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石楠花物語小学校時代
地区の肝試し
富士見町・おっこー会場
   麻衣、磨子、健司が踊っている。

麻衣「え、肝試し大会?」
磨子「そう。何か玉川運動公園であるらしいわよ。行ってみる?」
健司「へー、面白そうじゃん。」
麻衣「いついつ?」
磨子「えーとねぇ…」   

   そこへ赤沼収蔵

赤沼「やぁやぁ、可愛いねぇ…ここらの子?」
麻衣「いいえ、私は茅野の子。」
磨子「私も茅野の子。」
健司「俺原村。」
赤沼「そーかそーか、楽しんできなさい。何年生?」
三人「小学四年生です!!」
赤沼「小学四年生か!!」

   笑う。少しお酒で出来上がっている。

赤沼「良かったら家の連、入らんかね?一緒に踊ろう。」
麻衣「いいんですかぁ?やったぁ!!」

   三人、赤沼たちに混ざる。

麻衣「おじちゃん、これは何の連?」
赤沼「おじちゃんか?おじちゃんたちはねぇ、役場の連なんだよ。」
磨子「役場の?」
赤沼「そう、みんなの町にも市役所があるだろう。おじちゃんはこの富士見町の役場の職員なんだよ。」
健司「へぇー…」
麻衣「私の母さんも昔、市役所の人だったんよ。」
赤沼「何処のだい?」
麻衣「母さんは昔から茅野の人だもんで、茅野の市役所…今は柳平紅葉。昔は平出紅葉って言ったの。」
赤沼「そうか、」

   だんだんに打ち解けて手取りながら話をしている。


   (おわる)

麻衣「ほいじゃあねおじちゃん、ありがとう。」
赤沼「あぁ、気を付けて帰りなさい。」
三人「はいっ!!」


富士見駅
   麻衣、健司、磨子、其々にクレープやリンゴ飴を食べながら駅舎に入っていく。

上諏訪駅
   改札から千里とマコ、眞澄、真亜子が出てくる。

千里「え、何?」
マコ「だから、来週は高島城で肝試し大会があるって。」
千里「えぇっ、」

   泣きそう

千里「それ本当に僕も出ないといけないの?」
真亜子「小学生のイベントだもの。それに、千里くんのお母さんだってPTA役員でしょ?だから子供会の君だって出る義務があるのよ。」
千里「そんなぁ…」
眞澄「大丈夫よ、チーちゃん。眞澄が一緒にいるんだもの。怖くなんてないわ。」
千里「うー…」
眞澄「来週の日曜日よ。忘れないで来てよね。じゃないと眞澄が迎えに行っちゃうよ。」
千里「うん…分かった。」


高島城
   肝試し大会当日。上川城南地区の小学生が集まっている。千里は震えている。

後藤「よ、千里!!」

   千里、びくり。

後藤「おい、そんなに驚くなよ。俺だよ。」
千里「後藤くん…」
小平「お前、怖いな。」
千里「…君達は?」
小平「全然ーっ!!」
後藤「こんなの子供騙しだよ。毎年やってるけどさ…子供の俺らでさえ怖くないや。」
千里「本当に?」
小平「本当、本当!!」
後藤「それよりも、トイレの孝助さんやオフェリー・メアリー=メイとフランツ・オリバーの怪談話の方がよっぽどぞぞっとするぜ。」
千里「何だよ、…それ?」
小平「ん、お前まだ知らねーか?ここらに伝わる有名な話だぜ?」
千里「知らないよそんなの。でも、京都でも聞いたことあるな…近藤勇の亡霊だとか…坂本龍馬の呪いだとか…」
後藤「それこそ…誰だ?」
千里「えー、知らないの?幕末の英雄だよ?一人は新撰組なんだよ?」
小平「知らないやい。とにかく、」

