[携帯モード] [URL送信]

石楠花物語小学校時代
千里、小さな悩み

原小学校・教室
   給食を食べる健司たち。健司、ご飯を全て食べ終わってにこにこしながらデザートのクレープを開ける。そこへ岩井木、西脇

岩井木「なぁタケ、」
健司「あ、徹くんに靖くん…何?」
西脇「ちょっとこっちへ来い…」
健司「ん?」

   クレープを机において連れていかれる。


同・廊下
   二人、健司を壁に押し付ける。

健司「何?何だよ…」
岩井木「お前、この前風邪で熱だして休んだっつーとき…何処行ってた?」
健司「は?何処って?」
西脇「惚けるな。学校ずる休みして母ちゃんと温泉いってただろ?僕のお母さんが言ってた…」
健司「あぁ…」

   涼しい顔

健司「あれはいつもの事なんだ。俺が熱出すとお母さんがいつもサウナに連れていってくれるんだ。そこで汗をかいて…」
岩井木「嘘こけ!!お前本当は熱なんてなかったんだろ?」

   健司はマスクをしている。

西脇「そのマスクも、本当は必要ないんじゃないか?」
健司「ふんとぉーだよ?俺が嘘言ってるとでも言うのかよ。」
岩井木「あぁ思うね。」
西脇「だって、普通熱出してサウナなんて行かないだろ…」
健司「行くもん、嘘なんてついてないもん!!」 

   泣き出す

健司「俺んちは行くんだもん!!」

   二人、おどおど

岩井木「お、おい泣くなよ…」
西脇「僕ら何も、君を泣かせるつもりじゃなかったんだ…」
岩井木「そうだよ、ごめんごめん、タケ、ごめん。」

   健司、しくしく。二人、健司を慰めている。


宮川長峰小学校・教室
   麻衣、オルガンを弾いている。そこへ磨子。

磨子「麻衣ちゃん、今年もピアノやるのね。」
麻衣「えぇ、みたい。磨子ちゃんは、アコーディオンなんね。」
磨子「うん。一度やってみたかったんだ。」

   弾く真似をする。

磨子「私もね、小さい頃は少しだけピアノやったんだけど…嫌でやめちゃった。」

   麻衣と磨子、笑い合う。

磨子「なら麻衣ちゃん、なんか伴奏してよ、私歌いたい。」
麻衣「いいに。では、」

   ピアノを弾き出し、磨子、踊りながら小粋に歌う。


上川城南小学校・保健室
   千里、後藤、小平が掃除をし、マコ、真亜子、眞澄が廊下掃除をしている。

眞澄「ねぇ、チーちゃんがピアノ出来るなんて眞澄ビックリ!!格好いいわ。なんか尊敬しちゃう。」
真亜子「眞澄ちゃん、」
マコ「シーっ。無言清掃!!」

   眞澄、ハッと口を押さえる。

千里「…。」
後藤「千里、お前はくそ真面目もいいとこだぜ?一言も喋らないだなんて…」
千里「だって…無言清掃っ」

   口を押さえる。

小平「大丈夫、大丈夫!!少しくらい喋っても手がちゃんと動いてりゃいいんだよ。」
千里「そ?」

   掃き掃除をしているが、

千里「あぁっ、僕トイレ行きたいや…何か冷えちゃったよ…」
後藤「はぁ?」
小平「そんなの掃除時間が終わってからにしろよ。」
千里「だって、集中出来ないじゃん!!」

   泣きそうにもじもじ。

千里「ごめん、行っていい?」
後藤「仕方ないやつ…」
小平「どうぞ。その代わりトイレも今は掃除中だぜ。」
後藤「一言声かけろよ。」
千里「うんっ。」

   走って出ていく。

真亜子「あれ?千里君、何処行くの?」
千里「トイレっ!!」
マコ「ふーん…トイレ…掃除中なのに?」



同・男子トイレ
   女子たちが掃除している。千里が入ると一斉に千里に注目。千里、真っ赤になる。
千里「あの…あの?」
女子「2部の千里君?」
女子「トイレ?」
女子「どうぞ。」
千里「ありがとう…」

   便器まで行くが女子たちを気にしている。

千里「…。」

   恥ずかしそうに個室にはいる。


同・個室の中
   和便器。

千里(はぁ…こんなとこクラスのみんなに知れたら誤解されるんだろうな…誤解されてからかわれるのかな…嫌だな…)

   流してトイレを出る。 

千里「ありがとう、でも…」

   口止め。

千里「絶対誰にも、言うなよ…頼む。」
女子「分かってる」
女子「安心しな、」
女子「言わないよ、黙っててあげる。」

   千里が出ていくと、女子三人、声を潜めてクスクスと盛り上がっている。

女子「転校してきた千里君って可愛いよね、」
女子「うんうん!!しかも、間近でおトイレ…」
女子「ビックリぃー!」

   きゃあきゃあ。


   (やがてチャイム)

