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石楠花物語小学校時代
千里の引っ越し

宮川長峰小学校・教室
   11月。クラスの3/1がいない。

麻衣「ほーいや、流行っとるわね今、」
磨子「ほーね…インフルエンザ…。」
麻衣「健司、あんたは?珍しく今年は元気ね。」
健司「珍しくとは何だよ失敬な!珍しくとはぁ!!」
横井「ふふんっ、確かにだ、」

   笑う。

横井「風邪が流行るっつやぁ毎年真っ先に大風引いて休むのは健司、お前だもんな。」
健司「てっめぇ!!」
末子「でも健司、今年はちゃんと予防に心掛けてるってことね。」
磨子「後は、食べ過ぎでお腹壊さんこんだ。」
健司「お前は一言余計なの!!でぇ?」

   時計を見る

健司「後ちょっとで休み終わりか…次なんだっけ?」
磨子「国語。テスト…」

   健司、ずっこける。

健司「チェッ。何だよ…。」
磨子「残念ね、健司ちゃん」
麻衣「んなら私、トイレ行ってくる。」
磨子「あ、私もぉ。麻衣ちゃん待ってぇ!!」

   二人、退室。

   チャイムがなる。健司、もじもじ
 
健司「あ、ヤバイっ!!俺もちょっとトイレ!!」 

   トイレに走っていく。


同・端子トイレ
   健司一人、用を足している。

健司「あーあ、インフルエンザか…」
 
   額に手を当てる。

健司「こんなときに熱でも出て早退できればいいのに…そう上手くもいかないんだよなぁ…」


小口家・千里の部屋
   千里、重湯を食べている。
 
珠子「どうせんちゃん、食べられそう?」 
千里「うん、ママ…ありがとう。」
珠子「でも本当に良かったわ、あなたが落ち着いて…」
小口「千里、」

   入ってくる。

小口「じゃあパパはお仕事してくるな。」
千里「うん頑張ってね…」 

   申し訳なさそう

千里「パパも昨日は僕のせいで眠れなかったんでしょ?ごめんね…。」
小口「何言ってるんだ千里、パパは大丈夫だよ。早く治るといいね。何か食べたい物はあるかい?」


消防署
   小口、元木数人。

元木「小口君、」
小口「あ、これは元木さん!!」
元木「今日終わったら、」

   ジェスチャー

元木「どうだい?」
小口「ありがとうございます、でも今日は申し訳ありませんが…」
元木「ん、どーした?つれないぞ?」
小口「今日は倅がインフルエンザに患ってしまいまして…。」
元木「千里君かい?」
小口「えぇ…なので。」
元木「そうかそうか、そりゃ大変だ!!私も千里君が早く良くなることを願っている。」
小口「それとですねぇ、元木さん…」

   言いにくそう


小口家・居間
   千里は部屋で熟睡。小口、珠子がお茶を飲みながら話し合いをしている。

小口「って事なんだ…どうだ?あのままじゃ千里も可哀想だよ。あの子のために…な。」
珠子「えぇ、そうね…。」
小口「千里にも元気になったら話をしてみよう。」
珠子「私もあの子のためにはそれがいいと思うわ。でもせんちゃんが…あの子がそれを受け入れるかしら?」


同・千里の部屋
   一週間過ぎ…。千里が登校の準備をしている。

珠子「せんちゃん、元気になって良かったわね。もう大丈夫ね?」 
千里「うんっ、ママ、パパ、本当にありがとう。いってきまあーす!!」
珠子「はーい、気を付けなさい。」  
 
   千里、元気よく飛び出していく。珠子、小口、手を振って見送る。

小口「珠子、今日の夜、二人であの子に話そう。」
珠子「そうね…でも、あの子の為だなんていったらあの子の事ですもの、絶対に大丈夫って言い張って無理するわ。」
小口「今丁度私の実家の父が体調を崩していてね、だから父の病気を話せば…ほら、千里はおじいちゃん好きだから。」
珠子「そうね…でも、繊細なあの子を騙すの?」 
小口「これは、千里を救うため、こうするしかないんだ。」 
珠子「分かったわ…。」

 
   (夕食時)
   千里も加わって夕食中

千里「え、転校?嫌だよ、転校なんて!!急にどうしてさ!!僕ここの学校にいる!!」
小口「でもねぇ千里、宮川のおじいちゃんが重い病気なんだよ。だから見てあげないといけないんだ…。」
千里「宮川の?長野に行くってこと?」

