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石楠花物語小学校時代
地獄のテストと音楽会
後藤「お、一部のハンサムボーイだ。」
千里「ハンサムボーイ?」
小平「あ、お前会うの初めてだっけ?こいつ、一部の丸山修くん。女の子からモテモテなんだぜ。」
千里「へー。」
丸山「宜しく。」

   爽やかに笑う  

丸山「君は、長野旅行の時に転校してきた…小口ちさとちゃんだろ?僕、丸山修。」
千里「小口千里です、」

   少し不機嫌そう

千里「宜しく…」
丸山「君音楽部なんだね。ピアノ、良かったよ。仲良くしよう。」

   握手を求める。

丸山「でも何で君、男子トイレにいるの?」
千里「いちゃ悪いかっ!!」

   向きになって大声で

千里「僕は男だ!!」

   用を足し始める。丸山、まじまじ

千里「あんまり見るなよ…」
丸山「本当だ…悪い悪い、とにかく、宜しくね。」 

   さっさと出ていく。

後藤「あいつ、幼稚園の頃から人気だよな…」
小平「そうそう。憎たらしいのに何故か憎めないやつ…」
千里「二人は、幼稚園の頃から一緒なの?」
小平「あぁ、そうだよ。」

   三人もトイレを出る。

小平「昔からあいつは…自惚れやというか、なんと言うか…」
後藤「ハンサムさにゃ負けるぜ…」
千里「ふーん…丸山修君か…」

   微笑む。

   (チャイム)

後藤「やばっ、さぁ千里急げ!!」
千里「うんっ!!」

   三人、走る。


岩波家・健司の部屋
   幸恵、健司を着付ける。

幸恵「わぁ、これにして良かったわ!!よく似合ってる、健司!!頑張りなさいね。」

   隣には悟。健司は迷惑そうに目を細める。

健司「何だよ…このへんちくりんな服は…」
幸恵「あら、何が不満だって言うの?健司がピアノやるっていうから、」
健司「たかが音楽会、たかがピアノだろ?何張り切ってるんだよ?お母さんはぁ!!」
悟「そうだよ、お母さん。たかが音楽会。タケだって嫌がってるぜ?いい加減好きなものを…」
幸恵「いいえ、小学校を卒業するまではお母さんに色々任せなさい。悟ちゃんは今年で卒業ですからね、来年からは好きにしていいわよ。」

   るんるんする幸恵とため息をつく健司と悟。  


原小学校・体育館
   音楽会が行われる。健司のクラスになる。

幸恵「健司、健司だわ!!健司のクラスよあなた!!」
岩波「幸恵、少し静かにしなさい。」

   幸恵、ビデオを構えてうきうき。やがて健司達がステージに上がって合唱が始まる。健司はよそ見ばかりしながらほぼ口パクで歌っている。

幸恵「全く恥ずかしいわあの子ったら…一体何をやってるの?」
岩波「幸恵っ!!」

   演奏に移る。健司、ピアノを弾いている。

幸恵「きゃぁーっ、健司格好いいわ!!男の子がピアノ弾くと素敵よね!!ねぇあなた!!」

   岩波、呆れ半分で見ている。

幸恵「あなたぁっ!!」
岩波「幸恵、少しは落ち着いていなさいっ。」

   幸恵の方は見ずに。

幸恵「んもぉっ。」


宮川長峰小学校・体育館
   麻衣のピアノ、音楽会が行われ、麻衣の家族、磨子の家族も微笑んで清聴をしている。


上川城南小学校・体育館
   4年2部。千里、合唱の時はとても礼儀正しく歌っている。

   演奏に、ピアノを弾き、少し緊張ぎみに、でも楽しく気持ち良さそうに弾いている。

   珠子、小口も微笑んで拍手。

同・教室
   給食の時間。全員が食べている。

千里「はぁ、良かった…無事終わった…。」
後藤「あぁ、千里、お前もよく頑張ったな…」
小平「手かお前、あんなにピアノ上手かったんだ。ビックリしたよ。」
千里「いやぁ…」
眞澄「チーちゃん…」

   まじまじ

眞澄「チーちゃん、あなた、楽譜違う楽譜で弾いたね。」
千里「え、えぇっ?」

   ドキリ。

千里「な…んで?」
眞澄「だってもらった楽譜よりも難しくチーちゃん弾いてたもん。」
千里「あ…」 
眞澄「何の楽譜で弾いたの?」

   千里、もじもじ

千里「実はぁ…」

   机から取り出す。

千里「これ…」

   班の人々、見て目を丸くする。

千里「実は僕、この曲ピアノでレッスンしたんだ。だから、音楽会の楽譜じゃ簡単すぎて物足りなかったから…だから、それで…」
全員「へぇー、すげぇ…」
マコ「君、いつからピアノ習ってるの?」
千里「ピアノは5才から…3才からバレエ…を。」
真亜子「わをっ、君バレエまでやってるんだ。すげ…っ。」
眞澄「眞澄、何だかチーちゃんに恋しちゃいそう。」

