千里、ほんの少しだけ入ったものを飲もうとする。

掛川「だーめーだっ!!」
千里「どうしてさ?後これだけだよ?」
掛川「それだけが命取りになるんだよ。」
千里「むーっ…」

   二人、布団にはいる。


同・女子大広間
   麻衣、タミ恵、恵美子、田苗、知晃。麻衣はゲッソリ。

タミ恵「あらあら、麻衣ちゃん大丈夫かしら?」
恵美子「お言葉にお刺があるよ、タミ恵さん。」
タミ恵「ふんっ。」
恵美子「でもまいぴう、本当に大丈夫?あれからもうかなり長い時間経っているのに…夕食も食べれないで…」
麻衣「いつものこんよ、酷い乗り物酔い…」

   時々戻しそうになる。

田苗「吐いちゃいそうなの?大丈夫?」
麻衣「大丈夫、私は大丈夫よ…ほれより私、せんちゃんの事の方が心配だわ…」
田苗「せんちゃんって…千里君?…あぁっ…何で?」
麻衣「ほいだってほれ、あの子、朝からずっと泣いてたもんでさ…さっきまで元気なかったし…」
知晃「あぁ、本当に。あの子一体どうして泣いてたんだ?」
タミ恵「さぁね、私が知るもんですか!!どうせまた…」
恵美子「タミ恵様…お言葉にお刺がおありのようで?」
タミ恵「だから?」

    つんっとしている。

恵美子(何か嫌なやつ…)
田苗「あの子、繊細そうだしね…きっとなんか不安で思い詰めてたとか?」
麻衣「ほーね、遠出のお泊まり会なんて初めてだしな。」
恵美子「ホームシックにかかっちゃったとか?」
知晃「うっきゃあーっ、何かほれ超可愛いの!!」

   わいわいきゃあきゃあとしている。そこへ河原先生。

河原先生「お静かになさいっ!!もう消灯の時刻ですっ。お休みなさいっ。」 

   電気を消す。一斉に布団にはいって静かになる。


同・男子大広間
   生徒たちが寝静まっている。12時。掛川がむっくりと起きて千里を揺する。

掛川「おいっ、千里君、千里君、」
千里「んーっ?」

   薄目

千里「あぁ、かけちゃんか…何?」
掛川「もう12時だよ、トイレ行くんだろ?一緒に行こ?」
千里「トイレぇ?いいよぉ、行きたくないもん…」

   正気になる。

千里「あっ!!そうか!!」

   飛び起きる

千里「行くっ!!」  

   二人、大広間を出ていく。


同・男子トイレ
   用を足す二人。

千里「それでさ、ママが紙おむつを僕に持たせてくれたんだけど…」

   真っ赤になってしたを向く。

千里「とてもじゃないけどそんなの恥ずかしくて出来っこないよ!!」
掛川「でも、お布団汚しちゃうよりは遥かにいいと思うけどな…」
千里「まぁ、それはそうだけどさ…」


   二人、手を洗う。


同・男子大広間
   二度布団にはいる。

掛川「次も、2時間後に栗平先生が起こしてくれるから、したくなくても行くようにしろよ。」
千里「分かった…」
掛川「君のためだ。お休み…」

   寝入る二人。


   (2時間後) 
   熟睡する千里。そこに栗平先生。

栗平先生「おいっ、小口君、トイレに行く時間だ、起こしに来たぞ。」
千里「…。んー…」
栗平先生「小口君ったら、これっ、起きなさい…」

   ハッとして、千里の布団を少し捲る。

栗平先生「…っ、遅かったか…」 

   慌てて揺する。

栗平先生「小口君っ、これ小口君っ!!起きなさいっ。とりあえずは起きてまず、下着を取り替えなさいっ!!」 
千里「下着ぃ…」

   寝ぼけているがギクリとなって体を動かす。

千里「っ…何で…?」

   蒼白になり、次に泣き出しそうになって栗平先生を見つめる。

千里「先生…」 
栗平先生「大丈夫だ、大丈夫だから、小口君、とにかく君はまず下着を取り替えなさい。」

   千里、泣き出す。栗平先生、千里を抱いて慰める。

千里「ごめんなさい、ごめんなさい…」
栗平先生「大丈夫だよ、大丈夫、小口君…君は悪くないからね…」


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