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石楠花物語小学校時代
家庭訪問と臨海学習

同・男子トイレ
   千里がげっそりとして個室から出てくる。そこへ掛川

掛川「ど…したの?千里君…」
千里「お腹壊したぁ…」
掛川「はぁ?」
千里「下痢ピーだ…どうしよう、授業出たかないよ…」
掛川「授業中でもトイレ立っていいんだぜ、どうしてもって言うときは。」
千里「そう?でも…やっぱり僕、少しの間授業は休むよ…医務室いってる。何処?」
掛川「あぁ、案内するよ。一緒に行こう。僕が河原先生には言っておくからさ。」
千里「掛川君、ありがとう…」
掛川「堅いなぁ、もっと軽く呼べよ。」
千里「なら、かけちゃん。」


同・教室
   授業が始まる。

麻衣「あれ?なぁかけちゃん、せんちゃんがトイレ行ったまま戻らんのよ。見てない?」
掛川「ん、見たよ。大丈夫、僕から河原先生に言っておいたから。」
麻衣「何を?」
掛川「千里、授業暫く休むって。」
麻衣「まぁ、どーかしただ?」
掛川「医務室いったよ、急な下痢ピーなんだってさ。」
麻衣「ほう…」  

   心配そう

   一方医務室の千里は定期的にトイレに立っている。丸茂優里先生。

丸茂先生「小口千里君だったわね、大丈夫?」
千里「先生…大丈夫じゃありません…」

   不安に泣きそう

千里「僕このままどうなっちゃうんでしょう?更に酷くなるのかな?」
丸茂「大丈夫よ、千里君、そんなに心配していちゃいけないわ。気を強くお持ちなさい。」
千里「はいっ、ううっ、」

   お腹を押さえて退室

丸茂「少し薬飲ませてカイロ張ったほうがいいかしら?」


   (三時間目)
   千里、ベッドに寝ているが少し落ち着いている。

丸茂先生「良かったわね、千里君少し落ち着いた?」
千里「えぇ、ありがとうございます。大分治ってきました…」
丸茂先生「トイレは、行きたくない?お腹は痛くない?」
千里「えぇ、ありがとうございます。」

   頬を赤らめて笑う。

千里「おならしちゃった…」

   丸茂先生、微笑む。

丸茂先生「良かったわね、お腹も健康になってきたわね。どう?給食は食べられそう?」
千里「えぇっ、お陰様で…」

   少し顔をしかめる。

千里「ううっ、」
丸茂先生「千里君?どうしたの?」
千里「先生、少し気持ちが悪いです…」

   胸を擦る。

千里「ごめんなさい、もう少し寝かせてください。」
丸茂先生「大丈夫、いいわよ、ゆっくりお休みなさい。」

   千里、横になって具合悪そうに目を閉じる。


   (軈て四時間目も終わる)
   そこへ麻衣。

麻衣「失礼しますっ、せんちゃんは?大丈夫?」
丸茂先生「あなたは?柳平麻衣ちゃんね。」
麻衣「はい。友達は?」
千里「あぁ、麻衣ちゃん…」

   麻衣、千里に近づく。

麻衣「せんちゃん、給食だに?食べられそう?」

   千里、ゆっくりと起き上がる。グーっとお腹がなる。

千里「…お腹空いた…」
丸茂先生「千里君、きっと君、お腹空きすぎてて気持ちが悪かったんじゃないの?」
千里「そうかも。じゃあ先生、ありがとうございました。僕はもう大丈夫だよ。」

   麻衣と共に小粋に出ていく。

丸茂先生「調子にのって食べ過ぎたらダメよ、よく噛みなさい。」
千里「はーいつーっ。」

   丸茂先生、フフっと微笑む。

丸茂先生「さてと、私もそろそろお昼にいきますかっと…」

   白衣を脱いで出ていく。


同・教室
   麻衣、千里、掛川、タミ恵、恵美子、田苗、知晃が固まって給食をしている。

掛川「あ、千里君、君大丈夫か?治った?」
千里「うん、お陰様で!!みんなごめんね、ありがとう。」

   カツをつかんでいる。

麻衣「でもせんちゃん、ほんな油のもの食べて大丈夫?又お腹痛くなっちゃうわ。」
千里「そう?」

   残念そうにお皿に戻す。

千里「大好きなのに…」
恵美子「でも、治ってるんなら大丈夫じゃない?」
田苗「そうよ、あまり神経質になりすぎるのも良くないわ。」
知晃「私の弟なんて、下痢ピー最中にハンバーガー食べてたもん。」
タミ恵「いや、それ少しやりすぎじゃないかしら?」
掛川「でも、お前が大丈夫だって思うんなら食べろよ。心配ならもう一回トイレ行って確かめてから食べるか?」
千里「いや、いいや、大丈夫…いただきまぁーすっ!!」