   うっとり

眞澄「そんな格好いい男の子見たの、だって初めてだもん…」
千里「ありがとう…」

   笑って再び食べ始める。

千里「もっと僕、みんなに責められちゃうかと思ったよ。」

   かにクリームコロッケパンにかぶりつく。

千里「んー、かにクリームコロッケパン…とっても美味しい!!」


原村・上里
   麻衣、磨子、健司が自転車を乗っている

麻衣「ふーん、あんたはピアノやったんか!」
健司「ほ、お母さんに立候補しろってうるさく言われて…仕方なく…」
磨子「とかなんとかいってぇ?本当はあんたも満更でもないんでしょ?」
健司「やらされたときは嫌だったけど…いい加減慣れたよ。」

   自転車で一気に下り降りる。

健司「なぁ、折角だでさ、俺んち来いよ!!」
麻衣「はーいっ!!」
磨子「イェッサァーッ!!」

   二人も健司の後に続く。

 
岩波家・玄関

健司「入れよ。」
麻衣「はぁーいっ!!」
磨子「お邪魔しまぁーす!!」

   三人、上がる。そこへ悟。

悟「あ、みんな。いらっしゃい。」
磨子「あ、悟ちゃんだ!!」

   ニヤリ

磨子「麻衣ちゃん、」

   麻衣もドキリと振り向く。

麻衣「悟ちゃん!!」

   悟、ニッコリ。

悟「麻衣ちゃんに、磨子ちゃん、いらっしゃい。二人も音楽会だったんだ。」
麻衣「はいっ!!悟ちゃんは、何やっただ?」
悟「僕?僕はねぇ…」

   四人、玄関先で笑いながら話している。

麻衣「ねぇ、悟ちゃんも一緒に遊ぼうよ!!」
磨子「そうよ、宮川の頃みたいにさ。みんなで遊べば楽しいよ。」
健司「ほーだよ、お兄ちゃん。どーせ、暇なんだろ。」
悟「うるさいっ、」

   笑う。

悟「いいよ、なら何して遊ぶ?」


同・健司の部屋
   四人、双六をしている。

悟「あ、ほーいや、」

   やりながら

悟「タケから聞いたよ。君今年は音楽部で、コンクールに出るんだって?」
麻衣「えぇ…はい、ほーです。」
悟「頑張って!!」
麻衣「はいっ!!」

   るんるん

麻衣「悟ちゃん、バレンタインデーにはチョコレートケーキ作ってあげるな。」
悟「ありがとう。僕も何かお返しするね。」

   二人、無邪気に微笑む。

健司「あー、お兄ちゃん狡い!!お兄ちゃん狡い!!!!」

   むくれる。

健司「麻衣ぃ、チョコレートケーキ…」
麻衣「分かったわ、あんたにもチョコレートケーキ作ってあげるわよ。」


奏楽堂
   合唱コンクールが行われている。

麻衣【ほんなこんなでやって来ました、合唱コンクールの日…岩波一家が見に来てくれると言っていたのに来てくれなんだ…というほの理由は…?】

   麻衣、合唱のソロを歌っている。
 
岩波家・台所
   悟、幸恵が食事をしている。そこへお腹を押さえた健司。

幸恵「ん、健司おはよう。今日は麻衣ちゃんの合唱コンクールを見に行く日でしょ?早くなさい。」
健司「お母さん…お父さん、トイレ入ってるの?」
幸恵「えぇ、」
健司「早く出てっていってよ…」
幸恵「入りたいの?」
健司「お腹痛いんだよ…」
幸恵「わかったわ…」

