珊瑚 11 マール川・・・レンガで固められた壁は崩れ、てっぺんから雪崩が起きたように斜めの断面が除いている。 砕け散った瓦礫や、壁がそのまま割れた破片が落ちていてものすごく危ない。 腐敗水の匂いが回り、近付きたくない。 「・・・ガス爆発か?」 「わからん。最近物騒だからな」 そのとき、軍人の一人がふと川に流れ落ちた瓦礫の一部に、なにかふらふらと流れるものを見た。 黄色い布だった。 もっというなら・・・黄色い、血のついた、破れた服だった。 「・・・傷の男≪スカー≫が着ていたものに、間違いないと思います」 ホークアイが、川から攫いあげたその服を持ち上げ、言った。 それには川の水にさらされていたというのに、べっとりとどす黒い血液が付いている。 「死体は出たか?」 「捜索はしてますが・・・」 マスタングの言葉に、ハボックは頭をかいていう。 これでは簡単ではないだろう。 「どの道、この出血では無事ではないでしょう」 ホークアイが、服から目を離していった。 「しかし、死亡を確認するまで油断は出来ん。・・・ハボック少尉」 「はい」 「お前の隊は、瓦礫の撤去を進めろ。昼も夜も休みは無しだ何としてでも奴の死体を引っ張り出せ」 「えぇーー・・・カンベンしてくださいよ俺たちを過労死させる気ですか」 うるさい、とマスタングの声が荒くなる。 血管マークが少なくとも1つ以上浮かんでいる。 「奴の死体を見るまで、私は落ち着いてデートも出来んのだ」 「あーそうですか」 やれやれ・・・とハボックは空を仰いだ。 [*前へ][次へ#] |