   人々が少しずつ動き出す。

小平「お、始まったぞ。」

   一人ずつ回っていく。あと数人で千里。

千里「僕?僕?…一人で行くの?」
眞澄「いいわ、最後は眞澄と一緒に行こう。」
千里「でも…」
眞澄「大丈夫…」

   二人、手を繋いでいく。

眞澄「ねぇ、お母さんと、千里くんのママ、」
珠子「何?」
眞澄「千里くんが最後なんだけど、彼一人で残しとくのは何か可哀想だから一緒に…」

   珠子、ふふっと笑う。

珠子「全く怖がりさんで…家の子は仕方ないわね。いいわよ、どーぞ。」
眞澄「ありがとうございます、チーちゃん、ほら…」

   千里、少し向こうで踏ん張っている。

珠子「せんちゃん、お友達が折角一緒に行ってくれるって言っているんですから待たせちゃダメでしょ。」
眞澄「ほらっ、」

   泣き出しそうな千里の手をぐっと引っ張って中へと連れていく。


同・中の展示場
   真っ暗。眞澄と千里、蝋燭のみをもって歩いている。良くできた仕掛けが色々とあり、千里は悲鳴をあげてもはや泣き出している。

同・天守閣
   
眞澄「着いたっと!!チーちゃん、終わり。やっと頂上よ。後は下るだけ…」
千里「もう僕嫌だよぉ、またお化けのいるところ通りたくないもん!!」
眞澄「仕方ないわ、今来た道を通らないと帰れないわ。それに、あれはお化けじゃなくて誰かのお母さんやお父さんよ。安心して。」
千里「それは分かってるけど…でも、でも…」

   下を見下ろすが腰を抜かす。

千里「こ、わい…」
眞澄「何やってるのよ、だらしないわね。」

   千里の手を引いてたたす。

眞澄「ほら、眞澄と一緒に下ろ。」
千里「うん…ありがとう…眞澄ちゃん…」

   二人、中には入る。中は真っ暗闇。

声「おーいおーい、」

   眞澄、千里、立ち止まる。

声「みんなおいでよ…みんな集まれ…」
眞澄「何?」

   耳を済ます。人々がガヤガヤする声、子供の声、二人のカップルらしき声、楽しそうな声が色々と聞こえる。

千里「眞澄ちゃん?…何?」
眞澄「チーちゃんにも聞こえるのね?」

   千里、泣き出す。

千里「ねぇ、もう行こうよ…早くママのところへ帰ろうよ…」

   木の床を走り回る足音。

千里「イヤだぁ!!」 

   眞澄、警戒してキョロキョロ

千里「眞澄ちゃん、」
眞澄「誰だっ!?」

   人の影がフワッとなる。

二人「きゃあーーーーっ!!!」

   一目散に階段を降りて逃げ出す。


同・庭
   千里、眞澄が中から出てくる。

珠子「せんちゃん、お帰り。どーだった?」
千里「ママぁ!!恐かったよぉ…」

   珠子に抱きついて大泣き。

珠子「やめなさい、恥ずかしいでしょう?もう四年生なのですよ。」

   眞澄も笑う。

珠子「ほら、眞澄ちゃんにも笑われているでしょう?」
眞澄「でも叔母さん、眞澄も本当に恐かった。だって本当に…」
千里「言わないでくれよぉ!!」
眞澄「ごめんごめん、もぉ、」

   千里を慰める。

眞澄「ね、チーちゃんもう泣かないでよ、ね。」 
千里「ふ、ふ、フェッ…」

   者繰り上げている。


車内
   珠子の車。まだ者繰り上げながら後部座席に乗る千里と運転する珠子。

珠子「まだ泣いているのねせんちゃん、一体何がそんなに恐かったの?」
千里「あのね、あのね…声がしたの…お化けがね…」

   泣きながら話すが、直後、固まる。

千里「う…」

   目を見開いたまま足はピッチリと閉じ、動けぬ様子。

千里(ん?)