   部屋を出ていく

幸恵の声「お父さん、早くおトイレ出てあげて、健司が入りたいって…」
岩波「ん、分かった。ちょっと待っていなさい。」
   幸恵が戻る。 

幸恵「お父さん、もう少し待っててって…我慢してね。」
健司「うん…」

   お腹を押さえたまま固まっている。

悟「タケ、大丈夫か、お前?」
健司「お兄ちゃん…」

   岩波が出てくる。

岩波「お待たせタケ、次使っていいよ。」

   健司、苦しそうに立ち上がって歩いていく。

   暫く後、トイレを出てくる。

健司「お母さん…」

   半泣き

健司「お母さん…」
幸恵「どうしたの?」

   健司、幸恵の手を引いて部屋から連れ出す。

幸恵の声「まぁまぁ、早くお着替えなさい。」

   健司、者繰り上げている。

幸恵の声「どうしちゃったのかしら?お父さん、カイロはまだあったかしら?」

   健司の額に手を当てたりしている。

幸恵の声「健司、熱っぽかったりしない?具合悪くない?」

   岩波がカイロを持って出てくる。

岩波「どうしたのだ?」
幸恵「あぁ、あなた!!」

   カイロを受けとる。

幸恵「ありがとう。健司がお腹壊しちゃったみたいなのよ。」

   健司、まだ泣いている。

岩波「きっと冷えたんじゃないか?昨日授業で寒い部屋にいて、とっても足が冷たかったって健司言ってただろう…」

   健司を慰める。

岩波「消化のいいもの食べて少し暖まりなさい。そうすればきっとすぐに治ってくると思うよ…」
健司「うん、お父さん…」
幸恵「学校は?行ける?」

   健司、不安そうな顔をしているが

健司「ん…」

   トイレに駆け込む。

幸恵「この様子じゃとても可哀想ね…いいわ、休ませましょう…。」

上川城南小学校・教室
   音楽会の日の五時間目。千里達がテストを受けている。

千里「…。」

   真剣な顔をしながら解いている。

千里(こんなもんでいいかな?)

   チャイム

千里(くそっ、もうチャイムがなっちゃった…)
金子先生「はい、終了。それでは一番後ろの子、答案を集めて持っておいでなさい。六時間目は自習です。テストは採点をし、帰りの会で返します。以上。」

   千里、答案を集めて金子先生に渡す。

千里「起立、礼、着席…」

   其々に行動。


同・男子トイレ
   千里、後藤、小平。

後藤「千里、どうだった?」
千里「多分又最悪さ…」

   肩を落とす。

千里「一応は全部埋めては見たけどさ…きっと間違いだらけだよ…」
後藤「どんまい、元気出せよ…俺も全然だった。」
小平「俺も。」
千里「でも…僕のママとパパ、点数が悪いとすぐに怒るんだ…普段はあんなに優しいのに、怒るとすごく怖くて…」

   そこに丸山

千里「あ、」
丸山「お、又あったね。何?君たちはテストだったんだって?」
千里「そうなの…でも、全然出来なかったよ…」
丸山「そうか、何の?」
千里「算数だよ。」
丸山「算数かぁ…君苦手?」
千里「苦手だから出来なかったんだよ…」

   ため息。

千里「君は?」
丸山「僕だって得意ではないさ。君、家何処?」
千里「僕?上川…城南だよ。」
丸山「ふーん、僕は渋崎なんだ。今度、一緒に勉強でもやろう。教えてあげるよ。」
千里「本当に?ありが…」
後藤「いや、断る。」
千里「後藤君?どうして?」
後藤「結構。俺たちの方が千里とは家も近いしよく遊ぶ。勉強だって一緒によくやってらぁ!!」
丸山「あっそ。こりゃ又失礼…。」

   気障っぽく出ていく。

千里「後藤君、何で断ったの?折角誘ってくれたのに。」
後藤「ふんっ、あんなやつといりゃ…その内分かるよ。自慢話と自惚れ話ばっかりされるに決まってるさ。」
小平「そうそう、あーいってるわりにゃああいつうんと頭が良くて成績もトップなんだぜ。」
千里「だったらいいじゃん!!余計に…」
小平「だで嫌なんだよ!!お前もその内…分かってくるよ…」
千里「はぁ…そんな子じゃないと僕は思うんだけどなぁ…」

   腑に落ちないと言ったようにぐずぐずしている。

後藤「てかお前、いつまでそこでそうしてるつもりだよ?へー終わってんだろ?戻ろうぜ。」
千里「あ!!うんっ、ごめん。忘れてた。」

   慌てて手を洗って三人、小走りに出ていく。


同・教室
   放課後。帰りの会をやっている。

金子先生「それでは最後に、テストを返します。名前を呼ばれたら前へ出てきなさい。小口千里君っ!!」
千里「はいっ。」

   取りに行く。

金子先生「小口君っ、君って子は!!どうしてこうも毎回懲りずにこんな点数がとれるものですね!!」
千里「僕だって…とりたくてとってる訳じゃないもん…」
金子先生「お黙りなさいっ!!もう戻ってよし、次、後藤秀明君。」
後藤「はいっ、」

   名前を呼ばれて次々に取りに行く。


通学路
   千里一人、肩を落として歩いている。

千里(はぁ…どうしよう…又ママ怒るだろうなぁ…)

   しょんぼりとしてアパートに向かう。
小口家・玄関

千里「ただいま…」
珠子「あら、せんちゃんお帰り。」

   奥から出てくる。

珠子「今日の音楽会とっても良かったわよ!!せんちゃんにはピアノがとっても似合う、凄くかっこよかったわ。流石はママの王子様!!」
千里「てへっ。ありがとうママ…」
珠子「それで?」
千里「それで?」
珠子「五時間目、算数のテストだったみたいね…」
千里「や…」

   珠子の顔を見る。

千里「はい…」
珠子「お見せなさいっ。」
千里「はい…」

   答案を見せる。

千里「…ママ?」
珠子「せんちゃん?」

   顔つきが変わる。

珠子「ちょっと、奥間へおいでなさい…」
千里「はい…」

   しゅんとして珠子についていく。


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