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12

パシッ。という

乾いた音。







驚くことでもない、

ボールをキャッチした音なのだが






キャッチした人物が問題だった。





































〔流架〕







・・・いつのまにか、

ほとんどのやつらが

この競技を楽しんでいた。









・・・佐倉は、これを狙っていたのか?


















『ナイスキャッチ、アンナちゃん!』







梅ノ宮みたいに

ボールを怖がりそうなやつまでが

自分からすすんで取りにいってる。


















最初は、こんなメンバーで勝てると思うのが

おかしいと思っていた。







まず人選が悪い。

走るのも遅そうな弱腰ばっかだ。

やる気のない(俺含む)やつもいる。











試合が始まって、



佐倉がハンパ無く強い事が分かって


それで自信があったのか、と理解した

つもりだったが、



それは違ったらしい。











どうやら相手チームの中に

アリスを使ったやつがいたらしい。



・・・予想は出来たことだけど。









ルールをまもるようなやつらじゃないからだ。

このクラスの生徒は。









『小ざかしい真似してないで 

正々堂々かかって来やがれぇ!!』









いつのまにか全員、

ボールを佐倉に向かって投げつけることを止めていた。




ただ、ドッジボールを楽しんでいた。



















・・・楽しそう、だ。




まさかB組の生徒達が、

こんな風に笑うなんて。

























「いけっ!!」






相手が力んで投げてしまったので、

ボールはカーブして佐倉の方とは

逆方向に飛んでいった。









・・・俺の方に。

















・・・補足しておく。





俺はこのドッジボールに

興味は無かったので、



コート内にいながら



ウサギと、それと

佐倉が連れてる猫のナイトと

試合を傍観していた。






途中から

皆が楽しそうになってるのを見ていて



つい、前の学校を思い出してしまった。





















・・・俺も、混ざりたい。































けど 最初はずっと

すみで傍観者決め込んでいたから




いまさら出て行くことに

なんだか気後れしていたのだ。














































そして






気が付いたとき、



俺は宙に手を伸ばして



ボールを掴んでいた。




































佐倉が振り向き、



最初は一瞬驚いた顔をして






次の瞬間には

















『ナイスキャッチ、流架君!!』








笑顔を、





向けた。




























俺の方は、

自分自身の行動に驚き、







それでもしっかりと

ボールを掴んだままの手を

ぼうっと眺めた。









・・・そして、







『ナイスキャッチ、ルカ君!』





その、佐倉の声を聞き、







もう一度手に目を落とし、








顔を上げ、

表情が緩むのを感じた。





その緩みを直そうとはしない

自分に



もう一度


驚きながら。





























嬉しいときに

笑ったのは



どれくらいぶりだ?










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あきゅろす。
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