   カツをキャベツと共に丸パンに挟んでかぶり付く。

千里「んーっ、美味しいっ。しゅあわしゅ。」

   両頬に手を当てて満面の笑み。ガヤガヤわいわいとしながら食べている。


帰り道
   前景の人々、全員で帰っている。

知晃「そういえばさ、今年って臨海学習だよねぇ。」
千里「臨海学習?何それ?」
麻衣「あら、せんちゃん知らん?」
恵美子「臨海学習ってのはさ、海に行って漁師のことや潮干狩り、海の仕事を色々と学ぶ社会見学だよ。」
千里「何処に行くの?」
タミ恵「さぁね、確か…日間賀島だったんじゃなかったかしら?」
田苗「南知多とか。」
麻衣「何処ほれ?」
知晃「んもぉー、まいぴうまでほいこん言うっ!」
全員「愛知県なのっ!!」
麻衣「ふーぉーん。ほーだった、ほーだった!!」
千里「愛知県ってことは…何?それって泊まりってこと?」
掛川「勿論、」

   ウキウキ

掛川「何かはじめての長距離留まり旅行…ワクワクするなぁ。」
 
   千里、不安そうに肩を落とす。

掛川「ん、千里君…君どうしたの?」
麻衣「せんちゃん?」
千里「僕…僕…」

   言葉を飲む

千里「何でもない…」

   歩いていく。

千里「じゃあ僕んちこっちだから…お先に、失礼します…。」
麻衣「ありゃ?せんちゃん?せんちゃんってば…せんちゃーんっ!!」

   全員、顔を見合わせて首をかしげる。

麻衣「どうしちゃっただ?彼?」
全員「さぁ…」


小口家のアパート・千里の部屋
   千里、机に肘をついてぼんわりとため息。そこへ珠子。

珠子「ん、せんちゃんどうしたの?ため息なんてついちゃって…」
千里「あ、ママ…」
珠子「何なの?悩み事?好きな女の子でもいる?」
千里「そんな子、僕にはまだいないよ…はぁ…っ」
珠子「どうしたの?ママに理由を話してごらんなさい。」
千里「臨海学習…」
珠子「臨海学習?あぁ、五月にあるやつね。来月ね、楽しみねせんちゃん。それがどうかしたの?」
千里「僕…行きたくない…」
珠子「え?まぁ、それは又どうして?」
千里「だって…遠いとこなんだもん…それに、それに僕は…」

   窓の外を見る。シミのできた布団が干されている。

珠子「分かった…あれね。」

   微笑む。

珠子「そんなの大丈夫よ、もしどうしても心配なら、夜先生におトイレ起こしてもらうか或いは、ママ、おむつ用意しておいてあげるわよ。」

   千里、真っ赤になる。

千里「おむつだなんて…やめてくれよママ…そんなのみんなに知られたら、たちまち僕は、笑われもんだ!!」
珠子「冗談よ、冗談。とにかく、この件に関しては恥ずかしいかもしれないけれど、先生にはちゃんと知っておいてもらわないといけないわ。だからママが連絡帳に書いておくわね。安心して。」
千里「ふんっぅ…」

   珠子、おやつを置く。

珠子「そうそう、ママおやつを持ってきたのよ。せんちゃん、これ食べて元気だしてね、いつものせんちゃんに戻ってね。」
千里「うん、ありがとうママ…じゃあ僕食べたらちょっと遊びにいってくるね。」
珠子「はーいっ、気を付けてね。」

