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石楠花物語小学校時代
千里、心の傷

小口家・千里の部屋
   千里、体操座りをして泣いている。

珠子「せんちゃん…」

   千里の肩を抱く。

珠子「美代ちゃんの事…辛かったわね…。でも、切ないだろうけど、美代ちゃんもいつまでも泣いているあなたは見たくはないはずよ、あなたには笑って生きていてほしい…。」

   抱き締める。

珠子「いいわ、今だけは、思いっきり泣きなさい…。その代わり明日からは今まで通り笑顔のあなたでいてね。」
千里「ママっ!!!」

   思いっきり泣き出す。珠子、優しく千里を慰める。


宮川長峰小学校・校庭
   麻衣、健司、磨子が鉄棒をしている。

麻衣「あ、はい。」 

   二人にお土産を渡す。

磨子「わぁ、ありがとう!!」
健司「麻衣、ありがとう!!」

   二人、ワクワク明け出す。

麻衣「あーあ…」

   心ここに非ずで鉄棒の上に座ると小さくため息をついて宙ぶらりんになる。

健司「ん?麻衣、どーしたんだよ?」
磨子「せっかく京都に行って楽しんできたのに…何か元気ないねぇ?」
麻衣「あの子大丈夫かやぁ…今頃どーしてるずら?」
磨子「あの子?」
健司「あの子って…誰だよ?」
麻衣「私がな、キスゲを手伝ってくれって従姉妹に言われて手伝いに行った時に、京都から小学生が団体で来たのよね…。その中に、幼稚園のせんちゃんがおったんよ…」
健司「幼稚園のせんちゃんって…」
磨子「あのちび助の?」
麻衣「まぁな、えぇ…ほう。」

   事を話し出す。

麻衣「んで、せんちゃんとこの前京都で再会したんけどな…」

   二人、黙って聞いている。

磨子「まぁ、そんなことが…未だ私たちと同じ年なんでしょ?」
健司「千里も死んじゃった女の子も可哀想だな…。」
麻衣「えぇ…ほの子、ずっと泣いとったもんで…私もずっとあれから心配なんよ…。」


   赤いランドセルを背負った中洲ミズナが校庭を歩いている。三人、気が付いていない。


京都市内の小学校・教室
   千里、笑顔で入る。

千里「みんなおはようっ!!」
全員「おはよう…」
清原「あ、千里君…」
園原「おはよう…」

   千里、席に腰かける。ふと隣を見る。隣は美代の席。誰もおらず、白百合が一輪挿しで置かれている。

千里(美代ちゃん…本当に死んじゃったんだね…)
  

   三時間目

   彫刻刀を使って版画をしている。千里も木を掘っているが。

千里「あ…」

   手を見る。血がだらだらと溢れる。

千里「先生…佐久間先生…」
佐久間先生「千里君、どうしましたか?まぁ!!!」

   千里の元へ飛んでくる。

佐久間先生「一体どうしたの?ほら、手を高いところに上げて、医務室行きますよ。」

   千里の手をあげさせてつれていく。クラスメート、ビックリして作業をすることも忘れて千里を見つめている。


京都市内病院・診察室
   千里、ベッドに寝かされて指を縫われている。


同・待ち合い室
   数時間後、終わる。千里、佐久間先生、珠子

佐久間先生「お母さん、本当に申し訳ございません…私がきちんと千里君を見てあげなかったから…」
珠子「いえいえ、先生のせいじゃありません。家の子が不注意なもので…こちらこそご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした…。」
佐久間先生「千里君、君の怪我大分深くやっちゃった見たいね…12針ですって。」
千里「12…」

   ゾクッと震える。自分の指を見る。

佐久間先生「千里君、しばらくは安静にね、今度からは気を付けましょう。先生も君の事を気にかけるようにするわね。」
千里「ありがとうございます、ご心配お掛けして先生、ごめんなさい…」
佐久間先生「いいのよ、大丈夫。気にしてないわ。」


京都市内小学校・家庭科室
   ミシンを使っている。

千里「あぁっ!!」

   指を縫ってしまう。


京都市内病院
   千里、再び治療を受けている。


小口家・台所
   珠子、小口、千里が夕食をしている。千里の手は包帯だらけで、珠子に食べさせて貰っている。

珠子「せんちゃん、今までのあなたらしくないわねぇ?どうしちゃったの?」
小口「きっと美代ちゃんの件で未だ傷が癒えていないんだろう…。」
千里「や、僕はもう大丈夫だよ…美代ちゃんの事は吹っ切れた。」
珠子「でもねぇ…」

   自分が食べたり千里に食べさせたり

珠子「とりあえずまずは、その手を早く治してしまわないとね。それから色々考えましょう。」
千里「考えるって?」
小口「ママもパパも、お前の事がとっても心配なんだよ、千里。」

   千里の頭を撫でる。

京都市内小学校・教室
   音楽会の歌の練習をするクラスメート。

クラスメート「あーあ。美代ちゃんがいれば美代ちゃんがピアノだったのになぁ…」
クラスメート「本当に、本当に。今年は千里君か…」
クラスメート「仕方ないよ…今美代ちゃんがいなくなってピアノマドンナがいなくなったんだもん。ただ上手いだけの千里君にやらせるしかないんだ。」

   千里、きっと睨む。

佐久間先生「こらこらみんな、そういう事、言ってはいけません。はいっ、真面目にやって。続けますよ。」

   歌を再会。千里もにこにこと歌っている

   暫く。

千里「…。」

   足に力を入れる。

千里(おしっこ…)

   キョロキョロ

千里(どうしようかな…先生に言おうかな…)

   だんだんもじもじ、笑顔がなくなる。

千里(でも後もうちょっとで授業も終わる…)

   蒼白で泣きそう。千里は一番最前列。

千里(ふぅ…あんっ、)

   ズボンを押さえる。

佐久間先生「千里君どうしたの?」
千里「先生、おしっこ…」

   水溜まりが出来初め、半ズボンが濡れる。

千里「もれちゃった…」

   泣きそうになっている。

佐久間先生「みんなは少し待っていなさいっ!!」

   泣く千里の手を引いて教室を出ていく。クラスメート、呆然。



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