   外は雨が降ってきている。窓の外には警察官が敬礼をして立っている。千里、ため息

千里(何だ…良かった。警察官のおじちゃんだ…)

   直後、更に硬直

千里(いる…これいる…。)

   後ろを振り向きたいが振り向けぬ。

千里「ねぇママ?ママ…タバコ吸った?」
珠子「何言ってるの、ママは煙草は吸いません。」
千里「じゃあ何で…この車の中…こんなにタバコの臭いがするの?」

   珠子、運転をして前を向いたまま

珠子「気持ちの悪い冗談はよしてせんちゃん、ママは今妊娠しているのよ。そんな匂い少しもしません。」
千里「そんな…」

   千里、グッと目を閉じる。

千里(いる…あの警察官のおじちゃんだ…絶対ここに乗ってきてる…)


小口家
   千里、泣きながら家にはいる。

珠子「ただいまぁ、あなた帰ってる?」
小口の声「帰ったかい?」
千里「パパぁ…」

   泣きながら奥へいく


同・和室
   小口が布団を用意している

小口「おや千里、帰ったか。お帰り。」

   千里を見る。

小口「どうしたんだ?また泣かされたか?」
千里「違うんだ、違うんだ…パパぁ、僕恐かったよぉ。」

   小口に抱きつく。

小口「よしよしよし、」

   そこへ珠子

小口「珠子、お帰り。」 
珠子「あなた、ただいま。」
小口「千里のやつ、どうしたんだ?こんなに泣いて…」
珠子「肝試し大会がとっても恐かったらしいわ。」
小口「アハハハ、そうかそうか。」

   千里を抱き上げる。

小口「お前はぁ、弱虫だなぁ…もう四年生の男の子だろう。そんなに泣き虫じゃあいかんぞ。もっと強くなれ。な。」
珠子「そうね、もっと強い男の子にならなくっちゃ。それじゃあ女の子も守ってあげられないわね。」
千里「だって…だって僕、凄く恐かったんだもーん…」

   泣き続ける。

小口「よしよしよしよし、そうかそうか。」

   千里を抱いて慰める

小口「しょうがないなぁ、今日はパパとママと一緒に寝るかい?」
千里「いいの?」

   小口、珠子、微笑む。

珠子「特別に…今夜だけですよ。」

   千里、泣きながらも嬉しそうに微笑む。

千里「うんっ!!」
珠子「頼子は?」
小口「さっきやっと眠ったよ。」
珠子「良かった…あの子はとってもいい子ね、泣かないし、寂しがらないし…」

   千里、拗ねる。

千里「それって僕の事貶してるの?」
珠子「違うわよ、ごめんごめん、せんちゃん。」
 
   千里のお尻を一発強く叩く 

珠子「ほらっ、早く寝るわよ。歯を磨いておしっこ行ってきなさい。」
千里「はい、」
 
   退室。

   千里、パジャマ姿で歯を磨く。

   口を濯ぐとトイレに入る。

   トイレの中でも少し物音がするだけで過敏に反応。

   部屋に入ってくる。

珠子「終わった?なら、さぁほら。せんちゃん、眠りましょうか?」
千里「うんっ。」
小口「千里、こっちへおいで。」

   千里、珠子と小口の間に入る。隣には小さく頼子が眠っている。

   (夜中)
   千里がうっすらと目覚める

千里「…おしっこ…」

   キョロキョロ。辺りは真っ暗、時計の秒針の音のみ。シーンと静まり返る。

千里「…ううっ、」

   珠子を揺する。

千里「ねぇ、ママ…ママ…」
珠子「んー、せんちゃん、どうしたの?こんな遅くに…」
千里「おしっこしたいの…トイレに着いてきて…」
珠子「京都にいるとき約束したでしょ、もう四年生で、お兄ちゃんになったんだから、一人でトイレくらい行きなさい。」
千里「だってぇ、」

   おつくべをして泣きそうになりながらもじもじ

千里「ママぁ!!」
珠子「仕方のない子ね…今夜だけですよ。今夜は肝試しがあったものね…特別よ。」
千里「ありがとう…」

   二人、出ていく。


同・トイレ
   千里、中に入るがドアの隙間から顔を覗かせてもじもじ。

千里「ねぇ、僕が出るまでちゃんとここにいてよ?お部屋に戻らないでよ」
珠子「戻りません。ずっとここにいるから早く行きなさい。」
千里「絶対だよ!!」
珠子「おしっこもれちゃうわよ、」 
千里「んー…」