   泣き出す

千里「嫌々嫌!!嫌だよぉ、絶対僕引っ越しなんかしない!!ここにいる!!」
小口「長野からここまで通うつもりかい?」
千里「…。」

   俯いたまま

千里「どうしても…おじいちゃんの家、行かなくちゃいけないの?」
珠子「えぇ。おじいちゃん具合悪いからせんちゃんに、余計会いたがっていたし、このままだとおじいちゃん独り暮らしだから…死んじゃうかも知れないのよ。」
千里「おじいちゃんが死んじゃうかも…そんなの嫌だ!!」

   再び泣き出す。

千里「ねえ、どうすればいいの?パパ、ママ!!」

   小口に泣き付く。小口、優しく千里を慰める。


京都市内小学校・体育館
   音楽会が行われている。合唱後、千里は合奏でピアノを弾いているが何処か悲しそうな浮かぬ顔。


同・教室
   千里と佐久間先生、黒板の前に立っている。

佐久間先生「と言うわけで、大変突然ではありますが、小口千里君は今日でみんなとお別れです。」
清原「お別れって…千里君転校しちゃうの?先生、なんで?」
園原「本当に行っちゃうの?」
佐久間先生「千里君のおじいちゃんが具合悪くなってしまったので、おじいちゃんの看病のために行かなくちゃ行けないんですって。さぁ、」

   千里、泣きそう。

佐久間先生「午後の時間は千里君のお別れ会をやってみんなでさようならしましょう。」

 
   給食の時間から。クラスメートお菓子を食べながらゲームやら何やらをやっている。


   下校のチャイムがなる。

佐久間先生「それでは、みんな立って…千里君…」
千里「はい…」

   俯きながら前に出てくる。

千里「一年生の入学から今まで、短い間でしたが、みんなで過ごした日はとても楽しかったです。みんなと別れるのはとても寂しいけれど、今日でお別れです。長野へ行ってもみんなの事はずっと忘れません。ありがとうございました、さようなら…」

   千里、一人一人から小さな花束とメッセージカードを受けながら泣き出す。
 
 
   全員、歌を歌っている。千里も泣き笑いをしながら歌う。


小口家・庭先
   小口、珠子、車に荷物を積んでいる。

小口「さぁ、準備はできた…千里、いいかい?」
千里「うん…」

   そこに清原、園原

清原、園原「千里君ーっ!!」
千里「ん?」

   振り返る

千里「元助君に、宗一郎くん!!来てくれたんだ。」
清原「当たり前だろ?これ、」

   プレゼントを渡す。

清原「突然だったからさ…渡せなかったプレゼント。向こう行っても手紙おくれよ。元気でな。」
園原「僕からも…」
千里「二人とも…」

   涙がどっとあふれる。

千里「うん、勿論だよ。君達の事は僕、一生忘れない…お手紙書くよ、きっと又会えるよね。」
清原「うん、」
園原「きっと…約束だよ。」
珠子「せんちゃん、」
千里「うん、」

   車に乗り込む。

千里「ばいばーいっ!!元気でね!僕の事忘れないでね。」

   清原、園原も何時までも手を振りながらお互い三人で泣いている。


車内
   千里、二人が見えなくなると涙を拭って肘で涙を隠す。

珠子「せんちゃん…」

   千里を優しく抱き寄せる。

珠子「遠いもんね…初めての転校だもんね…お友達と別れるの悲しいね…。いいわ、今は思いっきり泣きなさい。向こうの子達はみんないい子だから新しいお友達がすぐに又出来るわよ。」
小口「美代ちゃんがいれば、あの子すごく寂しがっただろうね…」
珠子「そうね、せんちゃんの事大好きだったもんね…」
千里「うん…」

   寂しそうにしたを向いて微笑む。
 
美代の声「千里ちゃんーっ!!千里ちゃんーっ!!」
千里「つ!?」

   慌てて顔をあげる。

千里「美代ちゃんっ?」
珠子「えぇ?」
千里「美代ちゃんだ!!」


   車は高速道路を走っている

美代「千里ちゃんーっ!!」

   千里、振り返る

千里「美代ちゃんっ!!」

   美代、車を追いかけるように走ってくる。

千里「美代ちゃん、美代ちゃんだ!!パパ、ねぇパパ、停めて!!早く車止めて!!」
小口「千里、停めてって言っても急には止まれないよ、ここは高速道路なんだよ?」
千里「だって、だって、美代ちゃんが!!僕、美代ちゃんにちゃんとお別れしなくちゃ。」