   退室。千里は食べ出す。


柳平家・麻衣の部屋
   健司と磨子が来ている。

健司「で、何?今日ほいつを呼んであるのか?ここに。」
麻衣「えぇ、ほーだに。もう少ししたら来るっていっとったで多分もうすぐ…」

   ベルがなる。

麻衣「あ、噂をすれば来たかな?」
千里の声「こんにちはぁ…」
麻衣「はーい、どーぞ!!今開けるわぁ!!」

   千里が入ってくる。

麻衣「どーぞ。」
千里「お邪魔しまぁーす。」
 
   上がって部屋へと入ってくる。

千里「?…」

   麻衣を見る。

千里「誰?」
麻衣「あぁ、私の幼馴染み。君に会いたいって言ったもんで。」
千里「へぇー、僕の事もう話したんだ。」
健司「話したも何も…お前小口千里って、幼稚園のチビだろ?また会うなんて、何か面白れぇーな。」
磨子「君可愛いね。私は田中磨子幼稚園のユリ組だった。」
千里「うん、以前ひばりヶ丘両久保幼稚園にはいたことあるよ。数年前にも会ったよね。あの時は本当にお世話になりました。改めまして、僕は小口千里だよ。広見に住んでる、宜しくお願いします。」
磨子「おおっ、君って何か礼儀正しいんだね。」
千里「いやぁ、それ程でもぉ…」
麻衣「ほいじゃあ、みんなで何かして遊ぶか?」

   四人、わいわいとやりだす。

健司「ふーん、腹下しか…俺もたまにあるであんまり気にしないでもいいと思うよ。」
麻衣「あんたの場合はただの食べすぎ…」
健司「うっせぇーっ!!」
麻衣「とにかく、へーよくなっただら?んなら、大丈夫よ。」
千里「うん、ありがとう。」

   オレンジジュースを啜る。

千里「んーっ、おいし。ところで…君達も臨海学習ってあるの?」
健司「臨海学習?…うーん、あるかもな。磨子は?」
磨子「私のところもあるわ。麻衣ちゃんの学校もあるんね。」
麻衣「えぇ…でもどーもなんか、千里君、ほれで悩みと言うか心配事があるみたいなんよ。」
健司「心配事が?どんなんだ?話してみろよ…」
千里「別に…何もないよ、大丈夫…。」
磨子「そう?私達ももう会ったからには友達なんだからさ、何かあればちゃんといいなよ、力になるし相談に乗るからさ。」
千里「みんな…」

   潤む。

千里「うんっ、ありがとう…」

   他三人、微笑む。

健司「このバーか、何泣いてんだよ。」
磨子「君って泣き虫か?」
麻衣「何か可愛らしい子ね君って…余計に愛着持っちゃう。」

   千里、ときめいてうっとり、お花畑

千里(何かこの子って…すっごく可愛いなぁ…僕、もっと親しいお友達になりたいなぁ…)
健司「おいっ、千里っ!!」
磨子「千里?」
麻衣「千里君っ?大丈夫?一体どうしただ?」

   千里、ハッと我に返ってキョロキョロ

千里「いやっ、何でもない、ごめんごめん。」
麻衣「さ、ね。まだ一杯あるでさ。おやつの続き食べよ。ほれ、みんな食べて食べて。」
千里「ん、いただきまぁーすっ!!」

   クッキーを食べる。

千里「ん、何か麻衣ちゃんの焼いたクッキーってとっても美味しい。」
健司「だろ?ブラウニーも最高なんだぜ?」
磨子「あら、麻衣ちゃんの手料理ならなんだって最高よ!!ね、麻衣ちゃんっ。」
麻衣「いやんっ、磨子ちゃんったら、ほんねに誉めないでや。でも、良かった、美味しくできて。みんなのお口に合って。」

   麻衣も微笑んでクッキーを口に運んでいる。千里、うっとりと時々ちらりちらりと麻衣を見ている。

千里(ちっちゃかったときはあまり気がつかなかったけどな…彼女がどんな子なのか、僕もっともっと色々と知りたいなぁ…)

   ニヤニヤ

千里(これからは一体どんな毎日があるんだろ……でもずっとは彼女と一緒にはいれないんだ。何か寂しいけど…この彼女と過ごす一年を大切に、最高の一年にするぞぉっ!!)