   躊躇いながらドアを明け、お尻を外に向けて用を足し出す。珠子、クスクス。

珠子「嫌ね、もう四年生なのに恥ずかしいわよ、せんちゃん…」


宮川商店街
   学生が登校している。その中に磨子と麻衣

麻衣「あ、磨子ちゃんおはよう!!」
磨子「麻衣ちゃん!!ねぇ、もうすぐ運動会の練習ね。」
麻衣「運動会の?あ!!宮川地区の?」

   嫌な顔

麻衣「忘れてた…あれって確か子供会はみんなでなくちゃいけないんだっけ…」
磨子「麻衣ちゃん確か、一年でこの時期は大嫌いだったわね。」
麻衣「行事の中で一番憂鬱…」

   ため息

麻衣「学校の運動会でもほーだけどさ?短距離走はいつもビリだし…朝は寒いし…」

   磨子を見る
 
麻衣「ほの中、磨子ちゃんはいいわね…足は早いし、力あるし…身軽だし、」
磨子「麻衣ちゃんはバレエやってるから体は私より柔らかい筈よ…それに、」

   笑う。

磨子「いいじゃない?今年は麻衣ちゃんは音楽クラブのオープニングパレードをするんだもの。格好いいじゃない!!」
麻衣「あぁ…まな…でも、」

   うっとり

麻衣「運動会の時は美味しいお重お弁当を作ってきてくれるもんで運動のあとのご馳走は格別なんよ!!」

   そこに横井、末子

横井「確かに、ほれは言えてる。」
麻衣「てっちゃん!!」
横井「おい、今年こそはお前、短距離走、上位をとれよ。」
麻衣「うるさいわねっ!!」

   逃げる横井を追いかける。

末子「麻衣…運動会の本番でも、あれだけ本気出せばいいのにね…。」
磨子「んだんだ、」

諏訪中学校・教室

千里「え、運動会?」
後藤「そうだよ?お前知らなかった?」
千里「知らないよぉ、つい数ヵ月前に転校したばかりだもん!!」
後藤「そうか…そうなんだよ、」
小平「だからお前も…」
千里「えー、やだよ。僕学校のやつだけで憂鬱なのに…地区のやつなんて別に…」
後藤「それがよくないんだな…」
千里「えー、なんで?」
小平「上川城南付近の子供会はみんなでなくちゃいけないんだっけさ。」

   千里、がっくし。そこに眞澄。

眞澄「ドンマイ、チーちゃん。」
千里「眞澄ちゃん…」
眞澄「最後によいてこ踊るんだから。君もう、よいてこは完璧でしょ?ね?」
千里「う、うん…」
後藤「経…、どこで覚えたんだ?」

   マコ、真亜子もくる。

真亜子「私たちよ。」
マコ「この夏、千里君が責めてお諏訪っ子としてよいてこくらいは踊れるようになるように、私たちが今年、諏訪よいてこ、誘ってみっちり躍り、練習させてあげたのよ。」
小平「へー、なかなかやるじゃん、おんなども。」
後藤「っつーより千里、お前って前から思ってたけどさ…」
千里「ん、何?」
後藤「顔も体型も女の子っぽいし…」
小平「お前男友達といるより、女といた方が性にあってるんじゃないか?」
後藤「本当はお前、女の子だったりしてな…」
小平「ちさとちゃんか?」

   二人、笑う。千里、顔を真っ赤にして下を向く。

千里「うるさぁーいっ!!僕は男だ!!」
後藤「ふーん、」

   千里のズボンとパンツを下ろす。

マコ、真亜子、眞澄「きゃあっ!!!」
千里「っ…!!!?」

   後藤、再びズボンをあげる。

後藤「本当だ…」

   千里、泣きそうになりながら唇をかんで教室を出ていく。


原小学校
   健司が校門から教室に急ぎ、教室の机の上に鞄をおくと急いで出ていく。



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あきゅろす。
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