後藤「お!終わりだな。」
小平「片付けて帰るぞ千里。」
千里「うん、さっきは」

   丁寧にお辞儀。

千里「おトイレタイム、どうもありがとうございました。」
後藤「なーに、いいってこんよ。でも掃除は?」
小平「女の子だったろ?女子の前で堂々とおしっこしたのか?」

   千里、紅くなる。

千里「うん…一部の翠ちゃんと、彩音ちゃんと、くみちゃんだった…でも、まさかっ!!流石にそれは出来ないから…」

   もじもじ

千里「個室に入りました…でも、でも、」

   慌てて

千里「絶対誰にも言うなよ!!お願いだから黙ってて!!」
後藤「あぁ…」

   きょとんとする。

小平「勿論、そんなこと誰にも言わねぇよ…?」

   6人、固まって歩いていく。


同・二階のトイレ前
   歩く6人、千里、トイレの前で立ち止まる。

後藤「ん?」
小平「どうした?」
千里「みんな…みんな先行っててっ、僕、又トイレっ!!」
後藤「ん、なら俺も。」
小平「俺もしてこっと。」
眞澄「なら私たちも、」
マコ「そうね。」
真亜子「じゃあ6人、又ここで待ち合わせ。」

   それぞれにトイレへと入っていく。


原小学校・教室
   健司たちも音楽会の楽器選考会をしている。鎌倉巻先生が黒板に書く。

鎌倉先生「では、岩波君がピアノですね。」
健司「はいっ。」

   不貞腐れる。

健司「ちぇっ。」


上川城南小学校・教室
   五時間目の授業を受ける千里たち。千里、キョロキョロ

千里(嫌だなぁ…さっきから何でこんなにトイレ近いんだろ…冷えたかなぁ?又行きたくなっちゃったよ…どうか、どうか我慢できます様に…)

   隣には眞澄、後ろには小平。前には後藤。

眞澄「チーちゃんどうした?」

   小声。

眞澄「大丈夫?」

   金子先生は退室していていない。

千里「おしっこ、おしっこ、おしっこしたい…」
小平「は、又トイレ?」
後藤「ついさっきしたばっかじゃん。」
千里「そうなんだけど…」

   貧乏ゆすりをしている

千里「何かさっきからトイレ近くてさ…」
マコ「だったら今の内に行ってきなさいよ…」
千里「いい、又先生に怒られちゃうもん…」
真亜子「我慢出来るの?おもらししたって知らないよ?」 
千里「終わるまで我慢するよ…」

   カタカタもじもじ。


宮川商店街
   下校後。麻衣、磨子が並んで帰っている。

磨子「ねぇ、麻衣ちゃん?」
麻衣「ん?」
磨子「麻衣ちゃんの好きな男の子って、まだ未だに変わってない?」
麻衣「え?」

   笑う。

麻衣「うん…私はね。」

   恥ずかしそうに。

麻衣「健司んちの…悟ちゃん…。」

岩波家・台所
   鞄を背負った健司が帰宅。

健司「あ、お母さんただいま。」
幸恵「あぁ、健司、お帰り。今日は?楽器選考会だったのでしょ?どうだったの?」

   健司、ふんっと鼻をならす。

健司「言われた通りにしましたよ。ピアノに決まりました。これでいいんだろ。」
幸恵「まぁ良かった。健司のソロ、しかと記録しなくちゃね…お洋服は?どんなのかってあげようかしら?」

   健司、ため息をついて手を洗いにいく。

幸恵「健司、おやつは戸棚の中に入れてありますからね。」
健司「はーい。」

   入ってきて椅子に乗り、戸棚を開ける

健司「わ!!」

   ニコニコと満面の笑み

健司「チョコレートケーキだ!!それと…」 

   冷蔵庫をがさごそ

健司「あったあった、オレンジジュース!!」
幸恵「今日はもうこんなに寒いのに健司、そんなもの飲むの?お腹痛くするわよ。」
健司「大丈夫、大丈夫!俺そんなに柔じゃないもん。もう今はスイミングやってるんだし。」

   テレビをつけるフェンシング中継がやっている。

健司「おぉっ…」

   夢中になる。

健司「格好いいなぁ…俺も一度はやってみたいな…」

   幸恵、くるっと振り向く。 

幸恵「健司っ、」

   健司、びくり。

幸恵「お母さん、今の言葉聞いたわよっ!!なら、やりましょう!!」
健司「え?」

幸恵「お母さん、健司のためにお教室。急いで探してあげるわね。」
   
   ポカーンとする健司。

健司「はあっ?」


上川城南小学校・教室
   
千里(トイレっ、トイレっ!!)

   時計をチラチラ

千里(あともう少し…早く終われ、終わらせてぇ、先生ぃっ!!) 

   チャイム

金子先生「なら今日は、この辺にしましょう…小口君?お願いします。」
千里「はいっ、はい」

   立つ。

千里「起立。礼。着席っ。」

   クラスメートも帰りの準備にはいる。千里、急いで教室を飛び出る。

金子先生「小口君っ、ちょっと何処行くの?」
千里「先生っ、トイレ行かせてください!!もう我慢できないの!!」

   出ていく。金子先生、鼻をならす。


上川城南・通学路
   千里、後藤、小平

千里「んもぉ、今日は僕どうしちゃったのかなぁ?もうもれちゃうとこだったよ。」
後藤「まぁ、そういう日もあるさ。俺も時々あるもん。飲みすぎたときや、寒い日とか…」
小平「授業中でも我慢できなくなる前に、行かせてもらえよ。」
千里「…」
小平「ても、お前シャイだもんなぁ…。ま、」

   肩を抱く。

小平「もらしても落ち込むなよ、しょーがないさ。」

   千里、小平を恨めしそうに見つめる。

千里「それって慰めてるの?余計に落ち込ませたいの?」
小平「いや、そんなつもりじゃないさ。」

   二人、千里を慰める。


[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!