   オレンジジュースとクッキーを夢中になって食べている。が、時々むせ混んで麻衣、健司、磨子が背を擦り、みんなで笑い合いながらもう既に打ち解けあって友達になっている。

豊平小学校・教室

河原先生「と言うことで、明日から家庭訪問です。」

   生徒たちに話をしている。


   (休み時間)

千里「家庭訪問か…嫌だなぁ…」
麻衣「まぁどいで?悪いこんがあるだ?」
千里「一年生の頃からずっとそーなんだ…」

   しゅんとする。

千里「僕がごたで出来が悪いから初めてあったばかりの先生でさえ、家庭訪問で僕を叱るんだ…だから今年もきっと…」
麻衣「せんちゃんは…いつ?」
千里「僕は…明日の午後一時から…」
麻衣「なら、終わったら一緒に遊ぼ。遊べば気が晴れるに。私は今日の夕方なんよ。」
千里「うんっ、ありがとう。」


岩波家・客間
   その頃。健司、幸恵、篠原先生

篠原先生「健司くんは、普段はどのような子ですか?」 

   色々な話をしている。

柳平家・台所
   麻衣、立ってお菓子を焼いている。

河原先生の声「こんにちはぁ、」
麻衣「あ、来た!!」


同・玄関
   麻衣が飛んでくる。

麻衣「あ、先生。こんにちは。」
河原先生「麻衣さん、こんにちは。」
紅葉「先生、まぁまぁ今年から娘がお世話になります。どうぞどうぞ、」
河原先生「では、お邪魔しますね。」
麻衣「はーいっ。」


同・和室
   麻衣、紅葉、河原先生

麻衣「はい、先生。」

   お膳を運んでくる。

麻衣「菊花茶と私の作ったヤックァです。」
河原先生「まぁ美味しそう。ありがとう…」

   食べる。

麻衣「先生どう?」
河原先生「とっても美味しいわ、ありがとう。」

   三人、微笑ましそうに食べながら話をしている。


   暫くして、先生が帰っていく。

豊平小学校・校庭
   麻衣と千里、ブランコに乗っている。

千里「どう…だった?」
麻衣「何のこんないに。ほれに河原先生ってとっても優しいし…怖い先生ではなさそうよ…」
千里「うん…」

   もじもじ

麻衣「私、お菓子焼いてお茶を入れて差し上げたのよ。先生とてもお慶びだったわ。だもんであんたも第一印象…」

   小粋にウインク

麻衣「先生にお茶を入れて差し上げたら?」
千里「お茶か…」

   麻衣を見る。

千里「でももしそれでも叱られちゃったら?」
麻衣「私んとこ来な。慰めてあげる。」
千里「うんっ。」

   二人、ブランコを降りる。

千里「あ、もうチャイム鳴るかも…ここで遅刻してたら先生に怒られちゃう」
麻衣「ええっ。」

   二人、走って校門を入る。


小口家・台所
   千里がるんるんとしてお菓子を焼いている。そこへ珠子。

珠子「せんちゃん、そろそろ先生いらっしゃるわよ、あら?」

   千里を見る。

珠子「せんちゃん、お菓子焼いてるの?」
千里「うん、先生に食べてもらうんだ。それと、」

   お茶葉を見せる。

千里「京都で買ってきた高いお茶…開けていいよね。」
珠子「はいはい。きっと河原先生お慶びになるわよ。」

   しばらくして

同・客間
   河原先生、珠子

河原先生「あら、千里君は?」
千里「先生いらっしゃい…」

   お盆を持って入ってくる。

千里「どうぞ。」
河原先生「まぁありがとう。あら、これもしかして…」
千里「えぇ、僕が焼きました。先生、食べてみて。」
河原先生「ありがとう。麻衣さんのお宅でも麻衣さんがお菓子を焼いて下さったのよ。」

   微笑む。

河原先生「では、頂くわね。」

   食べる。

河原先生「とっても美味しい…千里君はお料理が上手いのね。好きなの?こんな手の込んだお菓子をよく一人で作ったわね。」

   微笑む。

千里「はいっ。僕、お料理が大好き!!後、ピアノ、バレエ、お裁縫が好きなんです。」
河原先生「そう、」

   色々と話をしている。

河原先生「それで千里君、お母様が先日連絡帳に書いてくださったんですけど…臨海学習の事…」

   話をしだす。千里、聞きながら涙を流して受け答え。

河原先生「そんな、千里君泣いちゃった…私はあなたの事責めてもいないし怒ってもいないのよ。どうしたの?ほら、ね。涙を拭いて…」


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