   珠子、千里を落ち着かせる。

珠子「せんちゃん、気をしっかり持って、落ち着きなさい!!」
千里「美代ちゃんっ、美代ちゃんーっ!!」

   後ろを向いてじたばた。

珠子「危ないわよ、危ないったら、せんちゃん少し落ち着きなさい!!」

   美代、まだ走って追いかけてくる。泣いている。

美代「千里ちゃんーっ!!」
千里「美代ちゃんーっ!!」

   珠子、千里を押さえつけて座る。

千里「何するんだ、ママ!!ママっ、放してよ!」
珠子「冷静になって考えてみてせんちゃん、美代ちゃんはもう亡くなったのよ。それにここは、」

   周りを見る車の通りの激しい高速道路。

珠子「高速道路なのよ、しかももう名古屋なの。」
小口「美代ちゃんがここにいるわけがないよ…。」
千里「そんな、だって…」

   車の後ろを見る。車が走っているだけで美代の姿はもうない。
  
千里「美代ちゃん…」

   寂しげに俯く。珠子、千里を慰める。頼子はいい子で眠っている。

   車が込み合ってくる。

小口「お、だんだん車が混んできたぞ。千里、渋滞になる前に何処かのサービスエリアに入っておしっこして行かなくていいか?」
千里「あ、うん、してく!お願い止めて。」

   車、渋滞直前のギリギリのサービスエリアに入る。 

小口家・庭先
   茅野市宮川。家族、荷を下ろしている。

千里「ここが…僕らの新しいお家…?」
小口「あぁ。ここに暫くはパパのおじいちゃんと暮らす。」

   そこへ小口吉三。

小口「おぉ、父さん。」
吉三「懐仁、来たか!!それに、珠子さんに、千里に頼子。」
千里「おじいちゃん、久しぶりだね。」
小口「父さん、起きてて大丈夫なのか?」
吉三「何ぁに、わしゃ大丈夫じゃ。それより千里、お前こそ色々あったみたいじゃが大丈夫じゃったか?」
千里「え?」
小口「あぁ、この子はお陰様でもう大丈夫だよ。」
吉三「そりゃ良かった。とにかく早くお上がり。長旅疲れたろう。」

 
   家族、荷を下ろしながら家の中へと入る。


同・居間
   大きな囲炉裏がある。千里、不安げにキョロキョロ

吉三「さぁさぁ、まぁお座りなして。千里も。」

   千里、落ち着かない感じで座る。 

吉三「んで何だ?アパートが見つかるまでのしばらくの間はここにおると言ったが、千里の学校はどうするんだ?」
小口「えぇ、見つかるのもいつになるかわからないのでここから通える学校に転校の手続きをしました。」
吉三「ほー、では宮川長峰小学校に通うんじゃな。」
千里「宮川長峰小学校…」


   一家四人と吉三、徐々に打ち解けて話に花を咲かせている。


宮川長峰小学校・帰り道
   麻衣、健司、磨子、末子、横井が並んでいる。

磨子「そう言えばさ、噂なんだけどうちの学年に転校生が来週から入るとか…」
麻衣「転校生が?何ほれ?初耳。」
健司「俺も。どんな子かなぁ?」

   赤くなる。

健司「可愛い女の子ならいいな。」
末子「私は、どっちでもいいや、いじめっ子じゃなければ。」
横井「俺はなぁ?」

   ニヤリ

横井「健司、お前の様に苛め概のあるやつがいいや。」
健司「おいっ、ほれってどういう意味だよ?」

   千里の家の前を歩く。

健司「ん、」

   小走りになる。

磨子「あ、健司待ちなさいよ!!」
麻衣「どうしたんよ!!」

   通りすぎる。

 
健司「お前達知らねぇーのか?ここの雷じいさん、めちゃくちゃ怖いんだぜ?」
横井「あぁ、俺も知ってる…あまり関わりたくねぇーよな。」
磨子「ほりゃ、恐いんは…」
末子「あんたたちがごただもんで怒るの当たり前さやぁ?」
麻衣「で、どいときに恐いって?」
横井「ひばりヶ丘の公園で野球やってて窓ガラス割った時…」
麻衣、磨子、末子「そりゃ誰だって怒るの当たり前っ!!」

   三人が去った後、行き違いに千里が出てくる。

千里「それじゃあ僕、近くでちょっと遊んでくるね。」

   元気に駆け出していく。


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あきゅろす。
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